第55回 下関
投稿日:2011年2月24日
2010年 林道日本一周・西日本編
日本のフグの8割が集まる南風泊漁港
国道2号の関門トンネルを抜けて下関へ。下関駅前でスズキDR-Z400Sを停めた。さー、「林道日本一周・中国山陰編」の開始だ。
下関駅前からまずは県道250号で彦島に入っていく。
短い関彦(かんげん)橋を渡って彦島に入っていくのだが、市街地がそのままつづいているので、よーく気をつけていないと、気がつかないまま彦島に入ってしまうことになる。この橋に隣り合って水門があるが、時間帯によってはその水門の上を通って彦島に入っていける。
県道250号の行止まり地点が南風泊(はえどまり)漁港。ここに日本のフグの大半が水揚げされる。
下関は「フグの本場」。全国で消費されるフグの8割前後は下関に水揚げされる。そのフグの水揚げされる漁港が南風泊漁港なのだ。
この南風泊漁港の南風泊市場で、フグの競りを見たことがある。それはじつに印象深いものだった。
夕暮れどきになると、フグ釣り漁船が次々に入港してくる。船は50トン前後で8、9人乗り。フグナワと呼ぶフグ専用の延縄漁船である。
かつての漁場は関門海峡から徳山沖にかけての周防灘や、豊後水道、玄海灘だったが、今では東シナ海が主要な漁場になっている。さらに五島列島や奄美諸島などからの養殖フグが入ってくる。養殖ものの値段は天然ものの半分ほどだという。
南風泊漁港に接岸した漁船の船底からは、生きているフグがいったん市場内の大きな水槽に移し変えられる。このように、釣り上げられたフグは生かして南風泊漁港まで運ばなくてはならない。というのは死んだフグは値段が半分から3分の1くらになってしまうからだ。船中でフグを生かしておくために、フグ釣り漁船は巨費を投入し、大がかりな装置をつけなくてはならないという。
午前2時を過ぎると、もう市場は動き出す。氷詰めにされた発泡スチロールのケースが次々に並べられていく。これらは死んだフグ用。午前2時50分、くじ引きがおこなわれ、早い競りの順番に当たった船から、水槽の生きているフグが引き上げられる。プラスチックのケースに入れられ、大きさをそろえてケースを並べていく。
午前3時20分、市場内にベルが鳴り響き、いよいよ競りが始まる。赤い帽子をかぶった競り人が、筒形の紺地の布袋に片手を突っ込み、
「さー、どうかー」
と、威勢のいい声を出して、仲買人の買う気をさそう。
仲買人たちは青い帽子をかぶっている。布袋の中での競り人と仲買人の指のからみあいで、フグ1ケースの値段が決まっていく。買主の決まったフグはすぐさま業者の処理場に運ばれていく。
そこではフグの調理師免許を持った人がさばくのだが、まずひれを落とし、背と腹の両側に切り口を入れ、尾の方から両面の皮をはいでいく。えらを引き抜き、頭を落とし、眼球を捨て、内臓をとり除く。このようにして1分1秒を争うようにしてさばかれたフグは専用の冷凍コンテナに入れられ、トラックで福岡空港などに運ばれ、東京や大阪といった大消費地に送られていく。
夜が明けると、南風泊漁港にはまったく人気がなくなった。静かな海を見ていると、真夜中の熱気、喧騒がまるで夢でも見たかのように思われてくるのだ。それが南風泊漁港のフグの競りだった。
南風泊漁港からは短い竹ノ子橋で竹ノ子島に渡り、島の先端まで行くと、沖に浮かぶ六連島を眺めた。竹ノ子島から下関駅前に戻った。