東北四端紀行[11]
投稿日:2017年2月11日
南端編 11 最後は会津西街道で越える
「南端編」の最後は国道121号での山王峠越えだ。前回の帝釈山脈越えと同じように東北道の宇都宮ICが出発点になる。スズキのDR−Z400を走らせ、日光宇都宮道路で今市ICまで行き、そこから国道121号を北上。この間は国道352号との重複区間。鬼怒川温泉、川治温泉と通り、関東北部の山中に入っていく。
このルートは古くからの関東と会津を結ぶ「会津西街道」。上三依で塩原温泉郷から尾頭峠を越えてくる国道400号と合流するが、このルートは昔の「会津東街道」に相当する。関東から会津への会津街道にはもう1本、「会津中街道」があった。那須連峰の最高峰、三本槍岳(1916m)西側の大峠を越え、下郷に通じていた。「会津東街道」は尾頭峠のトンネルの完成で蘇ったが、「会津中街道」は廃道同然の山道になっている。
こうして国道121号は国道352号、国道400号と、3本の「重複国道」となって山王峠を越えていく。この「重複国道」だが、きちんと3本の国道のルートナンバーが表示されているのがすごい。日本中の「重複国道」が一日も早く、こうなることを期待する。
さて、栃木・福島県境、というよりも関東と東北(会津)の境となる山王峠は帝釈山脈越えの一番東側の峠になる。冬だと山王峠を境にして関東側は晴天、会津側は雪ということがよくある。冬ツーリングでは痛い目にあっているところで、ツルンツルンのアイスバーンに何度、転倒したことか…。中央分水嶺の峠で関東側の川は鬼怒川→利根川となって太平洋に流れ出る。東北側の川は大川→阿賀川→阿賀野川となって日本海に流れ出ていく。山王峠は東北南端の境目にとどまらず、日本の大きな境目になっている。
山王峠を下ったところで国道352号が分岐し、中山峠を越えて檜枝岐へと通じている。さらに南会津の中心、田島で国道400号が分岐し、舟鼻峠を越えて会津川口に通じている。そして田島から下郷までの間は国道289号との「重複国道」になる。下郷では国道289号が分岐し、全長4345メートルの「甲子トンネル」で甲子峠を抜け、白河に通じている。下郷から湯野上温泉までの区間が、「今市→会津若松」間で唯一、国道121号単独のルートになる。
湯野上温泉で国道118号と合流し、大川ダム、芦ノ牧温泉を通って会津盆地に入っていく。会津若松に到着すると、城下町、会津若松のシンボルの鶴ヶ城に行き、天守閣に登った。目の前には360度の大展望。そこから町並みを見下ろしていると、会津若松が盆地の町だということがよくわかる。町並みをぐるりと取り囲むようにして、山並みが途切れることなくつづいている。
磐梯山が見える。飯豊連峰の山々が見える。南会津の山々は幾重にも重なり合って越後へ、奥日光へとつづいている。只見川と合流した阿賀川が日本海に向かって流れ出るあたりだけが、スーッと山の高さを低くしている。会津は他所の世界とは隔絶された世界。いわば独立国のようなものだ。会津人はどこへ行くのにも、この屏風のように立ちふさがる山並みを越えていかなくてはならない。今、越えてきた山王峠を目に浮かべ、「峠こそが会津の生命線!」だと、鶴ヶ城の天守閣で実感する。
会津若松を最後に「南端編」を終え、会津若松ICで磐越道に入り、東北道で東京に戻るのだった。