カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記

奥の細道編

紀行文の最高傑作!「奥の細道」をたどる

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「60代編日本一周・第2部」の「巡礼編」にひきつづいて、2009年8月13日から9月9日までの26日間は「奥の細道編」。スズキST250で芭蕉の「奥の細道」を走った。全行程8642キロ。

「奥の細道」は日本人の書いた紀行文の中では最高傑作といっていいもので、いままでに何度も読んでいるが、その文庫本を片手にスズキST250Eを走らせたのだ。「奥の細道」にちなんだポイントはいままでに各地で訪れているが、通してまわるのは今回が初めてのことになるので、その高揚感にはたまらないものがあった

カソリの奥の細道紀行





 出発点は東京・日本橋。まずは芭蕉の旧居(芭蕉庵)跡に行く。深川・森下の小名木川にかかる万年橋たもとにあるが、今ではそこには「芭蕉稲荷神社」がまつられている。

 すぐ近くの隅田川の河畔には「芭蕉庵史跡庭園」があり、芭蕉の坐像が建っている。墨田川と小名木川の合流地点で、そこからの眺めはすばらしい。隅田川の上流側には新大橋、下流側には清洲橋がかかっている。

 次に清澄通りを門前仲町方向に走り、仙台堀川にかかる海辺橋を渡ったところにある「採茶庵」跡に行く。そこは芭蕉の旅立ちの地。芭蕉像が建っている。

 芭蕉は1689年(元禄2年)3月27日(現在の暦では5月16日)、弟子の曽良を伴って「奥の細道」に旅立った。

 深川から船で千住に渡った。千住からは奥州街道を北へ。草加、越谷と通り、第1夜目は粕壁(春日部)で泊まっている。

 白河関を越えて関東から東北に入っていく。奥州街道(現R294)の白坂宿からわざわざ白河関跡に立ち寄り、古代東山道の旗宿で泊まるあたりは、さすが芭蕉といったところだ。

 西行を慕い、好奇心旺盛で、日本の歴史にも強い興味を抱いていた芭蕉像というものがじつによく伝わってくる。

 白河関跡には芭蕉の記念碑が建っているが、それには『おくのほそ道』の一文が彫り刻まれている。
「心もとなき日数を重ねるままに、白河の関にかかりて旅心定まりぬ。…」

 その当時、白河を越えてみちのくを旅するのはかなりの難行苦行。芭蕉はあえてその世界に飛び込んでいった。今でいえば世界の荒野を求めて旅立つ冒険家のようなものだ。

 そんな芭蕉は白河の関を越えて、「さー、東北を旅しよう!」と心が定まったのだ。

 東北に入った芭蕉は白河からさらに奥州街道を北へ。今でいえば国道4号だ。

 矢吹→須賀川→郡山→二本松→福島→白石→岩沼と通って仙台へ。そこから塩釜、松島、石巻経由で一関へ。奥州(陸奥)編では一番北は平泉まで行っている。

 一関から岩出山まで南下し、鳴子温泉へ。

 芭蕉はきっと温泉が好きだったのに違いない。那須では那須湯本温泉に立ち寄ってるし、福島では飯坂温泉に立ち寄っている。鳴子温泉の湯にもきっと入ったことだろう。そして尿前の関から奥羽山脈の中山峠を越えて羽州(出羽)に入っていった。

 山寺(立石寺)に参拝し、最上川の船に乗り、酒田から日本海側を北上。

 羽州(出羽)編の一番北は象潟(秋田)だ。

 当時の象潟は文字通りの潟だった。松島に負けず劣らずの絶景の地だった。

「南に鳥海、天をささへ、その影映りて江にあり。西はむやむやの関、道を限り、東に堤を築きて、秋田に通う道遥かに、海北にかまえて、波うち入るる所を汐越といふ。江の縦横一里ばかり。俤(おもかげ)松島に通いて、また異なり。松島は笑うがごとく、象潟は憾むがごとし。寂しさに悲しみを加えて、地勢魂を悩ますに似たり」

 象潟を描いたこの一文は『おくのほそ道』のクライマックスシーンといってもいい。

 その象潟も1804年(文化元年)の大地震で隆起し、潟は消えた…。

 芭蕉はもっともっと東北の旅をきっとつづけたかったのだ。秋田から青森を目指したかったのに違いない。もしかしたら津軽海峡を渡って蝦夷の地まで行きたかったのかもしれない。だが、象潟で断念し、酒田に戻っていく…。

 酒田からは急ぎ足で日本海を南下し、越後路を通りぬけ、北陸の金沢→福井→敦賀からゴールの大垣へ。そこには「奥の細道むすびの地」碑とともに芭蕉像が建っている。

 芭蕉はさらに伊勢神宮の式年遷宮を参拝するために伊勢に向かっていく。長島までは船で、そこからは参宮街道を歩いていった。芭蕉の生まれ故郷は伊賀・上野。伊勢への途中では故郷に立ち寄った。

 そんな「奥の細道」をST250で走ったのだ。

アルバム

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東京・日本橋を出発
深川・森下の芭蕉庵跡


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国道4号を北へ
千住大橋


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草加宿の松並木
室の八島の大神神社


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明神峠を越えて東北へ
白河関跡の芭蕉像


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須賀川の乙字ヶ滝
二本松の霞城跡


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福島駅前の芭蕉&曽良像
多賀城跡


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松島の風景
石巻の日和山公園から見下ろす旧北上川河口


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一関街道・登米宿で
平泉・中尊寺の芭蕉像


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山寺の芭蕉像
元合海の芭蕉&曽良像


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月山へ
月山山頂の月山神社


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象潟の芭蕉像
庄川河口


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越前の一の宮、気比神宮の芭蕉像
大垣の結びの地に到着


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芭蕉の故郷、伊賀上野