カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[1日目]

投稿日:2017年6月8日

「温泉めぐり日本一周」(2006年〜2007年)から早いもので10年になる。それを機に日本を8分割してまわり、300日間で3063湯(1湯1温泉地)に入った「温泉めぐり日本一周」を振り返ってみたいと思う。ぼくにとっては「島めぐり日本一周」(2001年〜2002年)につづく「テーマ編日本一周」の第2弾目。この「温泉めぐり日本一周」は2008年に昭文社から『300日3000湯めぐり日本一周』と題して上下巻2冊で出版された。それを元にして連載をお伝えしよう。
 なお料金等は当時のものなのでご了承ください。

おおいなる自信を持つ

関東編 1日目(2006年11月1日)

 2006年11月1日6時30分、スズキGSR400に乗って東京・日本橋に到着。1年あまりにわたって準備を進めてきた「300日3000湯」の「温泉めぐり日本一周」がついに始まった。まずは「関東編」。今回の8エリアに分けた「温泉めぐり日本一周」のスタート地点はすべてが東京・日本橋になる。つづいて昭文社の桑原和浩さんもスズキのビッグバイク、バンディット1200Sに乗って到着。桑原さんはこれから4日間、同行してくれるのだ。

 早朝にもかかわらず日本橋には何人ものみなさんが来てくれた。昭文社の中村さんや井沢さん、若林さん、デザイナーの大熊さん、読売新聞記者の吉田さん、バイク誌『ツーリングGO!GO!』編集長の古林さん、バイクで世界を駆けめぐっている古山夫妻、日本各地の温泉をめぐっている女性温泉家の「ゆーゆーさん」だ。

 7時、みなさんの見送りを受けて出発。国道17号(中山道)から国道254号(川越街道)へ。東京都から埼玉県に入ったところで朝食。国道沿いの「ガスト」で「和風ハンバーグ朝定食」を食べた。これが「温泉めぐり日本一周」の記念すべき第1食目。これから先、食べるであろういろいろな食事に胸を躍らせる。

 和光、新座、志木と通り、川越へ。

 第1湯目は関越道の鶴ヶ島ICの近くにあるふるさとの湯温泉「天然温泉ふるさとの湯」だ。高麗川の河畔にあるオープンしてまもない日帰り湯の温泉。はやる気持ちをおさえられずに大浴場の内風呂と露天風呂に入った。黄緑色がかった湯の色で、泉質はナトリウム・塩化物泉。露天の1人用の壷湯が気に入った。

「天然温泉ふるさとの湯」から上がったときの気持ちよさといったらなかった。もう最高の気分。「300日3000湯」への手ごたえとでもいおうか、カソリ、この時点でおおいなる自信を持つことができた。

 次に東松山へ。そこから奥武蔵の顔振峠へ。顔振峠は絶景峠だ。「峠の茶屋」で昼食。味噌味の「いのしし鍋」を食べた。猪肉は地元の猟師さんが獲ったもの、中に入っている野菜類は店のおばちゃんが自分でつくったものだ。味噌も自家製。汁はニンニクやショウガ、トウガラシで味つけされている。奥武蔵の山々を眺めながら食べる「いのしし鍋」は超美味だった。

 顔振峠からは来た道を戻った。顔振峠の「峠返し」だ。今回の「温泉めぐり日本一周」では、この「峠返し」を何度となくおこなった。ぼくは「峠越えのカソリ」。いままでに1700近い日本の峠を越えてきたが、今回に限っては、「峠越え」ではなく、「峠返し」をメインにして温泉をめぐることにした。それができるだけ多くの温泉に入るいい方法だと考えたからである。

 第2湯目は顔振峠下の黒山温泉。温泉旅館「東上閣」の湯に入った。「庭園大露天風呂」は気分よく入れた。湯につかりながら見上げる奥武蔵の空は抜けるような青さ。山の空気がうまい。湯から上がると、すぐ近くの天狗滝、男滝、女滝の「黒山三滝」を見てまわった。

 第3湯目は鎌北湖畔の鎌北湖温泉「鎌北湖レイクビューホステル」の湯。ここの湯は奥秩父の大滝温泉から運ばれてくる。ほぼ無色透明の湯にはミネラル分の味がする。宿の裏手には温泉運搬用の大型タンクローリーが見られた。今回の「300日3000湯」では温泉地からタンクローリーで運ばれてくる温泉、ほかの温泉地から引湯されている温泉も1湯に数えた。

