カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

第66回 氷ノ山林道

投稿日:2011年3月10日

2010年 林道日本一周・西日本編

大黒様をお祀りする一の宮

 国道29号の鳥取・兵庫県境の戸倉峠を越える。
 戸倉峠は中央分水嶺の峠で、鳥取で日本海に流れ出る千代川の水系と、姫路の近くで瀬戸内海に流れ出る揖保川の水系を分けている。さらに因幡街道と播州街道を分けている。国道29号は鳥取県内では若桜街道とか播州街道と呼ばれている。若桜に通じているので若桜街道であり、戸倉峠を越えて播州(播磨)に通じているので播州街道なのだ。それに対して兵庫県側では因幡街道と呼ばれている。戸倉峠を越えて因幡に通じている街道だからである。
 戸倉峠は因幡・播磨の国境の峠であり、中国・関西の境の峠にもなっている。このように峠というのは大きな境目であり、世界を二分する。
 戸倉峠を貫く全長1730メートルの新戸倉トンネルを抜け、中国から関西へ。旧道の「戸倉トンネル」に対して新道の「新戸倉トンネル」なのである。
 さあー、「日本一周・関西編」の開始だ。
 すでに「関西・南紀編」を終えているので、今回はその第2弾目、「関西・北近畿編」になる。「関西・北近畿編」では福井県の敦賀までを含むことにする。
 戸倉峠の新戸倉トンネルを抜け出て、峠を下ると、じきにロングダートの氷ノ山林道の入口に着く。だがその前に、国道29号を走り、播磨国の一の宮、伊和神社まで行く。
 驚いたのは戸倉峠からずっと宍粟市になっていたことだ。
 2005年、山崎町を中心にして一宮町、波賀町、千種町の宍粟郡の4町が合併し、宍粟市が誕生した。中国道の山崎ICから戸倉峠までの広いエリアがすべて宍粟市だ。
 伊和神社はそのうちの旧一宮町の国道29号沿いにある。神社の前は道の駅「播磨いちのみや」。
 伊和神社の境内はうっそうとおい茂る森に囲まれている。祭神は大己貴(おおなむち)神。大己貴神は国造りの最後にこの地にやってきたことになっている。
 今回の「林道日本一周」では東京を出発し、京都に向かっていく途中で遠江国と三河国の一の宮をめぐったが、遠江国の小国神社、三河国の砥鹿神社の祭神はともに大己貴神。九州の「大分→宮崎」のナイトランで立ち寄った国道10号の脇の都農神社は日向国の一の宮だが、ここも祭神は大己貴神。「大黒様」で知られる大己貴神を祭る一の宮はそのほかにも数多くある。
 伊和神社の参拝を終えると、国道29号を引き返し、戸倉峠まで戻る。

久々のロングダート「氷ノ山林道」で播但国境を超える

 再度、戸倉峠を出発。兵庫県側に峠を下り、国道を左折して氷ノ山林道に入っていく。そこには「やまめ茶屋」の看板。この看板が絶好の目印になっている。やまめ料理の「やまめ茶屋」(この日は休業の看板が出ていた)の前を通り過ぎ、国道29号から0・5キロ地点でダートに突入。路面は良く整備されていて走りやすい。きれいな森林がつづく。緑のトンネルのつづく区間もある。
 山菜採りの乗用車や軽トラックがけっこう頻繁に林道に入ってくるので、ブラインドのコーナーは要注意だ。
 宍粟市と養父市の市境を越える。ここも戸倉峠同様、中央分水嶺の峠。
 養父市は宍粟市の前年、2004年に養父郡の養父町、八鹿町、関宮町、大屋町の4町が合併して誕生した。この林道の峠(名無し峠)は、旧町名でいえば波賀町と大屋町の境。同じ兵庫県でも播磨国と但馬国の播但国境になる。
 播磨から但馬側に入り、横行林道(舗装林道)との分岐点を過ぎたところで舗装路になる。ここまでのダート距離は11・6キロ。中国山地の名峰、標高1510メートルの氷ノ山(ひょうのせん)の登山口を過ぎると舗装→ダート→舗装…の繰り返し。その間のダート距離の合計は6・5キロ。ダート距離18・1キロの氷ノ山林道を走り、旧関宮町の福定に出た。
 そこからハチ高原に登り、瀞川林道に入っていく。走りやすい幅広の高速ダート。瀞川山(1039m)の山頂近くを通る瀞川林道は舗装化が進み、残念ながらダート距離は10キロを割り、9・6キロになっていた。
 国道9号に下ると、村岡温泉(入浴料500円)の湯に入る。林道走破のあとの温泉はたまらない。湯から上がると、温泉に隣りあった食事処「御殿」で、「海鮮丼セット」(1000円)を食べた。

フォトアルバム

戸倉峠の新戸倉トンネル
伊和神社の鳥居


伊和神社の本殿
氷ノ山林道のダートに突入!


氷ノ山林道の緑のトンネル
林道沿いのきれいな樹林


氷ノ山林道の播但国境の峠
瀞川林道から見下ろすハチ高原のスキー場


幅広ダートの瀞川林道
瀞川山の山頂近くを通る


村岡温泉
村岡温泉の玄関前に湧き出る湯


村岡温泉の効能は…
村岡温泉の大浴場




食事処「御殿」の「海鮮丼セット」

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