環日本海ツーリング[13]
投稿日:2012年2月25日
津軽海峡を越え、梅雨が終わる
夜明けの松前を出発。国道228号を行く。たえず左手に日本海を見ながら走る絶景ルート。スズキDR-Z400Sを走らせながら日本海の潮の香をかぐ。
本州では梅雨のぐずついた雨模様の天気の連続だったが、津軽海峡を越えるとすっきりとした青空が広がっている。それが気持ちいい。空の色を映して日本海も青い。
日本海の海岸には点々と小集落がつづく。国道228号は高台を通っているので、それら海沿いの小集落を見下ろしていく。
松前町から上ノ国町に入り、石崎を通っていく。
石崎といえば道南最長ダート、石崎松前林道の入口。「林道日本一周」(2010年)では豪雨の影響で走れなかっただけに心を引かれたが、グッとこらえ、「今回は環日本海だから」と自分で自分にいい聞かせて諦めた。
上ノ国の町に入る手前、国道沿いの夷王山(159m)の中腹には北海道遺産の「勝山館跡」がある。
勝山館は松前藩の元を築いた松前氏初代の武田信廣の館跡。1470年頃に築かれたという。自然の地形をうまく利用した三段構の山城で、まさに攻めるに難く守るに易い要塞。武田信廣はこの地で64歳の生涯を終えた。ここ上ノ国は北海道の城下町、松前の原点ということになる。
勝山館跡からは近年の発掘調査で約5万点にものぼる陶磁器や金属器、木器などが出土している。ここでは鉄製品や銅製品が盛んにつくられ、それが交易品になっていたという。当時のアイヌ人の使っていた骨角器も出土していることから、和人とアイヌ人が一緒に住んでいたのではないかと推測されている。
出土した陶磁器類の半分近くは青磁などの中国製で、さらに北夷(今のサハリン)から「銅雀台瓦硯」が武田信廣に献上されていることから、この地がいかに交易の中心であったか、また交易で栄えていたかがわかる。
このように武田信廣の築いた勝山館は要塞としての山城という一面だけでなく、町、都市としての色彩が強く、16世紀の前半から半ば頃にかけてが最盛期。その頃、アイヌ人の「蝦夷地」と和人の「和人地」の境は上ノ国あたりと定められ、交易船は上ノ国の沖でいったん帆を降ろす決まりになっていたという。
北海道にもこういう歴史があるのだ。
上ノ国を過ぎると、前方には江差の町並みが見えてくる。かもめ島も見える。
5時20分、松前から63キロの江差に到着。函館から江差までが国道228号になる。