カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[113日目]

投稿日:2018年6月13日

水色のパンツ

四国編 14日目(2007年3月23日)

 伊野温泉「かんぽの宿 伊野」の部屋からの眺めはすばらしいものだった。真下を仁淀川が流れ、対岸には伊野の町並みが広がっている。その向こうに連なる山並みから朝日が昇る。明けゆく空の色を映した仁淀川の川面の色の変化は何ともいえない美しさ。そんな夜明けの風景を眺めたあとで、大浴場と露天風呂の朝湯に入る。塩分を含んだ無色透明の湯。露天風呂からは仁淀川がよく見える。仁淀川にかかるJR土讃線の鉄橋を轟音を響かせて列車が通り過ぎていく。

 湯から上がると朝食。バイキングだ。まずはポテト、ニンジンのたっぷり入ったシチューを飲み、ダイコン、ニンジン、ちくわ、卵のおでんを食べ、次に刺身、ところてん、大皿に盛った8種の料理で「3杯飯」を食べた。窓ぎわのテーブルに座り、伊野をとりまく風景を眺めながらの朝食はよかった。

「かんぽの宿 伊野」を出発。松山に通じる国道33号を行き、佐川で国道494号に入る。斗賀野トンネルを抜けると一気の下り。ほぼ下りきったあたりの小さなタバコ屋の角を右に曲がり、第1湯目の桑田山温泉に到着。山間の一軒宿桑田山温泉「そうだやま温泉」の湯に入る。「入浴後半日でツルツルの餅肌になります」と書かれた貼紙。湯船のみならず、シャワーも蛇口もすべて温泉。湯から上がると、宿の主人と話したが、

「県はここの湯は飲んでもいいといっているのに、地元(須崎市)はいけないといっている。県の方が市よりも上なのにねえ」
 といって嘆いていた。

 桑田山温泉の飲泉効果は「きわめて大きいよ」と宿の主人は強調した。

 第2湯目は久礼温泉「黒潮本陣」の湯。太平洋を見下ろす高台に豪壮な温泉施設が建っている。大浴場と露天風呂。大浴場からは「土佐の一本釣り」で知られるカツオ漁の久礼漁港とその背後の久礼の町並みが見える。露天風呂からは「鬼伝説」の双名島が見える。露天風呂の湯は塩辛い。これは太平洋の海水を湧かしたものだった。ちなみに「黒潮本陣」の源泉名はとびきり長い。「高知県中土佐町久礼上コッホラ7453−ロ−2温泉」となっていた。

 久礼からは国道56号を行き、七子峠を越え、四万十町に入る。日本の清流の代名詞、四万十川の世界に入った。

 四万十町の中心、窪川から四万十川の上流へ。

 四万十川の温泉めぐりの開始だ。

 第3湯目は松葉川温泉の「ホテル松葉川」。山間の一軒宿の温泉。大浴場と露天風呂の湯に入る。無色透明の湯。露天風呂からは渓流を眺めた。次に四万十川源流温泉へ。だが、残念ながら休業中で入れなかった…。

 船戸で国道197号に出ると宇和島方向へ。

 第4湯目は国道沿いの雲の上温泉。「雲の上のホテル」に隣接して日帰り湯「雲の上の湯」がある。ここではちょっとびっくり。それもうれしくなるようなびっくりだった。男湯と女湯は隣あっているが、男湯の方に入ろうとしたとき、何と水色のパンツだけの若い女性がのれんから顔をのぞかせているではないか。胸も見えてしまう。ぼくの姿を見ると、あわてて浴室内に戻っていったが、そんな彼女の姿が目に焼きついてしまう。まいったなあ…。

 そのおかげで「雲の上の温泉」がどんな湯だったのか、記憶が飛んでしまって思い出せないほど。それにしても彼女はいったい何をしようとしたのだろうか…。

 第5湯目は郷麓温泉。国道439号を南下したところにある。一軒宿の温泉民宿「郷麓温泉」の湯に入る。かわいらしい湯船だが、泉質はいい。肌にふわっとまとわりつくような湯のやわらかさ。湯から上がると、宿の主人としばらく話した。

 スカイウェイブ400はスズキの広報車両なので、浜松ナンバーだ。宿の主人はそれを見て、すごくなつかしがっている。30年以上も前のことだが、自衛隊の浜松基地(南基地)で訓練を受けたことがあるそうだ。青春真っ盛りの時期を浜松で過ごしたので、浜松への思いはひとしおのようだった。

 郷麓温泉からは四万十川の流れに沿って、道幅の狭い国道439号(与作国道)を行く。

 第6湯目は下津井温泉の「ヘルスセンター」。この地域の人たちだけが知っているような温泉だ。受付には誰もいないのでそのまま上がり、調理場にいたおばちゃんに入浴料を手渡した。そんな温泉なので、浴室には誰もいないだろうと思って入ったのだが、一人、先客がいた。小さなかわいらしい湯船につかりながら、先客の人と「湯の中談義」。登山が大好きだという地元の人で、温泉にも詳しかった。

