カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

北海道のラーメン

投稿日:2009年11月16日

函館、釧路、旭川、そして札幌ラーメン

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函館ラーメン


 五稜郭から函館駅前に戻ると、再度朝市を歩き、「どんぶり横丁」のラーメン専門店「しお家」で「塩ラーメン」を食べた。店の主人は「函館ラーメンは何たって塩ラーメンでしょ!」といっていた。それで店名が「しお家」なのか。店の主人が自慢するだけあって、ほどよい塩加減のスープは絶品。それと余談になるが、ここでは塩ラーメン&ライスを食べたのだが、ライスがうまかった。北海道というと、ご飯がまずい(北海道のみなさん、失礼!)というイメージがあるが、それが今回、ここのみならず、おいしいご飯をあちこちで食べた。新米が出回る時期という季節的な要因があったのかもしれない。
 ところでラーメンが北海道遺産になるところが、いかにも北海道らしい。
「札幌ラーメン」は別格として、「函館ラーメン」、「釧路ラーメン」、「旭川ラーメン」がその御三家になっている。
 さ、ラーメンの食べ歩きだ。

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釧路ラーメン


 釧路では釧路駅前に到着すると、和商市場に直行。まずは名物海鮮丼の「勝手丼」を食べ、そのあと和商市場内の食堂「和幸」で「カニ足ラーメン」を食べた。名前に偽り無し。カニ足がゴソッと入っていた。コーンもたっぷり。さすが和商市場。

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旭川ラーメン


 旭川では「旭川ラーメン」を食べ歩いているカブタンに案内してもらい、「蜂屋」で食べた。豚骨と魚のダブル味スープ。縮れ麺。「麺の加水率を少なくして、麺とスープがすぐからむようにしてあるのが、旭川ラーメンの特徴ね」とカブタン先生にはラーメンをすすりながら教えてもらった。
 このあとカブタン夫妻と旭川の繁華街にある「梁山泊」という店で鹿肉の燻製、アイヌネギのおひたし、熊肉のステーキ、若鶏の新子焼、チャップと旭川ならではの料理の数々を肴におおいに飲んだが、カブタン先生には最後、ピシッといわれた。
「ラーメンはほんとうは最後に食べるものなのよ」

ご当地ラーメンの先駆けが札幌ラーメンだ

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札幌ラーメン


「札幌ラーメン」は札幌一の繁華街、すすきのにある「ラーメン横丁」で食べた。一番手前の店、「華龍」で「コーンバターラーメン」を食べた。味噌ラーメンのコーンとバターの取り合わせが、いかにも「札幌ラーメン」らしかった。

「ラーメン横丁」には何年か前にバイク誌の取材で来たことがある。その時の記事を紹介しよう。

 スズキDR?Z400Sで道央道を疾走し、札幌に到着すると、札幌一番の繁華街「すすきの」に直行。といっても目指すのはネオンがまぶしい歓楽街の方ではなく、札幌ラーメンの本場の「ラーメン横丁」だ。
 人がやっとすれ違いできるほどの路地の両側には、ずらりと「札幌ラーメン」の店が並んでいる。その数は17軒。
 で、どの店に入ったかというと、「ラーメン横丁」でも一番歴史の古いといわれている「正楼閣」。
「正楼閣」では、店長の前田義幸さんおすすめの「バターコーンラーメン」を食べた。
 麺の上にはバターとコーンがのっている。バター、コーンともにボリューム満点。このボリューム感こそ北海道。そのほかの具といえば、チャーシュとモヤシ、ネギ、メンマ、それとワカメ。北海道産の上質なバターをスープに溶かし込んでいくと、味にグッと深みが出てくる。
「これが札幌ラーメンか!」
 と思うような味の深み。
 前田さんは徹底的に北海道産にこだわっているが、北海道産コーンのほのかな甘味が口に残り、空知の栗山産ネギが味に強いインパクトを与えている。
 バターとコーンがこれほどラーメンに合うとは…。
 白味噌をベースにしたスープはコトコト煮つづけた豚骨でダシをとっているが、「豚骨ラーメン」のように白くならないように、煮過ぎないようにとすごく気を使うとのこと。この味噌味こそ「札幌ラーメン」の「札幌ラーメン」たる所以といっていい。
 麺は中太、硬めの縮れ麺でしっとりしている。黄色味が濃い卵麺。麺のうまさが「札幌ラーメン」の大きな魅力にもなっている。
「札幌ラーメンは麺自体の味を楽しんでもらうもの。旭川ラーメンは麺にスープの味をしみ込ませ、それを楽しんでもらうもの」
 という前田さんの言葉が印象深い。

「札幌ラーメン」は頭に地域名のついた「ご当地ラーメン」のまさに先駆け。
 と同時に、日本中で最もよく知られつづけているご当地ラーメンだ。
「札幌ラーメン」の出現は終戦後のことで、中国から引き揚げてきた人たちが、「すすきの」あたりに屋台を出したのがはじまりとされている。
「正楼閣」の前田義幸さんの場合も2代目で、父親が30年前にラーメン屋をはじめたという。
「札幌ラーメン」の一番の特徴の味噌味は、店でラーメンも出す、豚汁も出すということで、両者が一体化したのがはじまりだという。
「札幌ラーメン」が全国的に受けたのは、この味噌味によるところがきわめて大きい。
 それともうひとつは、あの脂っこさ。
 戦前までの日本人にとってのラーメンは、淡白な、さっぱり味の「支那そば」が主流。家庭でも製麺屋で麺を買い、支那そばをつくっていた。それがラードをたっぷり使って炒めたモヤシをたくさん入れたり、具を多様化させたり、より脂ぎったスープにすることでラーメンは家庭料理を離れ、一気に外食料理の花形になっていった。
 その意味で「札幌ラーメン」は、日本の食文化をガラリと変えたといっても過言ではないのである。

『ツーリングGO!GO!』2004年7月号より

「北海道遺産めぐり」の「北海道一周」では、「札幌ラーメン」&「御三家ラーメン」のほかにも、北海道の各地で食べた。苫小牧の「ラーメン&寿司セット」はユニーク。石北峠のラーメンは山菜入り。宗谷岬のラーメンはモズク入り。稚内の「大漁ラーメン」は北海の海鮮ラーメン。熊石のラーメンは町中の「なべさん食堂」で食べた「塩ラーメン」だが、なつかしの心にしみる味だった。

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苫小牧の寿司セット
石北峠の山菜ラーメン


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宗谷岬のモズクラーメン
稚内の大漁ラーメン


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熊石の塩ラーメン


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