第153回 国道152号 2
投稿日:2011年11月19日
2010年 林道日本一周 関東・東北編
しらびそ峠で感動の御来光を拝む
翌朝は夜明けとともに民宿「ひなた」を出発し、しらびそ峠へと急いだ。カソリ&ヒラシーの作戦は見事に的中。天気は快晴。峠に立つと、赤石岳(3120m)から聖岳(3013m)へとつづく南アルプスの山並みから朝日が昇る。あまりにも神々しい光景で、昇ったばかりの朝日に向かって思わず手を合わせた。まさに「御来光」。しらびそ峠では山岳信仰の行者になったかのような気分に浸った。
しらびそ峠での感動的な「御来光」には、
「おー、これぞツーリング!」
と思ったりもした。
前日の濃霧の峠とは、まったく違う顔を見せてくれた。そのガラリと変った表情の変化に、ツーリングの一期一会的な出会いを痛感してしまう。人との出会い、土地との出会い、自然との出会い…。
峠上でしばし夢のような時間を過ごしたあと、下栗の民宿「ひなた」に戻り朝食。朝食後はイロリのわきで、民宿のお母さんの話を聞いた。
「ここはね、長野よりも浜松や名古屋の天気予報の方がよく当るのよ」
しばしば口にする語尾の「ら」あたりも、浜松や名古屋に似ているような気がする。さらに似ているのは、この地方を代表する祭りの「霜月祭り」だ。下栗では毎年、12月13日、夜を徹して行なわれる。奥三河では同じ頃、各地で「花祭り」が行なわれる。青崩峠を越えた遠州側・水窪の西浦では「西浦田楽」が行なわれる。これらの祭りはすべて面をつけた夜通しの舞いで、共通点がほかにも多い。
今、新に三遠南信道がこの地域を結ぼうとしているが、三河と遠州、南信濃はもともと峠をかいして結ばれていた。いくつもの峠を越えて秋葉山に通じている秋葉街道などは、まさにそれを象徴しているかのようだ。
秋葉山で遠州をわしづかみ
下栗をあとにし、一気に遠山川の谷間に下り、国道152号に戻ってきた。
4番目の青崩峠に向かう前に、3番目の地蔵峠に戻っていく。三遠南信道の矢筈トンネルの入口までは2車線の道。そこから先は1車線になり、地蔵峠下の大島河原オートキャンプ場を過ぎると舗装林道のような様相。さらに進むとダートに突入し、やがて道はプッツンと切れる。地蔵峠の方向からは清流が流れてくる。谷間の緑が目にしみる。日本の豊かな自然をまのあたりにするかのような所だ。
地蔵峠の行止まり地点から来た道を戻り、南信濃の和田から青崩峠を目指す。兵越峠との分岐のT字路を右へ。峠に向かってしばらく登ったところで崩落。このように中央構造線というのはしばしば崩れる。もっともこの崩落がなくても、そのすぐ先で国道152号は途切れる。青崩峠には歩いていくしかないのだ。
さきほどのT字の分岐点まで戻り、今度は兵越峠へ。
兵越峠は分断国道152号の青崩峠の迂回路になっている。信遠(信州・遠州)国境の兵越峠を越えて遠州側に入り、三遠南信道の草木トンネルを抜けて静岡県側の国道152号に出た。三遠南信道は兵越峠の西側をトンネルで抜ける予定のようだが、トンネル工事をしている様子もなく、完成の見通しもたっていない。このトンネルが完成すれば、三遠南信は一気に近づくのだが…。
さて、分断国道の152号だ。今度は静岡県側を行けるところまで行ってみる。青崩峠に向かって登っていくと、やがて青崩林道に入り、舗装路からダートに変る。かなり登ったところが道の行止まり地点。そこにバイクを止め、青崩峠まで歩いて行く。といっても5分ほどの距離だが。山道の途中には何ヵ所か小さな崩れがあった。それらはすべて青石を砕いたようなもの。それが流れ落ちている。色は「青」というよりも、翡翠の「碧」を思わせる。兵越峠につづいて信遠国境の青崩峠に立つと、全国的な猛暑だというのに、信州側から遠州側に吹き抜ける涼風で峠はひんやりとしていた。
青崩峠をあとにし、水窪に下っていく。青崩峠を境にして街道名が変る。信州側では「秋葉街道」だが、遠州側では信州に通じる街道なので「信州街道」と呼んでいる。その途中では「西浦田楽」の西浦(にしうれ)に立ち寄り、足神神社に参拝。ここは名水の地で、「足神の名水」を飲んだ。
水窪に下ると灼熱地獄。何と国道152号沿いのデジタルの温度計は40度を示している。信州の峠とは、あまりにも違う世界だ。
水窪からさらに国道152号を行き、秋葉山へ。まずは秋葉神社下社に参拝。秋葉神社は日除けの神として日本中に知られている。東京の秋葉原も秋葉山に由来している。下社のあとは参道の山道を大汗をかきながら登り、秋葉山(885m)の秋葉神社上社へ。本殿前の境内からの眺めは絶景だ。茫々と広がる遠州を一望のもとに見下ろす。遥かかなたには遠州灘が霞んで見える。その光景を見ながら、遠州という国をわしづかみにしているかのような気分になった。
秋葉山からの絶景を目にして、
「おー、ここは要塞だ」
と、ヒラシーにいった。まさに天然の要塞を思わせる地形。秋葉山は遠州を支配するのには絶好の地だと、カソリは考えた。
国道152号で信州の諏訪大社から遠州の秋葉山へ。それはじつにいろいろなことを考えさせてくれる「峠越えツーリング」。最後に遠州の一の宮、小国神社を参拝.袋井ICで東名に入り東京に戻った。
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今回のエリア:昭文社ツーリングマップル関東甲信越 15→22→15→8→2