カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

10月25日

投稿日:2009年10月26日

長万部温泉「丸金旅館」の朝湯に入り、サケの焼き魚つき朝食を食べ、7時30分出発。昨日の道を引き返し、R5→道道9号で黒松内を通り、日本海沿いのR229に出る。ここから江差に向かっていくのだが、その前にどうしても行きたいところがあった。そるは歌棄と磯谷。ともに「江差追分」に出てくる地名で、我が北海道遺産の師、カブタンに教えてもらったところなのだ。R229を江差とは反対方向の岩内に向かっていくと歌棄に入る。そこにはニシン御殿が残り、海岸には「江差追分」の歌碑が建っていた。天気は快晴。真っ青な海と空を見ながら走り、磯谷の集落へ。

歌棄にしても、磯谷しても、かつてはニシン漁でおおいに栄えた所だということを知った。尻別川の河口まで行き、そこで折り返し、江差に向かった。寿都、瀬棚、熊石と通り、11時30分、江差に到着。「姥神大神宮渡御祭と江差追分」が北海道遺産になっている。まずは姥神大神宮に参拝。境内には渡御祭の山車の模型が展示されている。つづいて商家の「横山家」と「中村家」を見学。北前船の交易で江差が繁栄を謳歌した頃は、このような商家が浜に建ち並んでいたという。そのあと「江差追分会館」に行き、江差追分の実演を見た。胸にしみる「江差追分」には聞きほれてしまった。実演のあとは館内の資料館を見てまわる。信州・中山道の馬子唄が伝わって江差追分になったとのことだが、その歴史が一目で見てわかるような展示になっている。

江差を離れ、上ノ国へ。ここでは北海道遺産「上ノ国の中世の館」跡を見る。このような世界があったのか、といった驚きで見た。海沿いのR228から丘陵上に登ったところにある、「勝山館跡ガイダンス施設」を見学。そこに展示されている勝山館跡の模型がじつにいい。中世の山城の様子がよくわかる。それを頭に入れて、実際の館跡を歩いた。高台の先端からは日本海の海岸線を一望。江差の町並みが見える。江差の鴎島が目だって見える。上ノ国から最後の北海道遺産の地、松前へ。「あー、とうとう、ここまで来てしまった」といった気分で、喜びや達成感よりも、寂しさが先に立った。それを振り払い、松前をめぐる。今回、東京から青森までは奥州街道を走った。奥州街道は三厩が終点になるが、「青森→三厩」間は松前街道と呼ばれる。三厩から船で松前に渡るのだが、そこが江戸からの長大な街道のほんとうの意味での終点になっていた。

北海道で唯一の城下町。福山(松前)城の天守閣に登り、松前神社に参拝し、郷土資料館を見学。最後に夕暮れの寺町をまわった。「福山城と寺町」が北海道遺産になっている。松前をあとにし、ゴールの函館へ。スズキDRーZ400SでR228を走り、北海道最南端の白神岬でDRを停める。白神岬の灯台にはすでに灯が入っている。津軽海峡対岸の龍飛崎の灯台の明かりが異様に輝いて見える。函館到着は20時。函館駅前にDRを止めたが、その瞬間をもって「北海道遺産めぐり」の「北海道一周」を終えた。全行程が4070キロの「北海道一周」だった。

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