カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

第21回 笹谷林道

投稿日:2011年1月12日

2010年 林道日本一周・西日本編

一軒宿の「笹温泉」が廃業、残念

 べふ峡温泉の朝湯に入り、朝食を食べて出発。国道195号で旧物部村の大栃へ。ここが今日の林道走行の拠点になる。物部川をせき止めた奥物部湖の湖畔にスズキDR-Z400Sを停めた。
「さー、行くぞ!」
 DRにひと声かけて走りだす。
 大栃からは狭路の県道49号で高知・徳島県境の矢筈峠に向かっていく。その途中には一軒宿の温泉、笹温泉があるが、廃業湯になっていた。悲しい…。
 笹温泉は週2日、土曜日と日曜日に営業していた。それに合わせるのが難しく、なかなか入れないでいたが、「300日3000湯」(2006年〜2007年)のときに長年の夢がかなってついに入れた。趣のある木の湯船。太い竹筒から湯が流れ込んでいた。そのときは1人、先客がいて、湯につかりながら本を読んでいた。廃業湯になった笹温泉の玄関前で、そんなシーンを思い浮かべるのだった。
 笹の集落からは笹・笹上林道で矢筈峠に向かっていく。
 1999年の「林道日本一周」では3・9キロのダート区間のあった笹・笹上林道は矢筈峠まで、全線が舗装化されている。
 矢筈峠を越えて徳島県側に入り、ダートの祖谷山林道を下っていく。2・2キロ地点でT字路。右方向の祖谷山林道は通行止めなので、左方向の笹谷林道に入っていく。

痛恨の転倒、痛めた体は祖谷渓温泉で速攻癒す

 ここで痛恨の転倒。左カーブを曲がった瞬間、落石が目に入った。大岩に激突しないように急ブレーキをかけたが、リアタイヤはグリップをなくし吹っ飛んだ。左半身を強打。左手、左肩、左腰、左膝、左足を痛めたが、とくに右足首を強打した。オフロードブーツのおかげで骨折はまのがれたものの、しばらくは林道上にうずくまり、立ち上がれなかった。
 やっとの思いで立ち上がり、DRを起こす。
 DRには「ゴメン、ゴメン」と謝った。それにしても目のくらむような深い谷に転落しないでよかったと胸をなでおろした。
 笹谷林道でのこの転倒はフロントブレーキとリアブレーキをかける瞬間に、クラッチレバーを握ってしまうことで起きた転倒。原因はわかっているのだ。
「あ、危ない!」
 と思った瞬間、右手のブレーキレバーと同時に、反射的に左手のクラッチレバーも握ってしまう。ぼくの悪いクセなのだ。
 アスファルトの路面ならばそれでも何とかなるが、ダートで砂っぽい路面だと、ひとたまりもなく転倒してしまう。わかっていてもダートでの緊急時、どうしてもそれをやってしまう。そしてそのたびに転倒して痛い目にあう。
 自分の体はかなりのダメージを受けたが、DRはほとんどダメージなし。これがオフロードバイクのすごさなのだ。
 焼けつくような痛みをかかえて笹谷林道のダート9・1キロを走りきり、徳島・高知県境の京柱峠に到達。
 京柱峠からは徳島県側に下り、国道439号→県道32号で祖谷渓温泉へと急ぐ。
「ホテル秘境の湯」(入浴料1000円)に入ると、湯につかりながら左手、左肩、左腰、左膝と痛む箇所を全部、自分の手でさする。パンパンに腫れた左の足首はとくに念を入れてさする。これが「カソリ流」の治し方。打撲や捻挫のときはすぐに冷やせといわれているが、「温泉のカソリ」はすぐに温泉に飛び込み、温泉療法をする。湯につかりながら、自分の手で治すのが一番。今まで何度もやってきたことで、ギックリ腰も温泉と自分の手で治した。
「ホテル秘境の湯」から上がるとサロメチールを足首にたっぷり塗りつけ、DRにまたがって走り出す。「温泉前」はあまりの痛みに我慢できないほどだったが、「温泉後」はかなり痛みはやわらいでいる。温泉にはこのような即効性もあるのだ。

フォトアルバム

べふ峡温泉の朝湯に入る
べふ峡温泉の朝食


大栃の奥物部湖
廃業湯の笹温泉


狭路の県道49号を行く
笹・笹上林道は全線舗装


矢筈峠
祖谷山林道


このすぐ近くで痛恨の転倒…
京柱峠


京柱峠からの眺め
祖谷渓温泉


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