カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

アドレス日本一周 east[48]

投稿日:2013年9月6日

還暦を祝った温泉

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2008年11月28日

 恵山岬を出発。椴法華漁港を通り、国道278号に出ると、太平洋を右手に見ながらアドレスを走らせる。津軽海峡から太平洋へと海が変わった。
 間歇泉で知られる鹿部温泉に着くと、共同浴場の「亀乃湯」(入浴料290円)に入った。ここはなつかしの湯。「300日3000湯」では、ここでカブタンに出会った。
 そのときの様子を『300日3000湯めぐり日本一周・下巻』(昭文社)より紹介しよう。「アドレス日本一周」の前年、2007年9月1日のことだった。

 (この日の)第10湯目は鹿部温泉。共同浴場「亀の湯」に入る。ここの湯はきわめつけの熱さ。源泉は91.3度という超高温湯。その湯がそのまんま湯船に流れ込んでいる。水をガンガン入れても、そう簡単には入れない。熱湯との大格闘の末、やっとチャッポンと入るのに成功。ほんのわずかなチャッポンだったが、それでも全身が腫れあがるほど真っ赤になった。これが不思議なのだが、歯をくいしばって湯につかり、湯から上がったときは最高の気持ち良さ。熱湯特有とでもいおうか、体全体はヒリヒリするのだが、何ともいえないシャッキリ感が肌に残る。
「亀の湯」を出ると、玄関の前にはクーラーボックスの上に座っている女性がいた。何してるんだろうと不思議に思ったが、何とぼくが出てくるのを待っている人だった。それが「カブタン」との出会い。「カブタン」いわく、「今日は命を張ってカソリさんの捕獲に来たんです」。ご主人と2人、旭川から四駆を飛ばしてやってきた。
 そのあとすごいドラマが待っていた。
 鹿部温泉には100度近い熱湯が吹き上げる間歇泉があるが、そこの駐車場に2人の車が停まっていた。そこで、「カブタン」が用意したバースデーケーキをいただいたのだ。「カソリさん、おめでとう!」といわれてちょっと照れるカソリ。北海道ではみなさんが知っているという「わかさいも本舗」のケーキで、上にのったチョコレートには「カソリさん 祝 60才 ♪」とある。60歳分のローソクの火をフーッと吹き消したあと、遠慮なくいただいた。ケーキも生クリームもイチゴもすべて美味。この日(9月1日)は、カソリの60歳の誕生日。ついに「還暦」を迎えたのだ。
 ぼくはこの日がすごくいやだった。自分が60の大台にのるなんて、信じられなかったし、信じたくなかった。ところがこうして「カブタン」夫妻に60の誕生日を祝ってもらったおかげで、「よーし、やってやろうじゃないか!」と、前向きな気持ちになれた。
 還暦といったら、また暦の戻ること。ぼくはバイクでアフリカに飛び出していった20歳のときに戻ろう、あのときのあの気持ちでもう一度、日本を世界をまわろうという気になった。これというのもすべて「カブタン」のおかげだ。

「亀乃湯」から上がると、あの日あの時と同じ場所、鳥羽一郎の歌碑の前でアドレスを止め、60歳のバースデーケーキをなつかしく思い出すのだった。
 鹿部温泉からさらに国道278号を走り、森で国道5号に合流。森を過ぎると日は暮れ、それとともに気温はガクンと下がる。国道沿いのデジタルの表示板を見ると、気温は氷点下2度。八雲を通り、19時30分、長万部に到着。何度か泊まったことのある長万部温泉の「丸金旅館」に飛び込みで行くと宿泊OK。ありがたいことに夕食も用意してくれた。
 さっそく湯に入り、冷え切った体をあたためた。湯から上がると部屋での夕食。刺身、サケ、ホタテ、石狩鍋…と、「海の幸」三昧の夕食だ。
 夕食を食べ終わると、露天風呂で長湯した。

第9日目:青森→長万部
2008年11月28日
走行距離:209キロ(合計2,519キロ)
費用:
朝食 800円
フェリー代 3,570円
ポテトチップス&コーラ 300円
ガソリン 376円
昼食 1,260円
ケーブルカー 1,160円
谷地頭温泉 420円
恵山温泉 300円
御崎海浜温泉 200円
ガソリン 471円
宿泊(1泊2食) 8,000円
合計 16,857円
総計 94,804円


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鹿部温泉「亀乃湯」
60歳のバースデーケーキ(2007年9月1日撮影)


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長万部温泉「丸金旅館」の夕食
夕食の「石狩鍋」


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