カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

第63回 一畑薬師

投稿日:2011年3月4日

2010年 林道日本一周・西日本編

「合掌低頭」これが旅の基本だと思う

 島根半島西北端の日御碕を出発。出雲大社前に戻り、そこからは国道431号を行く。左手には島根半島の山並みがつづき、右手には出雲平野が広がっている。好対照の風景を眺めながらスズキDR-Z400Sを走らせる。
 一畑電車の線路が見えてくる。この一畑電車は松江(松江しんじ湖温泉駅)と出雲大社、松江と出雲市駅を結んでいる。JR山陰本線は宍道湖南側の国道9号に沿って走っているが、一畑電車は宍道湖北側の国道431号に沿って走っている。
 やがてその宍道湖が見えてくる。対岸には出雲の山々。一畑電車の一畑口駅近くで国道431号を左折し、県道23号を北へ。峠を越えたあたりの山中にある一畑薬師に参拝。ここは「目の薬師」で知られているが、日本各地に50余の分院を持つ一畑薬師教団の本部にもなっている。一畑電車ももともとは一畑薬師への参拝ためにつくられた鉄道なのだろう。
 仁王門をくぐり本堂を参拝したが、ここに掲げられている「合掌低頭」は心にしみる。いつも感謝して頭は低くしなさいという人生訓だが、ぼくはこれが旅の基本だと思っている。
 旅はするものではない。
 旅はさせてもらうものだ。
 行った先々では地元の人たちに出会い、言葉をかわし、親切にされることがよくある。きれいな風景に出会ったり、神々しい朝日やすばらしい夕日を見ることも多い。
 そのようなときは、「ありがたい!」と思う。
 1日3度の食事のときも、温泉の湯につかっているときなども同様で、
「ありがたい!」
 と心の中で手を合わせ(合掌)、感謝する気持ちが大事だと思っている。
 旅の毎日はいろいろな人たちとの出会いの連続だ。
 そのときの基本姿勢は頭を低く(低頭)、それもできるだけ低くするに限る。頭を低くして人に接すると、思いもかけない好意を受けたり、知らなかったことを教えてもらったりすることがたびたびだ。
 一畑薬師の参拝を終えると、国道431号に戻る。
 宍道湖の北岸を走り、松江の中心街に入っていく。
 亀田山の松江城へ。
 松江城は慶長5年(1600年)に堀尾氏によって築かれた。その後、京極氏、松平氏とつづき明治維新を迎えた。堀尾氏は24万石、京極氏は26万4000石、松平氏は18万6000石の石高だ。
 松江城は現存する日本の「12天守」のひとつ。国の重要文化財に指定されている天守閣に登り、松江の町並みを見下ろした。
 松江からは国道432号を南下し、旧八雲村(現松江市)の熊野大社に行く。ここは出雲大社と並ぶ出雲の一の宮。古代出雲では熊野大社の方が出雲大社よりも格が上だったという。中世以降、その立場が逆転した。
 熊野大社の正面には御神体になっている熊野山がそびえ、そこには元宮がまつられている。
 熊野大社の参拝を終えると、熊野大社入口にある八雲温泉「熊野館」(入浴料300円)の大浴場と露天風呂に入った。
「熊野」といえば、紀伊半島の熊野がよく知られている。
 日本各地に熊野町があるが、それらは熊野神社がまつられているところ。ところがこの出雲の熊野はそれらの熊野とは違い、相当、歴史が古い。おそらく紀伊の熊野以前であろう。「紀伊の熊野」の元は「出雲の熊野」といっていいのではないかと、八雲温泉「熊野館」の湯につかりながら考えた。
 八雲温泉「熊野館」の湯から上がると、松江に戻った。

フォトアルバム

出雲大社
宍道湖


一畑薬師の案内図
一畑薬師の門前


一畑薬師の仁王門
一畑薬師の本堂


一畑薬師の本堂内
一畑薬師境内の十六羅漢像


松江城
松江城の堀川めぐりの舟


八雲温泉「熊野館」
八雲温泉「熊野館」の露天風呂


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