カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

第13回 川原樋林道

投稿日:2010年12月29日

2010年 林道日本一周・西日本編

記念すべき1本目の林道に突入……

 大塔温泉「夢の湯」の先で国道168号を右折し、県道734号に入っていく。川原樋川の渓流沿いの道。狭路の県道を左折し、川原樋林道へ。記念すべき「林道日本一周2010」の第1本目の林道だ。
 赤錆の浮いた橋を渡ると、川原樋川のダートに突入。スズキDR-Z400Sに、
「さー、行くぞ!」
 とひと声かけ、意気揚々とした気分で川原樋林道を走りはじめた。
 川原樋林道は渓谷沿いの林道で、川原樋川の谷は目がくらむほど深い。紀伊半島中央部の山の険しさ、谷の深さを見せつけられる。
「これぞ、カソリの世界!」
 と、高揚した気分でDRを走らせたが、な、なんと1・7キロ地点で大崩落…。崩落現場を乗り越えていくのは不可能で、そこで折り返さなくてはならなかった。
 なお、川原樋林道は「林道日本一周1999」でも走っているが、そのときのダート距離は6・9キロ。今回、反対側からも入ってみたが、当時とほとんど変っていない。
 ガックリ気分で県道734号に戻り、つづいて第2本目の平川釜落林道に入っていく。ところがいつまでたっても舗装路がつづき、とうとう峠に到達。そこには林道の「開通記念碑」が建っている。峠から平川への下りも舗装路がつづく。この峠越え林道の平川釜落林道は全線が舗装化されていた。2003年の「紀伊半島林道走破行」のときに平川釜落林道を走ったが、そのときは5・7キロのダートだった。
 紀伊半島は日本でも有数のダート天国だったが、近年急速に舗装化され、龍神本宮林道や奥千丈林道、南谷城ヶ森林道といったかつてのロングダートは今では舗装林道に変っている。我らオフロードライダーとしては、舗装林道ではどうしても気分が盛上がらないのだ。完全に出鼻をくじかれた格好の紀伊半島だ。
 野迫川村(のせがわむら)役場近くに出ると山上に登り、荒神社へ。
 ここは標高1200メートルの高地で、5月の中旬とはいえ、ガタガタ震えてしまうほど寒い。門前の茶店に飛び込むとオバチャンは、
「バイクじゃ、大変だねぇ」
 といってコーヒーを入れてくれた。
 ストーブにかじりつくようにしてコーヒーを飲むと、オバチャンのやさしさもあって急に明るい気持ちになる。
 コーヒー代を払おうとしたら、
「いいのよ、サービスだから」
 といって受け取らない。
 よーく、お礼をいって店を出、ハーハーいって石段を登り、荒神社(こうじんじゃ)に参拝。そのあと近くの山上の温泉、雲之上温泉「開雲荘」(入浴料600円)の湯に入った。湯気がモウモウとたちこめる大浴場の湯につかっていると、心身ともにすっかり癒された。
 つづいて野迫川温泉(入浴料800円)の湯に入り、湯上りに「あまご定食」の昼食を食べる頃には、いやな気分は完全に吹っ飛んだ。これぞ温泉効果!
 今回の「林道日本一周」では、林道に入る前、林道を走り終えた後に、できるだけ多くの温泉に入ろうと思っている。林道と温泉の相性はいいのだ。

フォトアルバム

紀伊半島縦貫の国道168号
川原樋川の渓谷


川原樋林道へ
川原樋林道のダートに突入!




川原樋林道の崩落現場

平川釜落林道に入る
平川釜落林道の峠


平川釜落林道の開通記念碑
紀伊半島の山々。ここは「雲海景勝地」


荒神社の参道
荒神社を参拝


雲之上温泉「開雲荘」
「開雲荘」の大浴場


野迫川村大股
野迫川温泉「ホテルのせ川」


野迫川温泉の大浴場
野迫川温泉の「あまご定食」


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