温泉めぐり日本一周[38日目]
投稿日:2017年8月8日
カソリの「記念碑的温泉」が消えた
桟温泉「桟温泉旅館」の朝湯は気持ちよかった。展望風呂からは木曽川の流れを一望する。そのあとの朝食では湯豆腐、塩ジャケ、かまぼこ、塩辛、明太子などをおかずに、いつものように「三杯飯」を食べた。
9時、桟温泉「桟温泉旅館」を出発。
国道19号で木曽福島から鳥居峠下の藪原へ。そこから県道26号で境峠を目指す。峠の周辺にはうっすらと雪が積もっていたが、路面には雪はなく、凍結箇所もなかった。
ところが中央分水嶺の境峠(1486m)を越えたとたん、雪がぐっと増え、路面もツルツルに凍りついている。本格的なアイスバーンとの闘い。下手にブレーキを使うと、その瞬間にツルッと滑って転倒し、そのままツーッと滑走してしまうので、両足を氷面につきなながら下っていく。スズキST250の車高は低く、べたっと両足を氷面につきながら走れるのですごく助かった。峠道を下るとダンプカーが多くなった。対向車のダンプカー、後続車のダンプカーには最大限の注意を払った。
第1湯目は境峠下の渋沢温泉。「仙洛」、「マウンテンハウスコンチェルト」とまわったが入れず、3軒目の「ウディ・もっく」の湯に入れた。内風呂の湯につかった瞬間、思わず「助かった!」の声が出た。強烈な寒さとアイスバーンとの闘いで打ちのめされた体が一気に蘇る。
第2湯目は奈川温泉。ここでは「野麦荘」の湯に入れた。赤茶けた湯の色。湯につかりながら奈川の流れを見下ろした。すごく体に効きそうな湯。温泉の効能を見ると、一番上に「ヒステリー、神経衰弱」、それにつづいて「創傷、火傷、慢性皮膚病」とあるが、ほんとうに効くのだろう。こうして温泉めぐりをしていると、温泉の効能のすごさには心底、実感できるものがある。つづいて行った新奈川温泉の「リフレイン奈川」は「本日、休館日」で入れなかった。
奈川温泉からはウソのように楽に走れた。
第3湯目は乗鞍高原温泉「湯けむり館」の湯。有料林道の交差点にある温泉施設。正面には雪の乗鞍岳(3026m)が見える。木の湯船、木の洗い場。浴室からも乗鞍岳が見える。露天風呂は石造りだ。
第4湯目は白骨温泉。乗鞍岳の東側中腹の標高1400メートル地点の高所の温泉。梓川の支流、湯川沿いに湧く。「白骨」の名前通りの白濁湯で知られている。ここには共同湯の野天風呂があるが、残念ながら冬期間は閉鎖。そこで「煤香庵」の湯に入った。200年の歴史を誇る湯宿。白骨温泉には昔ながらの木造りの温泉旅館が並び、湯治場的な雰囲気を色濃く残している。
白骨温泉から国道158号に出る。
第5湯目はさわんど温泉。国道沿いに何軒かの温泉宿が建ち並んでいる。ここでは食事処「しもまき」の湯に入った。木の湯船、木の洗い場と、木をふんだんに使っている。湯から上がると昼食。「焼肉定食」を食べた。焼肉パワーで長野・岐阜県境の安房峠に向かっていく。その途中で坂巻温泉と中ノ湯温泉に寄ったが、ともに「本日休業」で入れなかった。
「峠返し」で安房峠の安房トンネル入口で折り返し、来た道を引き返す。
第6湯目は竜島温泉の日帰り湯「せせらぎの湯」。内風呂と露天風呂。何しろ気温の低い信州なので、露天風呂に入る人はどこも少ない。その中にあってここは例外で、露天風呂はワサワサと混み合っていた。
竜島温泉の先は松本電鉄の終点、新島々駅になる。駅前の妙鉱温泉に行くと、一軒宿の温泉旅館は老人ホームに変わっていた。なんということ。ここはぼくにとっては一生、忘れられない温泉なのだ。
今から10何年も前のことになるが、東京から中央道を走り、奥飛騨温泉郷に向かった。諏訪湖SAでバイクを停め、バイクの整備をし、立ち上がろうとした瞬間、ギックリ腰に見舞われた。あまりの激痛に立ち上がることもできず、脂汗を流しながら1時間以上も草地にうずくまっていた。
すこし気持ちが落ち着いたところで、「どうしようか…」と考えた。その結論は「このまま奥飛騨温泉郷まで走っていこう」というものだった。だが、その辛さといったらない。まったくブレーキを踏めなかった。ちょっとでもブレーキを踏むと、脳天をブチ抜くような激痛に襲われた。そこでブレーキは手を使うフロントのみにした。
