カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

北限のブナ林

投稿日:2010年11月27日

世界遺産の森にも匹敵する紅葉

歌才ブナ林


 ニセコから国道5号で目名峠を越え、黒松内町(くろまつないちょう)に入る。このあたりが日本のブナの北限。日本の自然を日本らしくしているもののひとつにブナの木があるが、それでいうと、目名峠よりも北は日本離れした自然ということになる。
 北海道遺産になっている北限のブナ林の「歌才(うたさい)ブナ林」を見にいく。
 黒松内町の「ブナセンター」でスズキDR-Z400Sを停め、まずは館内を見学。そこで案内図をもらい、歌才森林公園から歌才ブナ林へと歩いていく。その途中に展望台があるが、足下に広がる黒松内の市街地を一望した。
 展望台から渓流へと下り、橋を渡ると歌才ブナ林の入口。ブナは紅葉の盛りで、まるで八甲田か白神山地の紅葉を見ているかのようだった。
 ここは北限のブナ林を代表する森。まさにブナの原生林で樹高30メートル、幹の太さが1メートルという大木もある。かつて伐採の危機にも見舞われたが、町民の手で護られたとのことで、今では黒松内町のシンボルになっている。
 黒松内町にはもう1ヵ所、「添別(そいべつ)ブナ林」がある。こちらは80年ほど前に一度伐採され、その後に再生した2次林だという。
「歌才ブナ林」を歩いたあとは、黒松内温泉「ぶなの森」の湯に入る。北限のブナ林の町は温泉施設名も「ぶなの森」。町民のブナ林に寄せる想いが伝わってくるようだ。

国道5号の目名峠
黒松内町の「ブナセンター」


「ブナセンター」前の北海道遺産碑
展望台から見下ろす黒松内の町並み


「歌才ブナ林」の入口
黒松内温泉「ぶなの森」


渡島半島を分ける蕨岱峠

「歌才ブナ林」と「ぶなの森」に大満足したあと、今晩の宿、長万部(おしゃまんべ)温泉の「丸金旅館」に向かっていく。道道9号から国道5号にぶつかるあたりが黒松内町と長万部町の境の峠。名無しの峠だが、すぐ近くに函館本線の蕨岱駅があるので、「峠のカソリ」はこの名無し峠を「蕨岱(わらびたい)峠」と呼んでいる。
 じつはこの蕨岱峠は、きわめて重要なのである。
 この峠を通る構造線(大断層線)は太平洋(内浦湾)側の長万部から日本海(寿都湾)側の寿都にのびているが、この線でもって北海道の本体と渡島(おしま)半島がつながっている。この先、何千年か何万年か知らないが、北海道本体と渡島半島が別々になるときは、きっとこの線で分かれるはずだ。そのときは長万部海峡ができ、この蕨岱峠は長万部海峡に突き出た蕨岱岬になるかもしれない。
 悠久の時間を玩具にして、そんなことを考えながら峠を越えるのは、すごく楽しいことだった。
 長万部温泉に到着したのは19時過ぎ。
「丸金旅館」のお女将さんには遅い到着を詫び、すぐさま湯に入る。湯から上がると夕食をいただく。うれしくなるような夕食で、それにはサケ鍋の石狩鍋がついていた。サケは北海道遺産。あらためて北海道遺産を考えながら石狩鍋を食べるのだった。

長万部温泉「丸金旅館」
「丸金旅館」の夕食


刺身の盛合わせ
石狩鍋


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