カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

「東北大震災」からもうそろそろ1ヵ月

投稿日:2011年4月7日

 東北大震災から早いもので、もうそろそろ1ヵ月になろとしています。復興に向けての槌音、人の声、みなさんの勢いが各地から伝わってきて、ほんとうにうれしい限りです。
 陸前高田の校庭にプレハブの仮設住宅が完成したというニュースには、手をたたいて喜んでしまいました。気仙沼漁港では漁業関係者が集まって、カツオ漁の始まる6月中には漁港と魚市場を復興させようと熱い口調で語っていました。
「そうだ、そうだ!」
 と、応援したくなりました。
 日本のカツオは今や東北。気仙沼は日本一の水揚げだし、石巻、小名浜もそれにつづくくらいの水揚げ量です。東北のカツオはうまい。上りだけでなく下りの「戻りガツオ」がこれまたたっぷりと脂がのっています。
 そういう中、岩手県盛岡在住のカメラマン、小原信好さんが何種もの「がんばれ東北!」のステッカーをつくりました。小原さんの被災地復興への熱い気持ちが伝わってきます。みなさん、ぜひとも小原さんのブログをチェックしてみてください。
小原信好さんのブログ:https://ameblo.jp/hokkaider/
ステッカーのページ:https://ameblo.jp/hokkaider/entry-10853178708.html


 この1ヵ月あまりで、今回の「東北大震災」のすさまじさが、いろいろとわかってきました。
 被害は大津波に集中しているようです。一番揺れた栗原市(震度7)の状況を友人が伝えてくれましたが、内陸の栗原市の人的被害はゼロだとのことです。
 今回、三陸海岸を中心に襲った大津波は、「明治三陸大津波」(1896年)を上回るだけでなく、「貞観の大津波」をも上回っているとの報道があり、もうビックリです。
「貞観の大津波」は平安時代の869年。その大津波によって陸奥の国府の多賀城が全滅したといわれています。
 ということは今回の東北大津波は100年前の「明治三陸大津波」や1150年前の「貞観の大津波」を上回る日本最大の大津波ということになります。
 ちなみに「明治三陸大津波」の地震はM8・2〜8・5、「貞観の大津波」の地震はM8・3ですので、その意味でも今回のM9・0がいかに巨大地震であったかがわかります。近年の「昭和三陸大津波」(1933年)の地震はM8・1でした。
 ほんとうに大変なことになりましたが、我々は1000年に1度どころの話ではなく、史上初といっていい巨大津波に見舞われてしまったのです。
 綾里(大船渡市)では30・1メートル、小堀内(宮古市)では37・9メートルの大津波が記録されています。30メートルを越える大津波などは、もう想像をはるかに超えてしまいますね。
 広田半島(陸前高田市)では半島の東側から押し寄せる津波と、半島の西側から押し寄せる津波が激しくぶつかり合い、空高く舞い上がった波はこの世の終わりを思わせるほどの、すさまじい光景だったといいます。そのため半島の南側は島のようになってしまったとのことです。

 東北大震災の復興に暗い影を投げかけているのが、すさまじいばかりの死亡者数と行方不明者数です。
 今日(4月7日)の朝日新聞の朝刊では、死亡12,554人、安否不明者17,692人とあります。さらに驚かされてしまうのは、この中にはまだ計測不能の宮城県の仙台市、東松島市、山元町、南三陸町、岩手県の山田町の2市3町が含まれていないというのです。今現在、2万人をはるかに超える大勢の方々の安否が不明だという異常事態には、心が凍りつくような思いです。何としても、1日も早く行方不明者のみなさんを見つけ出し、その消息がわかることを祈るばかりです。

 それと被災地のみならず、日本中を、いや世界中を暗くしているのが福島の原発事故です。東北大震災は史上最大級の天災でしたが、原発事故は人類史上最大級の人災です。
 この大人災の原発事故が、東北大震災の復興に冷や水をぶっかけています。まったく見通しのきかない泥沼状態がこの先、ずっとつづくことを我々は覚悟しなくてはならないのです。
 それにしても東京電力という会社はひどすぎます。
 2007年の中越沖地震で柏崎刈羽原発が大きな被害を受けたのに、会社の原子力に対する隠蔽体質なのでしょうか、それを今回の大事故にまったく活かせなかったのです。学習能力のないことを今回の大事故が証明してしまいました。
 今回の原発事故では、我々に「原発は安全だ、安全だ」といってきた国の原発安全神話が吹っ飛び、真っ赤なウソだったことがバレてしまいました。4重、5重の安全ネットなどもまったくの机上の空論だったことがはっきりとしてしまいました。まさか原発がこれほどもろいものだったとは…。
 ぼくは今まで原発を考えたこともありませんでしたが、今は、
「許せない、絶対に許せない!」
と思っています。
その理由は簡単です。
 人間は人間の手で制御できないものを作ってはいけないのです。
 東北では東北電力の大間原発が工事中で、もうそろそろ完成だと思います。きれいなところですよ。大間原発のあるところは。この先、どうなるんでしょう。
 それと東北電力の東通(下北半島)原発の北側に東電が新たな原発をつくろうとしています。昨年の夏、見たときは、もういつでも着工できるような感じでした。もしかしたらもうすでに着工されたかもしれません。しかしこれは即刻、中止すべきです。危機管理能力のまったくない会社に原発などもうまかせてはおけません。
 ぼくはいままで感じたことのなような危機感を今回の原発事故で感じています。日本政府のいってることは、戦時中の「大本営発表」とまったく同じではないですが。あのウソ八百で何百万もの命が失われたのです。
 東北大震災から1ヵ月になろうとする今、一日も早い被災地の復興を願うのと同時に、このようなことをも考えています。

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