環日本海ツーリング[132]番外編
投稿日:2012年7月26日
韓国往復縦断2005(1)
解禁を記念して「韓国往復縦断」が企画された
2005年5月1日、韓国へのバイク持込が解禁になった。バイクで韓国に行けるようになったのだ。これはすごいことだ。東京の旅行社「道祖神」はそれを記念し、「賀曽利隆と走る!」シリーズの第11弾目として「韓国往復縦断」を企画した。
2005年10月8日、カソリは大きな期待を抱いて自宅前から愛車で走り出し、「韓国往復縦断」へと出発した。愛車はスズキDR-Z400S。「ユーラシア横断」や「サハラ砂漠縦断」を走ったDRだ。
「さー、釜山へ! 行くゾ〜!!」
旅立ちで、これほど高揚した気分になることもそうはない。
胸がいっぱいに膨れ上がり、秦野中井ICで東名に入っても、「釜山へ、釜山へ!」と何度も「釜山」を口にした。
まわりを走っている車、1台1台に、
「ぼくはこれから、釜山まで行くんですよー!」
と、いいたくなるような気分だった。
東名→名神と走りつないで大阪へ。
大阪では鶴橋のコリアンタウンの食堂で冷麺を食べたが、2000年の「韓国一周」を思い出し、韓国ツーリングへの期待がいやがうえにも高まった。韓国では今回も、徹底的に韓国食を食べ歩くつもりだ。
大阪のコリアンタウンの冷麺に大満足し、大阪南港19時10分発の名門大洋フェリー「ふくおか2」で新門司港へ。
翌朝の8時には新門司港に着いた。
まずは九州最北端の部崎に立ち、午前中は北九州をまわった。そして関門海峡を渡り、昼過ぎに関釜フェリーの出る下関港国際ターミナルに到着した。
2005年5月1日に韓国へのバイクの持ち込みが解禁されたといったが、これは歴史的な出来事といっていい。韓国は「近くて遠い国」といわれてきたが、我らツーリングライダーにとっては「近くてとてつもなく遠い国」だった。韓国にバイクを持ち込むのは至難の技だったからだ
それがこの歴史的な解禁によってパスポートと国際免許証、バイクの国際登録証を持てば、日本のナンバープレートのままで、下関港から関釜フェリーに乗り、バイクともども韓国の釜山港に渡れるようになったのだ。
新たな海外ツーリングの幕開け。新たな時代の到来だ。
「ちょっとそこまで」という気軽さで海外ツーリングができるようになった。韓国がついに「近くて近い国」になったのだ。
集合場所の下関港国際ターミナルには、参加者のみなさんが日本各地から次々にやって来た。最年長は73歳の松浦善三さん。山形県東根市からGL1500のサイドカーで1400キロ走っての到着だ。
「一生に一度は自分の家から海外にバイクで行くのが私の夢だったんですよ」
と、松浦さんは熱く語った。
マジェスティーの島田利嗣さんは62歳。一緒に「南部アフリカ」、「サハラ縦断」を走った仲間。東京から日本海ルートで、2泊3日のツーリングを楽しみながら下関までやってきた。
旧車バハの新保一晃さんとは「ユーラシア横断」、「アラスカ縦断」、「南部アフリカ」、「サハラ縦断」を一緒に走っている。通称「新ちゃん」。バイク大好き人間だ。
XRバハの伴在哲さんとは「サハリン縦断」、「ユーラシア横断」、「南部アフリカ」を一緒に走った。通称「伴ちゃん」。やさしい性格!
セローの椋原眞理さんは母親だとは思えないほど若く見える。
児玉真喜子さんはタンデムでの参加。
こうして全部で11台のバイクと「道祖神」の菊地優さん、女性通訳の国定富さんの総勢13名で「韓国往復縦断」を走るのだ。
下関港での出国手続きはスムーズに終わった。関釜フェリーの職員が我々につきっきりで案内してくれたおかげだ。
イミグレーションではパスポートに「KANMON(関門)」の出国印が押され、カスタム(税関)ではバイクの一時輸出入申告書に下関税関の輸出許可印が押された。
いよいよ関釜フェリーの「はまゆう」(1万6187トン)に乗船。「はまゆう」は定刻の19時に下関港のフェリー埠頭を離れていく。さっそく自販機の500?の缶ビールで参加者のみなさんと乾杯。下関港を出ると缶ビールは無税になるので1本220円。そのあと船内のレストランでみなさんと一緒に夕食。ぼくは「豚カルビー定食」(1000円)を食べた。
「はまゆう」は釜山港を目指し、玄界灘を北西へと進む。冷たい風に吹かれながら甲板に立っていると、暗い波間に漁火が点々と見えた。「おー、何だ何だ、あれは」と声が出るくらいの異様な明るさ。波の荒い玄界灘なので船はけっこう揺れた。
まったく船酔いしない「船旅大好き」のカソリ、その揺れはなんとも心地のよいもので、船室に戻るとグッスリ眠れた。
船の揺れがおさまったころ目がさめた。時間は午前2時。まばゆいばかりの釜山の町明かりが見えていた。「はまゆう」は釜山港の港外に停船。すぐ近くには五六島の灯台の灯が見える。関釜フェリーの下関から釜山までの正味の航行時間は8時間ほどでしかない。