松本ICで高速を降りたが、料金所で料金を払うのが大変だった。なにしろ体を動かせないのでもたもたし、後続車に迷惑をかけてしまった。そこから国道158号を走り、新島々駅まで来たとき妙鉱温泉が目に入り、「温泉教」信者のカソリは温泉でギックリ腰を治そうとした。
さっそく妙鉱温泉の湯につかり、30分以上、湯の中で腰をさすった。まさに自分の手を使っての「手当て」だ。温泉につかりながらの「手当て」はすごい効果を発揮し、湯から上がるころにはギックリ腰の激痛は半減していた。
さらに国道158号沿いの坂巻温泉、中ノ湯温泉と入り、そのたびに湯の中で腰をさすった。すると安房峠を越えるころには諏訪湖SAでの激痛が四分の一くらいまでやわらいだ。その後、奥飛騨温泉郷から飛騨の温泉をめぐり、1週間後に東京に戻ったが、そのときには腰の痛みはほとんど消えていた。温泉だけでギックリ腰を治したのだ。ぼくにとって妙鉱温泉というのは、そういう温泉。カソリの「記念碑的温泉」が消えた…。
国道158号で松本へ。その途中では第7湯目の安曇野みさと温泉「ファインビュー室山」の湯に入った。大浴場と露天風呂。露天風呂からは遠くに松本の町明かりを見ることができた。湯から上がると夕食。「山かけ定食」を食べたが、レストランからも松本の夜景が見えた。
今晩の宿、松本市内の横田温泉「舶来荘」に着いたのは20時55分。さっそく第8湯目の宿湯に入るのだった。
朝湯 | 桟温泉「桟温泉旅館」 |
---|---|
朝食 | 桟温泉「桟温泉旅館」 湯豆腐、サラダ、カマボコ、塩ジャケ、明太子、煮豆、塩辛、漬物、ご飯、味噌汁 |
9時 | 桟温泉「桟温泉旅館」を出発 |
境峠(峠越え) | |
320湯目 | 渋沢温泉「ウッディ・もっく」(400円) |
321湯目 | 奈川温泉「野麦荘」(400円) |
新奈川温泉「リフレイン奈川」(定休日) | |
322湯目 | 乗鞍高原温泉「湯けむり館」(700円) |
323湯目 | 白骨温泉「煤香庵」(700円) |
324湯目 | さわんど温泉「食事処しもまき」(500円) |
昼食 | さわんど温泉「食事処しもまき」 「焼肉定食」(1200円) |
坂巻温泉(入れず) | |
中ノ湯温泉(入れず) | |
安房峠(峠返し) | |
325湯目 | 竜島温泉「せせらぎの湯」(500円) |
妙鉱温泉(廃業湯) | |
326湯目 | 安曇野みさと温泉「ファインビュー室山」(500円) |
夕食 | 安曇野みさと温泉「ファインビュー室山」 「山かけ丼定食」(1250円) |
20時55分 | 横田温泉「舶来荘」(1泊朝食6000円) |
327湯目 | 横田温泉「舶来荘」 |
本日の走行距離数 181キロ | |
本日の温泉入浴数 8湯 |
桟温泉「桟温泉旅館」の朝湯に入る | 「桟温泉旅館」の前を流れる木曽川 | 「桟温泉旅館」の朝食 |
「桟温泉旅館」を出発 | 県道26号から見る木曽川の合流点。右が木曽川、左は笹川 | 県道26号で境峠に向かっていく |
境峠に到達 | 境峠の下りは恐怖のアイスバーン | 渋沢温泉「ウッディ・もっく」 |
「ウッディ・もっく」の湯 | 奈川温泉「富喜の湯旅館」は休業中 | 奈川温泉「野麦荘」 |
「野麦荘」の湯 | 新奈川温泉「リフレイン奈川」には営業中の旗が立っているが定休日 | 乗鞍高原温泉から見る乗鞍岳 |
乗鞍高原温泉「湯けむり館」 | 乗鞍高原温泉「湯けむり館」の湯 | 白骨温泉への雪道。雪はシャーベット状 |
白骨温泉は雪景色 | 白骨温泉の共同湯の野天風呂は冬期閉鎖中 | 白骨温泉「煤香庵」 |
「煤香庵」の露天風呂 | さわんど温泉「食事処しもまき」 | 「食事処しもまき」の湯 |
「食事処しもまき」の「焼肉定食」 | 坂巻温泉は休業 | あちこちで蒸気が噴き出す中ノ湯温泉 |
安房峠の安房トンネル | 安房峠の旧道は冬期閉鎖中 | 竜島温泉「せせらぎの湯」 |
妙鉱温泉は老人福祉施設になっていた | 安曇野みさと温泉「ファインビュー室山」の「山かけ丼定食」 |