カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

環日本海ツーリング[56]

投稿日:2012年5月1日

第2弾までの最後の旅は、アイルランドでカー道中

 7月23日から8月6日までは車でアイルランドを一周した。

 今回は妻との2人旅。アイルランドは妻の長年の憧れの地なのだ。
 首都ダブリンに到着すると、空港の「ハーツ」でニッサンの「マーチ」よりも安いというので、フォードの小型車を借りて「アイルランド一周」に出発!
 第1日目は空港近くの「トラベロッジ」に泊まり、駐車場に車を入れた。
 ここまではよかったのだが、そこでバックしようとすると、何とバックギアに入らないではないか。このフォードの小型車は5速。右下がバックギアのはずなのに、そのポジションにどうしてもギアが入らない。
 仕方なく、車を押して駐車スペースを出ると、「ハーツ」に行き、
「あの…、バックギアに入らないのですが…」
 と文句をいった。
 するとギアのチェンジレバーのノブの裏側に、「バックギア用の押し込み式のボタンがありますよ」
 と教えられた。
「こんなこと、わかるわけがないではないか」
 と思ったが、「ハーツ」の係員には笑われるし、妻には「あなたって車のこと、何にも知らないのね」とバカにされるし、もう散々…。
 おまけに「トラベロッジ」に戻ると、今度はシートの倒し方がわからない。シートのまわりをあちこち探し、座席を倒すレバーをみつけたときは、「やったね!」という気分。このときばかりは、すこし料金は高くなっても、ニッサンの「マーチ」を借りておけばよかったと心底、後悔した。
 車には次の日も泣かさた…。
 ガソリンスタンドで給油しようとすると、給油口のキャップが開かないではないか。
 そこはセルフのスタンドで、従業員といえば、ショップのレジの女性だけしかいない。仕方ないので、次のガソリンスタンドに行くと、そこもセルフでやはり従業員はレジの若い女性だけ。
 ウオーターフォードという町だったが、3軒目のガソリンスタンドでは腹をくくり、何としても「キャップを開けるぞ!」と、キーをカチャカチャ何度もまわした。その結果、ついにキャップを開けることに成功し、やっと給油することができた。
 アイルランドのガソリンスタンドは例外なしにセルフで、日本でいえばコンビニのような店が併設されている。その店のレジで、自分の入れた給油機のナンバーをいってお金を払うようなシステムになっている。ガソリンは日本よりも若干、高めといったところか。
 古城のあるキルケニーの町では駐車場で泣かされた。駐車場入口の機械で駐車券を取るのは日本と同じだが、出口のシステムが違う。駐車場出口の機械に駐車券を入れれば金額が表示され、その金額を入れるものだとばかり思っていたが、エラー表示が出るばかりでバーは開かない。我々の車の後には何台もの車がつながってしまう。
「さー、困った…」
 こういうときのアイルランド人はじつにいい。
 日本だったら、後からプープープープー、クラクションを鳴らされっぱなしになるところだが、クラクションを鳴らす車などは1台もない。
 すぐ後の車の運転手が、
「(カーパーキング入口に清算機があるので)それにまずお金をいれるのだよ」
 と親切に教えてくれた。
 彼には助けられた。
 というのはその後も何度となく町中のカーパーキングを利用したが、アイルランドではすべてのカーパーキングがこのようなシステムになっている。
 このフォードの小型車に慣れてくると、アイルランドという国が、じつに車で旅しやすい国だということがよくわかってくる。
「R」表示の県道の最高速が80キロ、「N」表示の国道の最高速が100キロ、「M」表示の高速道路の最高速が120キロ。気持ちいいほどガンガン飛ばせる。高速道路の有料区間は1・80ユーロで日本円では200円ほどでしかない。日本の高速道路がいかに高いかが、じつによくわかるアイルランドの高速道路だ。
 大陸と違って左側通行なので、日本の感覚、そのままで走れるのもすごくいい。
 最初は不安いっぱいだったフォードの小型車は「アイルランド一周3600キロ」をノントラブルで走ってくれた。高速走行もまったく問題なし。バックギアに入らなかったときは「これから先、どうなることやら…」と思ったのだが。
 ぼくにとってアイルランドは初めての国。車で2週間走ったのも初めてのことで、「初めてづくし」のアイルランドになった。
「アイリッシュ・ブレークファスト(アイルランド風朝食)」にはじまり、ボリュームたっぷりのアイリッシュの食事を朝食、昼食、夕食と3度食べた結果、何と体重を5キロも増やして日本に帰ってきた。まあ、それはおいて、あちこちで古いケルト文化に触れられたし、妻の一番の希望だったアイリッシュ・ガーデンも見れたし、アイルランドは心に残る国になった。

アイルランドの首都ダブリンに到着
妻と2人でアイルランドを一周


ガーデニングの店を見てまわる
アイルランドの道標


キルケニーの中心街
連泊した「バリーマリーハウス」


「バリーマリーハウス」のガーデン
アイルランド第1の景勝地、「モハの断崖」


北アイルランドのジャイアント・コーズウエイ
北アイルランドのベルファストの中心街


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