カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[260日目]

投稿日:2020年2月2日

オホーツク沿岸はすでに冬

北海道編 36日目(2007年9月25日)

 オホーツク温泉「ホテル日の出岬」の朝湯に入る。大浴場と露天風呂。露天風呂からは日の出岬越しにオホーツク海を眺めた。オホーツク海の水平線に昇る朝日を見たというのに、天気はみるみるうちに崩れていく。雷が鳴り、雨が降り出し、あっというまに土砂降りの雨になった。

 朝湯から上がるとバイキングの朝食。いつもの「三杯飯」を食べ、9時30分に出発。幸いなことに雨は小降りになっていた。

 国道238号を北へ。オホーツク海を見ながらDR−Z400SMを走らせる。切る風の冷たさといったらない。道北のオホーツク沿岸は秋を飛び越え、すでに冬に入っているかのような寒さだった。

 第1湯目は枝幸温泉「ニュー幸林」の湯。ここは大浴場の内風呂のみ。浴室からは枝幸の町越しにオホーツク海が見える。無色透明の湯にどっぷりつかると生き返るような思い。冷え切った体に血の気がよみがえる。体はまだ夏モードなのに、天候の方がひと足先に冬モードに入っているので、まったくついていけない…。

 第2湯目は歌登温泉「グリーンパークホテル」の湯。炭酸重曹泉の黄土色の湯につかる。ここには真水を沸かした無色透明の湯もある。

 歌登温泉を出るころには雨が激しくなり、それにともなって風も強くなり、嵐の様相だ。寒くて寒くて、もう歯の根も合わない。

 真冬並みの寒さと戦いながらピネシリ温泉へ。

「早く温泉に入って体をあたためよう」
 と期待していったピネシリ温泉だが、国道沿いの「ホテル望岳荘」は休業中で入れなかった…。ガックリ。よけいに寒さが身にこたえた。

 激しい雨と猛烈な北西の風をついて走り、中頓別へ。

 あまりの寒さにもうそれ以上、走る気力をなくし、町中の「八番食堂」で昼食にする。「野菜チャーシュー麺」にライスをつけてもらった。1時間近くをかけての昼食。ゆくりゆっくり食べた。

 中頓別の気温は1度。店の主人の話によると「このあたりは冷え込みがきついんだよ。冬になれば氷点下20度、30度まで下がる」という。

 気温は0度を割っていないが、何しろ体がまだ夏バージョンなので、体感温度は真冬並みの氷点下10度といったところだ。

 昼食を食べ終えると、気力をふりしぼって浜頓別へ。

 第3湯目は、はまとんべつ温泉「ウイング」の湯。ここは大浴場の内風呂のみ。浴室からはクッチャロ湖を一望する。

 オホーツク温泉から浜頓別まで200キロ以上を走っているが、まだ3湯でしかない。道北のとくにオホーツク海側は温泉が少なく、温泉間の距離は長い。

 浜頓別からは国道238号で宗谷岬へ。

 第4湯目は国道沿いのさるふつ温泉の日帰り湯「さるふつ温泉」の湯。ここは大浴場の内風呂のみ。若干のにごり湯。湯につかった瞬間、ガチガチに凍りついたか体の氷が溶けていくようだ。おまけに湯から上がると、雨が上がった。寒さと強風だけならまだ耐えられる。

 猿払からは猛烈な北西の風にもみくちゃにされながらDR−Z400SMを走らせる。対向車が見えたときは要注意。フワッと舞って対向車線に飛び出しかねないからだ。オホーツク海も大荒れ。大波が次々に押し寄せている。

 17時15分、日本本土最北端の宗谷岬に到着。こんなに荒れた天気なのに、何と宗谷海峡の水平線上にはハッキリ、クッキリとサハリンが見えている。その瞬間、ぼくの夢はさらなる北の世界へと飛んだ。

 宗谷岬から稚内へ。その間は30キロほど。DRのエンジン全開でぶっ飛ばす。明るさを残すうちに稚内に着きたかった。宗谷岬をまわりこみ、オホーツク海側から日本海側に入ると、ガラリと変わった。風がほとんどなくなり、穏やかな海に変わり、気温も上がった。今回の「北海道一周」の最大の難関を突破したのだ。