 国道439号で大正へ。ここでは大正温泉の「ウエル花夢」に行ったが、休館日で入れず…。もう1湯の一の又渓谷温泉に行くのには時間がかかりそうなので断念した。

 大正からは国道381号を行く。暮れゆく四万十川の流れを見ながらスカイウェイブを走らせる。

 第7湯目は十和温泉。国道沿いの一軒宿「十和温泉」の湯に入る。無色透明の湯。内風呂のみで、露天風呂の湯は落とされていた。

 四万十町から四万十市に入り、江川崎からは国道441号を行く。

 第8湯目は用井温泉。四万十川を渡った高台の温泉ホテル「聖羅四万十」の湯に入る。無色透明の湯。浴室からは暗い四万十川の流れを見下ろす。対岸には江川崎の町明かり。ぽつん、ぽつんといった程度の町明かりなので寂しさが漂っていた。

 国道441号で夜の四万十川沿いに走り、四万十市の中心、中村へ。新安並温泉「サンリバー四万十」の湯に入るつもりでいたら、休業中で入れず…。

 中村からは四万十川を渡り、国道321号で四国最南端の足摺岬に向かう。その途中の海癒の湯温泉の日帰り湯「海癒の湯」はすでに営業時間を終えていて入れなかった。

 今晩の宿、足摺岬温泉の国民宿舎「足摺テルメ」に到着。時間は21時30分。第9湯目の「宿湯」に入り、湯から上がると、遅い夕食。もう腹ペコで死にそう…。国道321号沿いに一軒だけあったコンビニ「スリーエフ」で買ったジャンボサイズの「爆弾おにぎり」を2個、食べる。キムチ入りの牛カルビと味噌カツ入りの2種。食べ終わると、やっと人心地がついた。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 伊野温泉「かんぽの宿 伊野」
朝食 伊野温泉「かんぽの宿 伊野」 バイキング
9時 伊野温泉「かんぽの宿 伊野」を出発
1037湯目 桑田山温泉「そうだやま温泉」(600円)
1038湯目 久礼温泉「黒潮本陣」(600円)
七子峠 峠越え
1039湯目 松葉川温泉「ホテル松葉川温泉」(700円)
昼食 松葉川温泉「ホテル松葉川温泉」 「山菜うどん」(588円)
四万十川源流温泉 休業中で入れず
1040湯目 雲の上温泉「雲の上のホテル」(500円)
1041湯目 郷麓温泉「郷麓温泉」(400円)
1042湯目 下津井温泉「ヘルスセンター」(400円)
大正温泉「ウエル花夢」 休館日で入れず
又渓谷温泉 行くのを断念
1043湯目 十和温泉「十和温泉」(800円)
1044湯目 用井温泉「星羅四万十」(1000円)
新安並温泉「サンリバー四万十」 休業中で入れず
21時30分 足摺温泉「足摺テルメ」(1泊朝食9600円)
1045湯目 足摺温泉「足摺テルメ」(1泊朝食9600円)
夕食 コンビニ弁当
本日の走行距離数 321キロ
本日の温泉入浴数 9湯

伊野温泉「かんぽの宿 伊野」から見る日の出「かんぽの宿 伊野」の朝湯に入る「かんぽの宿 伊野」の朝食を食べる

伊野温泉「かんぽの宿 伊野」から見る日の出 「かんぽの宿 伊野」の朝湯に入る 「かんぽの宿 伊野」の朝食を食べる

「かんぽの宿 伊野」を出発桑田山温泉「そうだやま温泉」「そうだやま温泉」の湯

「かんぽの宿 伊野」を出発 桑田山温泉「そうだやま温泉」 「そうだやま温泉」の湯

久礼温泉「黒潮本陣」四万十川の流れ松葉川温泉「ホテル松葉川温泉」

久礼温泉「黒潮本陣」 四万十川の流れ 松葉川温泉「ホテル松葉川温泉」

「ホテル松葉川温泉」の湯「ホテル松葉川温泉」の「山菜うどん」四万十川の流れ

「ホテル松葉川温泉」の湯 「ホテル松葉川温泉」の「山菜うどん」 四万十川の流れ

四万十川にかかる橋雲の上温泉「雲の上のホテル」雲の上温泉の日帰り湯「雲の上の湯」

四万十川にかかる橋 雲の上温泉「雲の上のホテル」 雲の上温泉の日帰り湯「雲の上の湯」

郷麓温泉「郷麓温泉」「郷麓温泉」の湯に入る下津井温泉「ヘルスセンター」

郷麓温泉「郷麓温泉」 「郷麓温泉」の湯に入る 下津井温泉「ヘルスセンター」

梼原川の津賀ダム夕暮れの四万十川十和温泉「十和温泉」

梼原川の津賀ダム 夕暮れの四万十川 十和温泉「十和温泉」

「十和温泉」の湯足摺温泉「足摺テルメ」に到着夕食の「爆弾おにぎり」

「十和温泉」の湯 足摺温泉「足摺テルメ」に到着 夕食の「爆弾おにぎり」

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