カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

10月26日

投稿日:2009年10月27日

函館朝市の「あけぼの食堂」で「トロサーモン&イクラ」の丼を食べ、函館駅前を出発。函館港のフェリー埠頭へ。7時45分発の「津軽海峡フェリー」の「びなす」に乗船。乗客はほとんどいない状態で、広い2等船室を独占。そのすみっこで横になって寝た。気持ちいい眠り。目が覚めた時には北海道は遠ざかり、左手には下北半島北端の大間崎がみえていた。右手には津軽半島の高野崎と龍飛崎。そんな風景を見ていると、「あー、日本だ」という気分になってくる。北海道で過ごした2週間あまりというものが、まるで夢の海外ツーリングをしたかのように思われてくるのだった。あらためてなおいっそう遠ざかっていく北海道に向かって、「さよーなら、北海道よ」と、声を上げた。

フェリーは津軽海峡から平舘海峡に入り、やがて陸奥湾へ。前方には八甲田の山々が見えてくる。11時15分、青森港に到着。「びなす」を下船すると青森駅前へ。そこでスズキDRーZ400Sを停める。DRに「さー、行くぞ!」とひと声かけて走り出す。奥州街道のR4を東京へ。野辺地の国道沿いにある一軒宿、むつ湾温泉の湯に入り、食堂で「ホタテ刺身定食」を食べた。肉厚のホタテもうまかったが、コリッコリッとした食感のホタテのヒモもうまかった。温泉に入り、昼食を食べ終わる頃にはすっかり天気は変わり、ザーザー降りの雨になっていた。激しい雨をついてR4をひたすら走る。七戸、十和田、五戸さらに南部、三戸と通り、岩手県に入る。雨はますます激しさを増し、前方が見えないほど。ヘルメットのシールドを上げ、裸眼で走る。目の中にブスブスと突き刺さってくる雨滴の痛さといったらない。

「がんばろうな」、DRとはげましあって走りつづける。

そんな時に、サハラ縦断の砂嵐の光景が目に浮かんだ。「DRよ、あのときだって乗り切ったじゃないか」。こういうときに、一緒にユーラシア横断、サハラ縦断、南米縦断と、ともに世界を駆けめぐった強さが存分に発揮される。DRからあらたなパワーをもらい、その力でもって雨に立ち向かっていこうという気になる。二戸から一戸を通り、中山峠を越える。大型トラックの後ろについたときなど、もう大変。全開のシャワーを全身で浴びるようなものだ。沼宮内、滝沢と通り、19時、盛岡に到着。盛岡駅前の「東横イン」に泊まった。雨は小やみなく降りつづけている。逃げるようにして盛岡駅の地下街に入り、そこにある「三千里」という店で夕食にする。一人、生ビールで乾杯。昨夜の「サッポロクラシック」の味が無性になつかしく思い出された。そのあとで、盛岡名物の「盛岡冷麺」を食べるのだった。

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