カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

アドレス日本一周 west[108]

投稿日:2013年3月18日

平坦な与論島

鹿児島←熊本←長崎
←佐賀←福岡←山口←広島←岡山←兵庫←大阪←和歌山←徳島←香川←愛媛
←高知←徳島←和歌山←奈良←和歌山←三重←愛知←静岡←神奈川←東京

「フェリーあけぼの」は12時、沖永良部島の伊延港を出港。断崖となって海に落ちる田皆岬の沖合いを通過していく。沖永良部島が遠ざかると、前方の与論島が大きく見えてくる。13時40分、与論島の与論港に入港。ここは水深が浅く港が狭いので、岸壁に接岸するのは大変だ。船長の腕の見せ所なのだろうが、無事に接岸したときは拍手をしたくなった。
 与論島も徳之島、沖永良部島同様、素通りなので、ここでも2002年の「与論島一周」を紹介しよう。

 沖永良部島の和泊港発12時のマリックスラインのフェリー「クイーンコーラル8」で与論島の与論港に向かう。船内のレストランでカレーライスの昼食を食べ、ひと眠りすると、船は与論島に近づいていた。
 与論港到着は13時40分。奄美諸島も南下するにつれて島が小さくなってくる。与論島は奄美諸島の中では最小の島。周囲は22キロでしかない。
 与論島に上陸すると、島の中心、茶花の町まで行く。与論町役場前をスタートし、バス通りにもなっている県道623号を北回り(時計回り)で一周する。与論島は平坦な島で、高い山はない。島の最高地点は標高100メートルにも満たない。
 島は一面のサトウキビ畑。どこも収穫で忙しかった。そんな収穫の光景を写真にとらせてもらうと、刈り取ったばかりのサトウキビを1本、もらった。その場で食べてみる。歯で皮をはぎ、中の白っぽい芯をかじる。甘い汁が口の中いっぱいに広がる。それはまさに与論島の味。県道623号での「与論島一周」は17キロだった。
 次に海沿いのルートを走る。さきほどとは逆に、反時計回りで島を一周する。赤白2色の灯台のある兼母海岸まで来ると、沖縄の伊平屋列島の島々が見える。高台の上にサンゴ礁で築いた石垣の残る与論城跡からは正面に沖縄本島が見える。
 赤崎海岸、シーマンズビーチ、百合ヶ浜ビーチ、皆田海岸と与論島のすばらしい海岸美を見てまわる。百合ヶ浜ビーチは「星砂の浜」でよく知られている。黒花海岸を過ぎた島北端の寺崎海岸の海の色は強烈な青さ。ここからは水平線上に小さく霞んで沖永良部島が見えた。つづいて宇勝海岸、品覇海岸に立ち寄り、茶花の町役場前に戻った。海沿いのルートでの「与論島一周」は32キロだった。
 ひと晩、茶花の旅館「南海荘」に泊まった。民宿風の旅館で家族的な暖かな雰囲気がすごく良かった。
 翌日は「与論民俗村」(入村料400円)を見学。ここでは島の昔ながらの生活ぶりが見られる。
 ご主人が「民俗村」を案内してくれた。木の下には雨水を溜める大きな素焼きの水瓶が置いてある。川のない与論島では水を得るのは大変なことなのだ。さまざまな臼と杵が並べられている。杵には横杵のほかに、南方の世界とのつながりを感じさせる竪杵も見られた。素焼きの瓶や焼酎を入れる酒徳利、油を入れる壺などの焼きものがズラリと並んでいる。漆喰で塗り固めた赤瓦の屋根は沖縄とそっくり。沖縄との距離の近さを感じさせる。
 ひととおり「民俗村」内を見てまわると、奥さんがツワブキの葉にフジマメ入りのおにぎりとトビウオの焼き魚をのせ、「どうぞ」といって出してくれた。

小学館文庫『島の温泉日本一周』より
IMG_0638_smallIMG_0639_small

沖永良部島の田皆岬沖を通過
海上から見る与論島


IMG_0640_smallIMG_0641_small

与論港に接近
与論港に接岸


Comments

Comments are closed.