 稚内到着は17時45分。

「間に合った!」

 稚内駅前から「稚内港北防波堤ドーム」へ。ここが「カブタン指令第14号」の地。DRをその入口に停め、速報用の写真を携帯で撮って送信した。

 岸壁にはフェリーの「QUEEN SOYA」が接岸している。この同じ場所で1991年にはロシア船に乗り込み、サハリンのホルムスクに渡った。あのときのバイクが岸壁からクレーンで吊り上げられたシーンがなつかしく思い出される。名残おしくて、離れがたくて、しばらくは北防波堤ドームに立ちつくしてしまった。

 天気は急速に回復し、「QUEEN SOYA」の船上には大きな月が昇る。14夜の月か、それとも満月か。

 稚内を出発。海沿いに走り、ノシャップ岬に寄っていく。

 第5湯目は日本最北の温泉、稚内温泉の日帰り湯「童夢」の湯。大浴場と露天風呂。若干の色つき湯で、ほぼ無味無臭。湯から上がると食堂で夕食の「ハンバーグ定食」を食べた。

 稚内温泉からは日本海沿いのルートで稚咲内へ。コウコウと照り輝く月夜の道をひた走る。

 稚咲内からはサロベツ原野を横断。平原は月光に照らされ、まるで照明されているかのように明るさ!

 豊富から豊富温泉へ。DRのハンドルを握る手は冷たいのを通り越し、ジンジン痛む。感覚がすでに麻痺しているので、ヤバイ状態だ。

 20時30分、今晩の宿、豊富温泉の「ホテル豊富」に到着。さっそく第6湯目の「宿湯」に入る。寒さに打ちのめされた体を湯につける。しばらくは湯の中でまったく動けなかった。凍りついた手に感覚が戻ってくると、猛烈な痛みに襲われる。

「ウギャ〜!」
 と、声が出るほどだった。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 オホーツク温泉「ホテル日の出岬」
朝食 オホーツク温泉「ホテル日の出岬」 バイキング
9時30分 オホーツク温泉「ホテル日の出岬」を出発
2722湯目 枝幸温泉「ニュー幸林」(500円)
2723湯目 歌登温泉「グリーンパークホテル」(500円)
ピンネシリ温泉(休業中)
昼食 中頓別の「八番食堂」野菜チャーシューメン(850円)
2724湯目 はまとんべつ温泉「ウイング」(500円)
2725湯目 さるふつ温泉「さるふつ温泉」(350円)
宗谷岬
稚内港
ノシャップ岬
2726湯目 稚内温泉「童夢」(600円)
夕食 稚内温泉「童夢」ハンバーグ定食(700円)
20時30分 豊富温泉「ホテル豊富」(1泊朝食6720円)
2727湯目 豊富温泉「ホテル豊富」
本日の走行距離数 362キロ
本日の温泉入浴数 6湯

オホーツク温泉「ホテル日の出岬」から見るオホーツク海に昇る朝日「ホテル日の出岬」の朝湯に入る「ホテル日の出岬」の朝食を食べる

オホーツク温泉「ホテル日の出岬」から見るオホーツク海に昇る朝日 「ホテル日の出岬」の朝湯に入る 「ホテル日の出岬」の朝食を食べる

「ホテル日の出岬」を出発オホーツク海の海岸線を行く歌登温泉「グリーンパークホテル」

「ホテル日の出岬」を出発 オホーツク海の海岸線を行く 歌登温泉「グリーンパークホテル」

「グリーンパークホテル」の湯ピンネシリ温泉は本日休館中頓別の「八番食堂」の「野菜チャーシューメン」

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「グリーンパークホテル」の湯 ピンネシリ温泉は本日休館 中頓別の「八番食堂」の「野菜チャーシューメン」

はまとんべつ温泉「ウイング」オホーツク海は大荒れ宗谷岬からサハリンを見る!

はまとんべつ温泉「ウイング」 オホーツク海は大荒れ 宗谷岬からサハリンを見る!

稚内港に停泊中のフェリー「QUEEN SOYA」北海道遺産の「稚内港北防波堤ドーム」稚内温泉「童夢」

稚内港に停泊中のフェリー「QUEEN SOYA」 北海道遺産の「稚内港北防波堤ドーム」 稚内温泉「童夢」

「童夢」の「ハンバーグ定食」

「童夢」の「ハンバーグ定食」    

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