カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

ツーリングマップル2013年版発売に寄せて

投稿日:2013年3月10日

『ツーリングマップル2013年版』が完成した。
 その東北編を担当しているぼくは巻頭で次のように書いた。

 2012年の東北はスズキの650ccバイク、V−ストロームで走った。
 東日本大震災から1年後の3月11日に東北太平洋岸の最南端、鵜ノ子岬(福島)を出発し、最北端の尻屋崎(青森)を目指した。2011年にひきつづいての「鵜ノ子岬→尻屋崎」。それにしてもこの季節の東北は寒かった。早春どころかまだ冬の様相。岩手県の宮古を過ぎると雪との戦い。アイスバーンには泣かされた。青森県に入り、尻屋崎まであと100キロという地点で猛吹雪に行く手をはばまれ断念。何とも悔しかったが、3・11の冬同然の厳しさを体感できたのは大きな収穫だった。7月から本格的な取材行を開始したが、真っ先に「鵜ノ子岬→尻屋崎」を走り、3・11のリベンジを果たした。
 2012年の東北では奥州街道と羽州街道の「東北の二大街道」を走った。奥羽山脈東側の奥州を貫く奥州街道と西側の羽州を貫く羽州街道の宿場、ひとつづつに立ち寄った。旧街道の宿場めぐりはじつにおもしろい。『ツーリングマップル東北』には奥州街道、羽州街道の全宿場が入っているのでぜひとも参考にしてもらいたい。東北の背骨、奥羽山脈の「峠越え」も繰り返しておこなった。峠を越えながら東北の2つの世界、奥州と羽州を考えるのは楽しいものだ。旅の原動力といっていい知的好奇心が満たされる。『ツーリングマップル東北』には奥羽山脈を越える全峠が記載されているのでこれも参考にしてほしい。
「街道&峠のカソリ」は「林道のカソリ」でもある。東北は日本一の林道の宝庫。2012年では東北南部の林道、30本を走破した。2013年には東北中部、北部の林道を走破する予定。林道はまさにナマモノで、状況は刻一刻と変わっていく。魅力満点の林道ツーリングなので『ツーリングマップル東北』にはその最新情報を載せるようにしている。このようにして走った2012年の東北。V−ストロームでの走行距離は2万キロを超えた。それでもまだまだ走り足りない。東北はツーリングの魅力が凝縮されたエリア。
 さー、みなさん、東北を走ろう!

 さて「東日本大震災」から2年を迎えるが、今年も3・11に東京を出発し、「鵜ノ子岬→尻屋崎」を走ろる予定にしている。大津波に襲われた東北太平洋岸の全域を走り、大津波から2年後をしっかりと自分の目で見てくるつもりだ。今年のみならず来年も、再来年も…、「鵜ノ子岬→尻屋崎」を走りつづけたいと思っている。
『ツーリングマップル東北』2013年版の16ページの冊子は内容が充実し、ぐっと良くなっていると自画自賛している。同行してくれた巣山カメラマンのおかげで、写真がすごくいい。おすすめツーリングコースの3コースのうち、「八甲田・十和田湖コース」、「八幡平コース」は巣山カメラマンが同行して撮ってくれた写真を使用している。

 ぼくは『ツーリングマップル』が大好きだ。
 自分が作り手であるのと同時に、一番の使い手だと思っている。そこで今日はみなさんに、『ツーリングマップル』を使っての「机上ツーリング」を提案したい。
『ツーリングマップル』のどのページでもいいので、見開きページを机の上に広げてみよう。その瞬間に夢はまだ見ぬ世界に飛んでいく。
 見開きページを見ながらツーリングコースを考えてみるのだ。
「この峠を越えてみたい、この温泉に入ってみたい、この山を見てみたい、この町をぷらぷら歩いてみたい」
 と、夢がどんどんふくらんでいく。ガソリン代ゼロ、食費ゼロ、宿泊費ゼロの「机上ツーリング」は、30分もあれば十分に楽しめる。
 そしていつの日か、『ツーリングマップル』を持って、その「机上ツーリング」のコースを実際に走ってみよう。ツーリングがより楽しいものになること間違いなしだ。

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