カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

第207回 甲子鎌房林道

投稿日:2012年1月28日

2010年 林道日本一周 東北編2

313本目は、超ハード、超狭路のダートロード

 西部林道のダート13・2キロを走り切ると、鎌房林道を下り、阿武隈川上流の雪割渓谷に出た。そこには熊の供養塔。雪割橋のたもとにあるレストラン「カルミア」でコーヒーを飲み、ホッとひと息入れた。
 雪割渓谷にかかる雪割橋を渡り、国道289号に出ると甲子峠へ。全長4345メートルの甲子トンネルを抜け、いったん下郷の町まで下った。
 下郷で折り返し、今度は旧道を登り、標高1400メートルの甲子峠に立つ。絶景峠で奥会津の山並みを一望した。
 いよいよ難関の甲子鎌房林道のダートに突入。
 スズキDR-Z400Sに、
「頼む!」
 とひと声かけて走り出す。
 甲子鎌房林道は今回の「林道日本一周」では313本目の林道になるが、その中では群を抜いて難しい。超ハード、超狭路のダートを行く。
 鎌房山(1510m)の山頂直下を過ぎると甲子林道から鎌房林道になるが、路面はさらに一段と荒れてくる。大岩がゴロゴロしている下りでは、何度も吹っ飛ばされ、そのたびに転倒…。DRを起こすたびに体力を激しく消耗した。
 甲子鎌房林道はその前年にも走ったが、さらにラフな林道になっていた。
 8・3キロのダートを死ぬような思いで下り、さきほどの西部林道との分岐まで下ったときはDRを停めるなり、地面に大の字になってひっくり返った。
 そこからはさきほど走った道なので、ずいぶん楽に走れた。しかし難路との悪戦苦闘がつづき、腕の筋肉がパンパンに張っているので、DRを思うようには操れなかった。
 白河高原牧場の脇を走り、舗装路に出たときは救われるような思い。甲子鎌房林道のダート距離は西部林道とまったく同じ13・2キロだった。
 国道289号に戻ると新甲子温泉へ。
「ちゃっぽランド西郷」の湯に入る。入浴料はすでに夜間割引の時間帯になっているとのことで400円。大浴場の湯につかると、たんねんに転倒で痛めた箇所をさすり、全身の筋肉をもみほぐした。
「お〜、生き返った!」
 林道の後はやっぱり温泉だ。
 湯から上がるとレストランで夕食にする。
「カレーライス」(600円)を注文したが一口、口に入れたときは大衝撃を受けることになる。まるで食道が腫れあがったような感じで、飲み込むのが辛くなるほど。
「おー、きたきた!」
 と思った。
 これが蛇の「たたり」か…。
 奥西部林道で蛇を轢いてしまったが、その「たたり」が来たと思った。
 もう大粒の冷や汗がタラタラ流れ落ちる。「カレーライス」はあとまわしにし、まずは少しづつ水を飲む。やっと水を飲み込めるようになったところで長時間をかけ、カレーライスを少しづつ食べていく。半分以上食べたところで、やっと元に戻った。
「蛇さん、蛇さん、ゴメン!」
 と謝った。
 白河ICから東北道に入り、一路、東京へ。
 ゴールの東京・日本橋に到着したのは2010年9月10日22時30分。
 今回の「林道日本一周」をスタートさせたのは5月12日のことだった。
「西日本編」と「東日本編」の2分割でまわり、78日間で2万8208キロを走った。
 その間では全部で313本の林道を走破し、ダート区間の合計は2283・4キロになった。日本列島縦断分ぐらいのダート距離。我ながら実によくやったと自画自賛した。
「(こういうことができるのは)自分しかいないな!」
 と「林道のカソリ」、まだ人通りのある日本橋で吠えた。
 だが「林道日本一周」はまだ終らない。
 最後はビッグボーイでの「林道走破行」で締めくくるのだ。

より大きな地図で 林道日本一周東北編2 を表示
今回のエリア:昭文社ツーリングマップル東北 8

西郷村→白河市→東京・日本橋

阿武隈川上流の雪割渓谷
雪割橋たもとの熊供養塔


国道289号新道の甲子峠
国道289号旧道の甲子峠


甲子峠からの眺め
甲子鎌房林道のダートに突入!


大荒れの甲子鎌房林道
下りになるとさらに大荒れ


新甲子温泉「ちゃっぽランド」の湯に入る
湯上がりの「カレーライス」


東北道の白河ICを出発
東京・日本橋に到着!


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