カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

V-Strom1000で行く日本[35]

投稿日:2015年12月21日

日本本土最南端

2015年9月20日(東京〜鹿児島)

 大隅半島を南下し、最南の町、南大隅町に入る。根占を通り、旧佐多町の中心の伊座敷に到着。いよいよここから日本本土最南端の佐多岬に向かう。岬入口の大泊の海岸が「最南端バイクミーティング」の会場だが、イベントの開始までにはまだ十分に時間があるので先に佐多岬まで行く。

 佐多岬への道は今でこそ無料だが、かつては悪名高き有料道路の「佐多岬ロードパーク」だった。ここの料金所のゲートは17時(夏期は18時)に閉まってしまうからだ。ゲートへの到着が17時を過ぎてしまい、悔しい思いで大泊の浜で野宿し、翌朝、佐多岬まで行ったこともある。

「佐多岬ロードパークウエイ」が悪名高かったのはそれだけではない。日本本土最南端の佐多岬を日本縦断の出発点、もしくは終着点にする旅人はきわめて多く、「佐多岬〜宗谷岬」というのは昔も今も日本縦断の定番コースなのだ。かの植村直己さんも「宗谷岬→佐多岬」を歩いた。ところがこの有料道路は自転車や徒歩の通行は禁止されていたので、自転車旅、徒歩旅の旅行者は泣く泣くバスに乗って岬まで行くしかなかった。我々ライダーにとっても時間制限があるだけでなく、バイクは400円(往復)と料金が高く、さらに駐車場から岬までは歩いていくのだが、その入口の料金所でもう100円、払わなくてはならなかった。だが、それももう昔話になった。今は無料だ。

 佐多岬への道は快適な2車線の舗装路。沿線は南国の緑濃い樹林でびっしりと覆われている。イノシシが道路を横切っていったが、「60代編日本一周」(2008年)の時には捕獲されたイノシシを見た。岬への途中では北緯31度線を越える。そこには「カイロ、ニューデリー、上海、ニューオーリンズ」と北緯31度線上の都市名が書かれている。なんとも惜しいことだが、これが北緯30度線だったら、一大観光地になっていたはずだ。北緯30度と31度の違いは大きい。ちなみに日本の北緯30度線は屋久島の南の海上になる。北緯40度線は東北を横断していて、「北緯40度線」というだけで人を呼ぶ。ぼくもこの北緯40度線に沿って太平洋の黒崎(岩手県)から日本海の入道崎(秋田)まで走ったことがあるが、その線上にはあちこちにモニュメントが建っている。「サハリン縦断」では北緯50度線を越えたが、北緯50度線といえばかつての日本領樺太とロシアの国境だった。

 佐多岬への自動車道の行き止まり地点の駐車場にV−ストローム1000を止めると、岬への遊歩道を歩いていく。ガジュマルなどの亜熱帯樹が覆いかぶさるようにしておい茂っている。御崎神社に参拝。南大隅町の観光マップを見ると、次のように書かれている。

 御崎神社は日本で最古の通貨である和同開珎と同じ時代の和銅元年(708年)の開基。綿津見三神と住吉三神を祭神としてまつっています。最初は海浜の岩窟にあったといわれていますが、中世に横山久高という武将によって現在の御崎中腹に移されました。今では縁結びの神として訪れる恋人たちが願掛けをしている光景をよく見かけます。

 御崎神社の参拝を終えると、さらに細道を歩き、日本本土最南端の地、北緯30度59分30秒の佐多岬に立った。雲ひとつない最高の天気で、三島村の竹島と硫黄島がはっきり見える。大隈海峡を隔てた水平線上には左から種子島、屋久島、口永良部島が淡く、墨絵のように見える。岬の先端の岩礁のひとつ、大輪島に立つ灯台の白さと海の青さがきわだった対照を見せている。この佐多岬灯台は歴史の古いもので、慶応2年(1866年)、江戸幕府と米、英、仏、蘭の4ヵ国との間でとり決めた条約に基き、全国8ヵ所に設けられた灯台のひとつ。明治4年の灯台完成時には菜種油を使って明かりを灯したという。

 佐多岬には「日本本土最端地 四極交流盟約」の碑も建っている。そこには、次のように四極の市町名が記されている。
  最東端 北海道根室市
  最西端 長崎県小佐々町(現佐々町)
  最南端 鹿児島県佐多町(現南大隅町)
  最北端 北海道稚内市

 最東端は納沙布岬、最西端は神崎鼻、最北端は宗谷岬でどこも心に残る絶景岬だが、それら四極の中でもとくに佐多岬は絶景だ。しばし絶景の佐多岬に立ち尽くし、岬からの南海の風景を眺めるのだった。

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▲日本本土最南端の佐多岬への快走路

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▲緑濃い佐多岬への道

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▲山肌を埋め尽くす亜熱帯樹

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▲駐車場のガジュマル

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▲佐多岬の御崎神社

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▲佐多岬への遊歩道

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▲佐多岬に到着

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▲「日本本土最端地 四極盟約」の碑

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▲佐多岬からの眺め

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