カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

2020年版ツーリングマップル東北

投稿日:2020年3月13日

 今日(3月3日)は一年で一番うれしい日です。東京・麹町の昭文社本社で、『ツーリングマップル』編集長のM氏から出来上がったばかりの『ツーリングマップル東北』をもらったからです。1年がかりで作り上げた『ツーリングマップル東北』。帰りは小田急線の「ロマンスカー」に乗って、解禁した缶ビールを飲みながら『ツーリングマップル東北』の1ページ、1ページを見ていくのでした。思わず笑みがこぼれてしまうのです。

 これは『ツーリングマップル東北2020年版』のカソリの巻頭言です。

2020年版に寄せて

 2020年版の実走取材は2019年6月1日に開始した。9月4日までの間で5回にわたって東北全域を駆けまわり、30日間で10232キロを走った。しかしこれは公式の実走取材で、「みちのくライダー・カソリ」は1月から12月まで、1年を通して東北各地を走りまわっている。東北はそれほどまでに面白く、魅力的なのだ。特筆すべきは鳥海山と岩木山の2名山に登ったことだ。鳥海山では出羽の一宮の大物忌神社本社、岩木山では津軽の一宮の岩木山神社奥宮を参拝した。

 3月11日には東北大平洋岸最南端の鵜ノ子岬を出発し、東北太平洋岸最北端の尻屋崎まで走った。これが東日本大震災以降、第22回目の「鵜ノ子→尻屋崎」になる。夏の実走取材では第23回目の「鵜ノ子岬→尻屋崎」を走った。「鵜ノ子岬→尻屋崎」はこれからもずっとつづけるつもりだ。

 このようにして1年をかけて東北各地を走りまわって得た情報を『ツーリングマップル東北』に反映させています。ということでみなさんには、ぜひとも最新の『ツーリングマップル東北』を見てもらいたいのです。これを持って東北に向かって欲しいのです。東北ツーリングの途中でカソリを見かけたら、気軽にお声をかけてくださいね。

(賀曽利隆)

超晴男コンビ、カソリ&巣山の決断

 6月1日から9月4日までの『ツーリングマップル東北』の実走取材のうち、6月18日から6月20日までは巣山カメラマンが同行してくれました。

 巣山カメラマンとは6月18日6時に国道7号の新潟・山形県境で落ち合いました。

 第1日目は山形・秋田県内の日本海側を走りました。鳥海山や男鹿半島がメインで、能代に泊まりました。

 第2日目は秋田・青森県内の日本海側を走り、津軽半島最北端の龍飛崎まで行きました。龍飛崎から青森へ、青森からさらに弘前まで行って泊まりました。

 第3日目は岩木山、八甲田山、奥入瀬渓流、十和田湖、八幡平とまわり、最後は岩手山の焼き走り。東北道の西根ICで巣山カメラマンと別れたのです。

 このようにして巣山カメラマンは3日間同行してくれたのですが、第1日目では455枚、第2日目では399枚、第3日目では298枚と、合計すると1152枚もの写真を撮ってくれました。そのうちの3枚の写真だけが表紙に使われました。

 ということで表紙の写真ですが、通常版は八甲田山(青森)です。

『ツーリングマップル東北2020年版』の通常版表紙の写真(撮影:巣山悟)

『ツーリングマップル東北2020年版』の通常版表紙写真(撮影:巣山悟)

 ここは酸ヶ湯温泉の「まんじゅうふかし」のすぐそばで、正面に見えているのは八甲田山の硫黄岳(1360m)です。酸ヶ湯温泉の地獄沼前の小道を入ったところにあります。温泉の蒸気の通るベンチに座るとポカポカと、じつに気持ちよく、ゴロンと横になって5分寝をしました。巻末の写真ページ、6ページの「カソリの轍2020」には、「まんじゅうふかし」で5分寝する姿が巣山カメラマンによって撮られています。小冊子で寺崎愛さんが描いてくれているカソリのイラストも、そのときのものです。

 この表紙写真はまったくの偶然から生まれたものです。「まんじゅうふかし」でゴロンと横になり、5分寝を楽しんだあと、硫黄岳をバックにした走行写真を撮ろうということになりました。そこでバイクを回転させたのですが、その瞬間の写真なのです。ぼくはまったく撮られたのがわかりませんでした。そのときの撮ろうとした写真は、「カソリの轍2020」の「まんじゅうふかし」の次の写真、硫黄岳を背にして、こちらに向かってくる写真だったのです。このような偶然の一瞬を見逃さずに撮った巣山カメラマンはさすがです。また、そのような写真を選んだ編集部もすごいと思います。

酸ヶ湯温泉の「まんじゅうふかし」で5分寝するカソリ(撮影:巣山悟)

酸ヶ湯温泉の「まんじゅうふかし」で5分寝するカソリ(撮影:巣山悟)
八甲田山の硫黄岳をバックにして走るカソリ(撮影:巣山悟)

八甲田山の硫黄岳をバックにして走るカソリ(撮影:巣山悟)

 次にR版ですが、表表紙は男鹿半島(秋田)です。ここは男鹿水族館GAOのすぐ近くの登り坂のコーナーで、背景の海は戸賀湾です。ここからの男鹿半島西海岸は東北のハイライトシーン。裏表紙は山形県の三瀬海岸(山形)です。国道7号の三瀬の交差点からわずかに入ったところにこのような世界があります。三瀬海岸の巨岩・奇岩には目を奪われます。

『ツーリングマップル東北2020年版』のR版表表紙の写真(撮影:巣山悟)

『ツーリングマップル東北2020年版』のR版表表紙の写真(撮影:巣山悟)
『ツーリングマップル東北2020年版』のR版裏表紙の写真(撮影:巣山悟)

『ツーリングマップル東北2020年版』のR版裏表紙の写真(撮影:巣山悟)

 ここでカソリ&巣山カメラマンのコンビのすごさを紹介しましょう。

 巣山カメラマンとは6月18日の午前6時に国道7号の新潟・山形の県境で落ち合ったといいましたが、最初は山形県内の日本海側を一番のメインテーマにするつもりでした。裏表紙になった三瀬海岸をはじめ、由良から加茂への庄内夕陽街道、湯野浜温泉、最上川河口、酒田、鳥海山と、どれもが表紙になってもおかしくない写真を多数、撮りました。道の駅「鳥海」で昼食。この頃から天気が急に怪しくなってきたのです。この時点で、北は晴れています。超晴男コンビのカソリ&巣山カメラマンはすぐに決断し、高速道を使って一気に男鹿半島へと舞台を移したのです。

 これが大正解。男鹿半島は晴天で、きれいな青空が広がっていました。臨機応変さが我々の大きな武器。そのおかげで男鹿半島の表紙写真を撮れました。その日の米代川の河口に落ちていく夕日はすばらしいものでした。2019年版表紙が下北半島の夕日でしたので、残念ながら2020年版では表紙になりませんでしたが、夕日には徹底的にこだわるカソリ&巣山カメラマンなのです。

能代の米代川河口に落ちる夕日(撮影:巣山悟)

能代の米代川河口に落ちる夕日(撮影:巣山悟)

「東日本大震災」から9年目の3月11日には2020年版の『ツーリングマップル東北』を持って、第25回目の「鵜ノ子岬→尻屋崎」に行ってきます。2021年版の『ツーリングマップル東北』に向けて目を大きく見開いて、いろいろなものを見てきますよ。

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