カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

第81回 王城枝垂栗林道

投稿日:2011年4月1日

2010年 林道日本一周・西日本編

旧中山道から、日本のへそを抜ける

 塩尻駅前に戻ると、まずは国道20号で塩尻峠へ。
 標高999メートルの塩尻峠は日本有数の絶景峠。中山道の峠であり、中央分水嶺の峠にもなっている。峠からは足下に広がる岡谷から下諏訪、上諏訪にかけての町並みと、諏訪湖を一望する。
 塩尻峠から塩尻に戻ると、次に国道153号の善知鳥(うとう)峠を越える。
 標高889メートルの善知鳥峠は三州街道の峠で、塩尻峠と同じように中央分水嶺の峠になっている。信州を二分する中央分水嶺の峠の中でも善知鳥峠は一番、標高が低い。それだけ越えやすいということだ。
 善知鳥峠を下ったところが小野。ここには信濃国の二の宮、小野神社と矢彦神社がある。この2社は同じ敷地内にあるが、小野神社は塩尻市、矢彦神社は辰野町になる。峠が境になるケースが多いが、善知鳥峠の場合は峠を下ったところまでが塩尻市で、神社の境内を塩尻・辰野の市町境の境界線が通っている。
 ここまで旧国の一の宮の自然の豊かさをことあるごとにいってきたが、二の宮も負けてはいない。
 小野神社と矢彦神社の境内はうっそうとおい茂る樹木で覆われている。スギやヒノキなどの針葉樹とケヤキやミズナラなどの広葉樹の混ざった混交林。まさに自然の宝庫で、それら樹木と灌木類、草本類をあわせると全部で150種にもなるという。信州、とくに南信を代表する自然林ということで、長野県の天然記念物に指定されている。
 小野から小野峠に向かう。
 峠近くは短いダート。峠を越えると岡谷だ。
 中山道は下諏訪宿から塩尻峠を越え、塩尻宿から洗馬宿、本山宿と通って贄川宿へ。そこから木曽路に入っていった。ところが江戸初期の中山道は下諏訪宿から岡谷を通り、小野峠を越えて小野に下り、小野からは牛首峠を越えて贄川宿に通じていた。
 そのような旧中山道の歴史があるので、小野峠には「旧中山道 小野峠」の石碑が建っている。それには「右をの 左みさは」とあるが「をの」は小野のことで、「みさは」は岡谷の三沢のことだ。
 小野峠の近くには「しだれ栗森林公園」がある。その脇から王城枝垂栗林道に入っていく。ダートに突入すると、スズキDR-Z400Sは心なしかうれしそうなエンジン音を響かせる。DRにはやっぱりダートが一番良く似合う。
 ゆるやかにつづく山並みの稜線近くを走っていくが、ダートに突入して6・6キロ地点に「日本のヘソ」がある。そこには「日本中心の標」が建っている。北緯36度00分47秒、東経137度59分36秒、標高1277メートルの地点。広場の展望台に登ると、右手に中央アルプス、左手に伊那山地、さらには南アルプスの山並みを一望する。
「日本のヘソ」を後にし、王城山への分岐を過ぎると舗装路になり、JR辰野駅を真下に見下ろす高台に出る。ダート8・2キロの王城枝垂栗林道だ。
 辰野からは天竜川沿いに走り、岡谷市に入る。さきほどの小野峠の石碑にあった三沢を通り、岡谷の中心街に入っていく。岡谷からは国道20号で下諏訪へ。諏訪大社下社秋宮の境内にある下諏訪温泉「山王閣」に飛び込みで行くと、うまい具合に泊まれた。何ともありがたいことに夕食も用意してくれた。
 すぐさま食堂で夕食をいただき、そのあとで大浴場の湯につかる。広々とした湯船に身をひたし、諏訪盆地の夜景を見下ろした。「山王閣」の湯は絶景湯だ。

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塩尻峠→善知鳥峠→小野峠→王城枝垂栗林道→辰野→下諏訪

塩尻駅前を出発
塩尻峠を越える国道20号


塩尻峠からの眺め
国道153号の善知鳥峠


善知鳥峠の石碑
小野・矢彦神社を参拝


小野峠への短いダート
小野峠の石碑


王城枝垂栗林道のダートに突入
「日本中心の標」


辰野駅と辰野の町並みを見下ろす
下諏訪温泉「山王閣」の夕食


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