第62回 出雲大社
投稿日:2011年3月3日
2010年 林道日本一周・西日本編
半島を引き寄せた「国引き伝説」の地で一の宮を考える
早朝の出雲市駅前を出発。さー、島根半島めぐりの開始だ。
スズキDR-Z400Sを走らせ、まずは出雲大社へ。大鳥居をくぐり、ほとんど人影のない早朝の参道を歩き、豪壮な造りの拝殿前で手を合わせる。その奥の大社造の本殿は国宝だ。
出雲大社といえば縁結びの神でよく知られているが、ここは出雲国の一の宮。
旧暦の10月を神無月(かんなづき)というが、出雲では神在月(かみありづき)という。全国の神々がすべて出雲に集まり、会議を開くといういい伝えからだ。
出雲大社の主神は大国主(おおくにぬし)命。大国主命が天孫に国を譲ったのを喜び、天照大神は広大な天日隅宮(あめのひすみのみや)を建てて贈った。それが出雲大社の起源。平安時代の『延喜式』には「杵築大社」の名前で出ているが、それが明治以降、「出雲大社」として全国的に知られるようになった。
なお、丹波国の一の宮、出雲大神宮(亀岡市)が出雲大社の元になっている。このように一の宮で日本全国を見ていくのはおもしろい。思わぬところでつながっていたりする。
出雲大社の参拝を終えると、広々とした砂浜、稲佐の浜に出、そこから海沿いの道で日本の名岬のひとつ、日御碕に向かってDRを走らせる。
日御碕神社を参拝したあと、日御碕灯台に登る。全部で162段の階段。息が切れてヒーヒーハーハーいってしまう。この日御碕灯台は43メートルあって、日本一の高さを誇っている。
日御碕灯台の上からの絶景を眺めたあと、灯台入口の店で「海鮮丼」を食べた。ヒラマサの海鮮丼。とれたてのヒラマサだとのことで、プリンプリンした食感がたまらない。
ところで島根半島というのは、地図を見ると一目でわかることだが、じつに奇妙な形をしている。どこかから無理矢理に引っ張られてきて、強力な接着剤か何かで、宍道湖から中海へとつづく湖岸の北側にくっつけられたような地形だ。本来ならばその南側、米子→安来→松江→出雲市とつづく国道9号の通っているあたりが、日本海の海岸線になっていいるのが自然な形である。
この不自然な形をした島根半島こそ、出雲神話のふるさとなのだ。
島根半島西端の日御碕は出雲神話の「国引き伝説」の地で、朝鮮半島から引っ張ってこられたことになっている。三瓶山(1126m)を杭にし、綱を引っ掛けて引っ張ったという。その綱の跡が、さきほどの「稲佐の浜」からその南の「園の長浜」へとつづく長い海岸線で、途切れることのない砂浜になっている。
島根半島東端の地蔵崎も出雲神話の「国引き伝説」の地。ここは能登半島から引っ張ってこられたことになっている。大山(1729m)を杭にし、綱を引っ掛けて引っ張った。その綱の跡が境港から皆生(かいけ)温泉へとつづく「弓ヶ浜」なのだという。
さらに島根半島は隠岐からもロシアの沿海州あたりからも引っ張ってこられたことになっているが、地図を見れば見るほど、
「うーん、なるほど!」
と、うなずけるのだ。