アドレス日本巡礼[180]
投稿日:2014年11月12日
信濃路の終わり
JR中央本線の南木曽駅前を出発し、妻籠宿へ。ここは中山道の宿場めぐりのハイライト。昔ながらの宿場をそっくりそのまま保存している。電線が地下を通っているので、目障りな電柱が1本もない。下町、中町、上町、寺下、尾又とつづく800メートルほどの宿場町には格子戸の家々が並び、復元された本陣や総檜造りに建て替えられた脇本陣がある。まるで江戸時代の中山道にタイムスリップしたかのようだ。
妻籠宿からは木曽路最後の宿場の馬籠宿へ。中山道は木曽川を離れ、馬籠峠を越える。峠道は舗装されている。大半の車は木曽川沿いの国道19号を通るので、交通量は少ない。峠への途中では中山道の石畳を見る。
緑濃い木曽の山々を眺めながらアドレスを走らせ、標高801メートルの馬籠峠に到達。ここが現在の長野・岐阜の県境になっている。
馬籠峠は元々は長野県内の峠で、南木曽町と山口村の町村境になっていた。それが2005年2月の合併で山口村は岐阜県の中津川市に編入され、馬籠峠は長野・岐阜の県境になってしまった。長野県といえば一国一県で、信濃の全部が長野県になっていた。それが崩れ、信濃の一部は岐阜県になったのだ。
馬籠峠を越えて岐阜県に入り、馬籠宿に下っていく。峠近くの集落はその名も「峠」。峠集落では、かつては信濃の産物と美濃の産物が集まる市が立ったという。
馬籠峠を下ったところが馬籠宿になる。第43番目の宿場で、ここが木曽路最後の宿場であるのと同時に、信濃路最後の宿場にもなる。馬籠宿に着いたときは、「おー、ここまで来たか!」といった感動をおぼえた。
妻籠宿を訪れる観光客は多いが、馬籠宿を訪れる観光客はそれ以上に多い。馬籠宿では石畳の中山道を歩き、本陣跡の「藤村記念館」や「馬籠脇本陣史料館」などを見てまわった。ここは明治の文豪、島崎藤村の故郷。馬籠宿を舞台にした代表作の『夜明け前』で、その名は一躍、日本中に知られるようになった。
馬籠宿を出発。美濃の落合宿に向かって下っていくと風景が開けてくる。前方のゆるやかに波打つ山々の間には、白く光って木曽川が流れている。信濃と美濃の国境には、「是れより北 木曽路」の碑が立っている。中山道の木曽路が終わった。信濃から美濃に入ると、空がひときわ大きくなった。