温泉めぐり日本一周[73日目]
投稿日:2018年1月22日
こういうときは寝るに限る
越前玉川温泉「玉川ビューホテル」では朝湯→朝食の順番が逆になってしまった。理由は通信の状況が悪く、原稿が送信できなかったからだ。毎朝、4時前後には起き、7時ぐらいまでには原稿を送信し、そのあと30分ほど寝て、7時30分に朝湯、8時に朝食というのがいつもののパターン。それが原稿を送信できないと、送りたい一心で何度も携帯での送信を繰り返し、あっというまに1時間ぐらいが過ぎてしまう。
結局、原稿は送れないまま、「朝食の用意ができましたよ」の声で送信を断念。別の部屋に用意されている朝食を食べた。朝から「イカ刺し」つき。イカの塩辛も美味。そのほか湯豆腐、焼き魚、のり、のりの佃煮などで3杯飯を食べ、そのあとで朝湯に入る。
宿の5階、最上階にある展望大浴場の湯につかる。眼下を走る国道305号と玉川漁港を見下ろす。雪がチラチラ降っている。鉛色の日本海は前日ほどには荒れていない。胸にしみる「玉川ビューホテル」の浴室からの眺めだった。
8時30分 越前玉川温泉「玉川ビューホテル」を出発。
アクティブハウス越前温泉「漁火」は入れず。第1湯目は越前温泉の日帰り湯「日本海」になった。内風呂からも、露天風呂からも、湯につかりながら目の前の日本海を見る。絶景湯だ。
第2湯目は河野シーサイド温泉の日帰り湯「ゆうばえ」。ここも浴室からは日本海を見る。ついさきほど、パーッと日が差したと思ったら、日本海にはもう鉛色の雪雲がたれこめている。
河野シーサイド温泉の日帰り湯「ゆうばえ」から上がると、国道305号→河野海岸有料道路→国道8号で敦賀へ。敦賀市内に入ると、いっぺんに雪景色に変わった。降りしきる雪はあっというまに激しさを増した。
第3湯目は敦賀きらめき温泉の日帰り湯「リラ・ポート」の湯。ここは高台の上にある大規模な温泉入浴施設。3階の大浴場と大露天風呂の湯につかったあと、2階のレストランで昼食。「日替わり定食」にする。刺身と煮物、和え物、漬物つき。小やみなく降りつづく雪を見ながら窓ぎわの席で食べた。
敦賀からは国道27号を行く。旧道は関峠を越えるが、新道はその北の旗護山を貫く長いトンネルで越狭(越前・若狭)の国境を越えていく。ここでは旧道経由で若狭へ。
越前から若狭に入れば雪はやむのではないかと淡い期待を寄せたが、まったくの逆で、トンネルを抜け出た若狭は大雪の様相。越前側よりも、より激しく降っている。
「これはまずい!」
バサバサ降りつづく雪はヘルメットのシールドにへばりつき、全く前方が見えなくなってしまう。ぬぐっても、ぬぐいきれるような雪ではない。裸眼で走ると、目に突き刺さってくる雪の痛みは我慢の限界を超える。
除雪車が出動しているが、除雪したそばから路面にはかなりの雪が積もってしまう。国道27号は幹線国道なので、そんな激しい雪にもかかわらず、大型トラックが雪を蹴散らして疾走している。なんとも危ない状況。バックミラーを見ながら後続車がやってくると路肩に逃げ、車の流れが途切れたところで本線を走り出すという繰り返し…。
こうしてかろうじて第4湯目のみかた温泉の日帰り湯「きららの湯」にたどり着いた。
「きららの湯」では大浴場と露天風呂の湯につかり生き返ったが、湯から上がると、まったく身動きがとれなくなってしまう。国道27号をこれ以上走るのは、もう無理だ。
「雪の中を走る」のと、「雪が降っている中を走る」のでは、全然違う。
自分自身がやられるのはまだしも、自分が原因で事故がおきることだけは絶対に避けなくてはならない。
おまけにここでも、まだ送信できない原稿を送ろうとしたのだが、携帯に接続したパソコンには「エラー表示」が出るばかり…。ぼくの気持ちはよけいに落ち込んだ。
「果報は寝て待て」ではないが、こういうときは寝るに限る。休憩室で「5分寝」をしたおかげでひらめいた。
三方から小浜までは国道27号ではなくって、海沿いの国道162号を行こうと思いついたのだ。路面の雪ははるかに多くなるだろうが、そのかわり交通量はぐっと減るはずだ。大雪との悪戦苦闘の連続になるだろうが、すくなくともバイクのペースで走れる。つまり、ぼく自身は転倒して痛い目にあっても、ほかの車に迷惑をかけることはない。そう決めると、気持ちがスーッと楽になった。
国道162号の雪との大格闘がはじまった。雪が深くなると、足をつきながら走った。
大きな難所にぶち当たった。最初に越える世久見峠だ。峠を貫くトンネルの見える地点まではなんとか登れたが、あと50メートルほどの地点でスタック。リアのタイヤは空転するばかり。まったく前進できなくなった。スズキDJEBEL250XCを降りて押し上げようとするのだが、アイスバーンの上に雪が積もっているので、ツルツル滑って力が入らない。
「う〜ん、ここまでか…と、一度は諦めた。