 次に越生温泉の日帰り湯「ゆうパークおごせ」に行った。ところがこの日は何と月1度の休館日。残念…。これから先、何度となくこのような場面に出くわすのだが、同行してくれている桑原さんは編集者的立場でそれが「おもしろい!」といってくれている。ところがぼくにとってはけっこうガックリとくるものだ。

 越生から都幾川に行き、県道172号で白石峠へ。夕暮れの峠からの眺めが目に残る。白石峠も「峠返し」で、来た道を引き返し、都幾川温泉へ。さんざん走りまわり、やっとの思いで都幾川温泉の温泉旅館「とき川」を探し出したが、入浴のみは不可。2湯連続で入れないと、もうガックリどころか落ち込んでしまう。このように温泉というのは、行けば入れるというものではない。それを「300日3000湯」の第1日目にして思い知らされた。

 気を取り直し、第4湯目の玉川温泉の日帰り湯「湯郷玉川」へ。到着は18時45分。ここの入浴料は700円だが、19時以降は500円になる。そこで15分、じっと待ち、入浴料が500円になったところで入った。ここでは大浴場と露天風呂の湯に入った。無色透明の湯には肌にからみつくようなぬめりがあり、肌がつるつるしてくる。湯から上がったあとの体のぽかぽか感もよかった。いい湯に入った。泉質のよさもあってのことなのだろう、「湯郷玉川」はにぎわっていた。ここで夕食。ゆったり気分の大広間で「玉川御膳」を食べた。

 第5湯目は小川温泉の日帰り湯「花和楽の湯」。ここを最後に国道254号で東松山に戻り、百穴温泉の温泉旅館「春奈」へ。夕方になって公衆電話の電話帳を見て電話したところ。宿への到着は21時30分。すっかり遅くなった到着にもかかわらず、宿の女将さんは快く我々を出迎えてくれ、部屋に案内してくれた。

 まずは湯だ。ひと晩泊まる宿で入る湯(ぼくはそれを宿湯といっている)はまた格別。広々とした浴室はジャングル風呂の様相。おまけにうれしい混浴。東京のすぐ近くに「こんな温泉があるなんて」と、2人して驚きの声を上げた。

 湯から上がると、コンビニで買い込んだカンビールで乾杯。ポテトチップスをつまみに飲むカンビールは腹にしみた。桑原さんとの話がはずむ。だが、そのまま寝られないのが「300日3000湯」。酒宴がお開きになったところで、今日一日、カメラ(キャノンEOS KissデジタルX)で撮ったすべての写真をパソコンに取り込み、セレクトし、それにネーム(説明文)をつける。寝たのは24時過ぎだった。

本日のデータ 料金等は当時のものです
7時 日本橋を出発
朝食 和光の「ガスト」 「和風ハンバーガー」(609円)
1湯目 ふるさとの湯温泉「ふるさとの湯」(600円)
顔振峠(峠返し)
昼食 顔振峠の「平九郎茶屋」 「しし鍋」(1000円)
2湯目 黒山温泉「東上閣」(1000円)
3湯目 鎌北湖温泉「鎌北湖レイクビュー」(800円)
越生温泉「ゆうパークおごせ」(休館日で入れず)
白石峠(峠返し)
都幾川温泉「旅館とき川」(入浴のみは不可)
4湯目 玉川温泉「湯郷玉川」(500円)
夕食 「湯郷玉川」 「玉川御膳」(1500円)
5湯目 小川温泉「花和楽の湯」(1050円)
21時30分 百穴温泉「春奈」(1泊朝食6000円)に到着
6湯目 百穴温泉「春奈」
本日の走行距離数 210キロ
本日の温泉入浴数 6湯

東京・日本橋を出発和光の「ガスト」で朝食「ガスト」の「和風ハンバーグ朝定食」

東京・日本橋を出発 和光の「ガスト」で朝食 「ガスト」の「和風ハンバーグ朝定食」

第1湯目のふるさとの湯温泉の壺湯に入る第1湯目に入って気分さっぱり!奥武蔵の顔振峠からの眺め

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顔振峠の「平九郎茶屋」顔振峠の「平九郎茶屋」の「いのしし鍋」第2湯目の黒山温泉「東上閣」の湯

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黒山温泉「東上閣」の庭園露天風呂の湯口黒山三滝を見てまわる第3湯目の鎌北湖温泉「鎌北湖レイクビューホステル」の湯

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越生温泉「ゆうパークおごせ」は本日休館…第4湯目の玉川温泉「湯郷玉川」玉川温泉「湯郷玉川」の「玉川御膳」

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第6湯目の百穴温泉「春奈」の大浴場

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