カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[72日目]

投稿日:2018年1月16日

暴風雪と暴風雨のすさまじい一日

本州西部編 23日目(2007年2月1日)

 木場温泉の「湖山荘」は朝湯なし。朝湯が大好きなカソリにとってはちょっと残念。

 ご飯、味噌汁、目玉焼き、鶏のから揚げ、ブリの照り焼き、ヒジキ、サラダ、漬物といった朝食を食べ、8時30分に木場温泉を出発。朝から雪。スズキDJEBEL250XCに降り積もった雪をはらいのけて走り出す。

 まずは近くの木場潟の湖畔に立った。まさに冬の北陸といった風景。北西の季節風で湖面は波立ち、垂れ込めた鉛色の雪雲に覆われている。暴風雪の様相で、横なぐりの風にのって雪が舞っている。

 第1湯目は粟津温泉。白山開山の祖、泰澄大師によって発見されたという北陸最古の歴史を誇る温泉だ。風格のある温泉宿が建ち並んでいる。ここでは温泉街の中心にある「総湯」に入った。雪に痛めつけられたあとだけにありがたい。体は芯まで冷え切っているので、掛け湯しても、湯船につかったときは「アチチチチ」と火傷しそうなほどの熱さに感じてしまう。

 ところがそのときは、ほんとうに熱かったようだ。

 毎日、入りにきているという常連さんが「熱くて入れないよ」と、番台のおばちゃんに文句をいっている。おばちゃんは「おかしいわね。朝、計ったときはちょうどよかったのに」といいながら、すぐさま湯温を計る。すると44度ある。いつもより1、2度高いという。この1、2度の差が常連さんにとっては不満なのだ。

 このように温泉を管理するのは大変なことで、いつも適温に保たなくてはならない。ちなみに湯温にうるさいのは男性ではなく、女性の入浴客だという。男性客は温くても熱くても我慢して入るが、女性客ははっきりと「今日は温い」とか「今日は熱い」といいにくるという。

 第2湯目は片山津温泉。国道8号よりも山側の粟津温泉は暴風雪だったが、海側の片山津温泉では暴風雨に変わった。ここでも「総湯」に入った。

「総湯」の入口では金沢から来たパン屋さんが店開き。おばちゃんたちがドドドッと集まり、次々とパンを買っていく。おばちゃんたちは誰もがパワフルでエネルギッシュ。それだからこそ長生きするのだろう。それにひきかえ男どもは…。

 男たちは休憩室で「あそこが悪い、ここが悪い」で、まるで体の悪さ自慢をしているようなものだ。おばちゃんたちのように、「おいしそうなパンがある!」といって、目の色を変えて飛び出すようなことはしない。片山津温泉の「総湯」で目にしたささいなことで、男と女の生命力の違いを感じるのだった。

 第3湯目の加賀橋立温泉へ。日本海の海岸に出ると、雨は上がった。そのかわりさらに風が強くなり、暴風が吹きまくっている。めまぐるしく天気が変わる冬の北陸。断崖が海に落ち、荒波が岩壁にぶち当り、白く砕け散る加佐ノ岬の風景を眺め、そのあと加賀橋立温泉の一軒宿「ゆもと」の湯に入った。源泉は62度という高温湯。ここも「旅館部」と「総湯部」から成っている。加賀というのはこのように温泉銭湯の「総湯」が発達しているところ。温泉好きにはたまらない。

 加賀市の中心、大聖寺に出ると、そこから山代温泉→別所温泉→山中温泉と3湯をめぐる。

 第4湯目の山代温泉は加賀屈指の大温泉地。ここでは総湯「山代温泉浴殿」に入る。浴室内には湯気がもうもうとたちこめている。2つの大きな円形の湯船が大浴場をより広く見せている。

 第5湯目の別所温泉では温泉銭湯の「別所温泉」に入る。大浴場と露天風呂の湯につかったが、源泉は42度、飲泉可の温泉だ。

 第6湯目の山中温泉まで行くと、雪は一気に激しくなり、吹雪の様相。路面も真っ白になる。雪と寒さに打ちのめされた。ここでは総湯「菊の湯」に入ったが、深い湯船に立ち湯でつかり、かろうじて体勢を整え直すことができた。