だが、そのあと、「よし、もう一度、チャレンジしよう!」という気になった。
ギアを1速か2速に入れ、渾身の力を込め、半クラッチを使いながらすこしづつ押し上げていく。氷点下の気温にもかかわらず、噴き出す汗でウエアはグショグショビショビショ状態。ヒーヒーハーハー、肩で大きく息をする。心臓が口から飛び出しそうになるほどの苦しさ。そしてついに50メートルの坂を登りきり、トンネルに入った。
峠のトンネルを抜け出ると、今度は恐怖の下り。ツーーーーーッと滑ってしまうので、路肩の雪の中に前輪を突っ込むような形でそろりそろりと下っていく。これでもう、後戻りはできなくなった。なにがなんでも国道162号で小浜まで行くしかないのだ。
ぼくは一発勝負の賭けに勝った。その先の登り下りもきついものだったが、小浜に近づくにつれて雪は小降りになり、路面の雪も少なくなっていった。そして17時40分、小浜に到着。小浜駅前でジェベルを停め、カンコーヒーで乾杯。
三方の「きららの湯」から小浜駅前までは28キロ。そのわずか28キロに2時間以上もかかった。
小浜からはまた国道27号を行く。雪はチラチラ舞う程度。路面にもほとんど雪はない。三方あたりの大雪の国道27号はまるで幻でも見たかのようだった。
第5湯目は大飯温泉「あみーシャン大飯」。4階の展望大浴場の湯につかる。若干の色つき湯。ミネラル分の濃い味がする。湯から上がると3階の休憩室で小休止。
大飯温泉「あみーシャン大飯」を出発。国道27号で福井・京都境の吉坂峠を越える。峠を貫くトンネルを抜け、北陸から関西に入った。それにともなって『ツーリングマップル』の「中部北陸編」から「関西編」へと地図を変える。
関西圏に入ると雪は止み、積雪量もガクッと減った。
舞鶴からは国道175号→国道178号で丹後半島に向かっていく。
第6湯目はふじつ温泉「ふじつ温泉」。大浴場と露天風呂に入る。やわらかな湯の感触。湯から上がるとここで夕食。「鉄火丼」を食べた。
今晩の宿は丹後半島の付け根にある岩滝温泉「ホテル喜楽家」。到着は22時15分。さっそく第7湯目の「宿湯」に入った。雪見の露天風呂。空を見上げると、月が煌々と輝いている。
「明日こそはいい天気になりますように!」
湯から上がると、大仕事が待っている。原稿の送信だ。昭文社の桑原さんと携帯でやりとりしながら、いままでとは違う方法の裏技で原稿を送信する。さすが桑原さん。ついに送信完了。時間は23時45分。
「日付が変わる前に送れてよかったね」の桑原さんの言葉がうれしかった。
朝食 | 越前玉川温泉「玉川ビューホテル」 ご飯、味噌汁、焼き魚、湯豆腐、イカ刺し、玉子焼き、塩辛、のりの佃煮 |
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8時30分 | 越前玉川温泉「玉川ビューホテル」を出発 |
アクティブハウス越前温泉「漁火」(入れず) | |
654湯目 | 越前温泉「日本海」(500円) |
655湯目 | 河野シーサイド温泉「ゆうばえ」(500円) |
656湯目 | 敦賀きらめき温泉「リラ・ポート」(1000円) |
昼食 | 「リラ・ポート」 「日替わり定食」(1000円) |
関峠 峠越え | |
657湯目 | みかた温泉「きららの湯」(600円) |
世久見峠 峠越え | |
658湯目 | 大飯温泉「あみーシャン大飯」(300円) |
吉坂峠 峠越え | |
京都府に入る | |
659湯目 | ふじつ温泉「ふじつ温泉」(600円) |
夕食 | 「ふじつ温泉」 「鉄火丼」(1300円) |
念仏峠 峠越え | |
22時15分 | 岩滝温泉「喜楽家」(1泊朝食8000円) |
660湯目 | 岩滝温泉「喜楽家」 |
本日の走行距離数 192キロ | |
本日の温泉入浴数 7湯 |
越前玉川温泉「玉川ビューホテル」の朝食 | 「玉川ビューホテル」の朝湯に入る | 「玉川ビューホテル」を出発 |
越前玉川漁港 | 冬の日本海を行く | アクティブハウス越前温泉「漁火」には入れず |
越前温泉「日本海」 | 「日本海」から見る日本海 | 「日本海」の露天風呂 |
河野シーサイド温泉「ゆうばえ」 | 河野海岸有料道路を行く | 敦賀の雪景色 |
敦賀きらめき温泉「リラ・ポート」に到着 | 「リラ・ポート」の「日替わり定食」 | 「リラ・ポート」の雪景色 |
雪の敦賀を出発 | 国道27号は大雪 | かろうじて、みかた温泉「きららの湯」に到着 |
大雪の三方を出発 | 三方からは国道162号を行く | 大雪の世久見峠越え |
さらに雪の峠越えがつづく | ついにJR小浜駅前に到着 | 大飯温泉「あみーシャン大飯」 |
「ふじつ温泉」の「鉄火丼」 | 岩滝温泉「喜楽家」の湯につかる |