 山中温泉を最後に、石川県から福井県に入る。一瞬だが、日が差してきた。これで「雪地獄ともお別れだ!」とよろこんだが、甘かった…。

 第7湯目は福井県内では最大の温泉地、芦原温泉。温泉街の中心にある日帰り湯「セントピアあわら」の湯に入った。2階の「天の湯」が今日の男湯。明るい広々とした浴室。大浴場のほかに小さめの露天風呂もある。無色透明の熱めの湯。地階の「地の湯」が今日の女湯で、男湯と女湯は入れ替えをしている。

 第8湯目は三国温泉の日帰り湯「ゆあぽ〜と」。ここは九頭竜川の河口に面している。堤防で日本海と隔てられた九頭竜川は穏やかだが、すぐ右隣りの日本海は牙をむいて荒れ狂い、真っ白な大波が次々と砂浜に押し寄せている。「ゆあぽ〜と」の大浴場の湯につかりながらそんな冬の日本海を眺めるのだった。

 第9湯目は佐野温泉。天気は回復し、すっかり暗くなった夜空には月が出ている。日帰り湯「佐野温泉」の湯に入る。ここの大浴場は湯気がもうもうとたちこめ、人の顔も判別できないほど。飲泉可。内風呂と露天風呂に入り、40分ほどで出る。そのわずか40分で天気は急変し、激しく雪が降っている。あたりは一面、雪で真っ白。その雪も国道305号に出るころにはやみ、何事もなかったかのように月が出ている。あまりにもコロコロと変わる天気に翻弄される。

 国道305号で越前岬へ。猛烈な風との戦いの連続。その間では何度となく天気が崩れ、そのたびに雪が降ってくる。

 第10湯目の越前水仙の里温泉の日帰り湯「波の華」に入り、21時30分、越前玉川温泉の「玉川ビューホテル」に到着。ここが今晩の宿。5階の展望大浴場に入ったが、外は真っ暗で何も見えない。それにしてもすさまじい一日。ほとんど一日中、暴風雪と暴風雨に見舞われ、徹底的に痛めつけられた。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝食 木場温泉「湖山荘」 ご飯、味噌汁、目玉焼き、鶏のから揚げ、ブリの照り焼き、ヒジキ、サラダ、漬物、味噌汁
8時30分 木場温泉「湖山荘」を出発
643湯目 粟津温泉「総湯」(350円)
644湯目 片山津温泉「総湯」(370円)
645湯目 加賀橋立温泉「ゆもと」(370円)
646湯目 山代温泉「総湯」(370円)
647湯目 別所温泉「別所温泉」(370円)
昼食 「サークルK」 「コンビニ弁当」
648湯目 山中温泉「菊の湯」(370円)
福井県に入る
649湯目 芦原温泉「セントピアあわら」(500円)
650湯目 三国温泉「ゆあぽ〜と」(500円)
651湯目 佐野温泉「佐野温泉」(600円)
652湯目 越前水仙の里温泉「波の華」(400円)
夕食 レストラン「305」 「オムライス」(620円)
21時 越前玉川温泉「玉川ビューホテル」(1泊朝食10650円)
653湯目 越前玉川温泉「玉川ビューホテル」
本日の走行距離数 138キロ
本日の温泉入浴数 11湯

木場温泉「湖山荘」の朝食「湖山荘」を出発廃業湯のだるま温泉にもう一度、行ってみる

木場温泉「湖山荘」の朝食 「湖山荘」を出発 廃業湯のだるま温泉にもう一度、行ってみる

粟津温泉の「総湯」片山津温泉の「総湯」日本海に出る

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荒波が岩壁にぶち当り、砕け散る加佐ノ岬の風景加賀橋立温泉「ゆもと」山代温泉の「総湯」

荒波が岩壁にぶち当り、砕け散る加佐ノ岬の風景 加賀橋立温泉「ゆもと」 山代温泉の「総湯」

別所温泉「別所温泉」山中温泉「菊の湯」国道305号で福井県に入る

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芦原温泉「セントピアあわら」三国温泉「ゆあぽ〜と」「ゆあぽ〜と」から見る日本海

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佐野温泉「佐野温泉」レストラン「305」の「オムライス」

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