カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

V-Strom1000で行く日本[26]

投稿日:2015年12月4日

山口の夜は福を呼ぶ魚で

2015年9月18日(東京〜鹿児島)

 広島からは国道2号の西広島バイパスで廿日市へ。旧道と合流すると、瀬戸内海を左手に見ながらV−ストローム1000を走らせる。宮島が手の届きそうなところにある。大竹を過ぎると山口県に入る。岩国から国道2号は内陸ルートになる。瀬戸内海沿いの海岸ルートは国道188号だ。廿木峠を越え、下松で国道188号に合流する。徳山では周南の工業地帯を見下ろす。防府では山陽道沿いの快走路を走る。小郡で国道9号に合流。下関までは国道2号と国道9号の重複区間。小郡を過ぎたところで夕日が山の端に落ちていった。

 下関市に入り、国道2号と国道9号の分岐点ではいったん国道2号を離れ、国道9号で下関駅まで行く。国道2号は関門トンネルで関門海峡を越え、門司港から国道3号になる。下関駅前に到着したのは20時30分。大阪から548キロだった。

 下関駅近くの「東横イン」に泊まると、さっそく夜の下関の町を歩く。駅周辺の海鮮料理店をのぞいていく。そのうちの一軒、「ふく料理」の暖簾を掲げた「つた本店」に入った。店の入口のボードに掛かれた「ふく定食3000円」に魅かれたからだ。これは安い。下関ではフグのことを福を呼ぶ魚という意味で「フク」といっている。

「つた本店」の「ふく定食」には「ふく刺し」と「こふく揚げ」が出た。

「ふく刺し」は三枚におろした身を薄く切り、菊の花びらを模したような盛りつけ方で、まさに「食の芸術品」。日本人の美意識、日本の食文化の真髄を見るような思いがする。日本の食は舌で味わうだけでなく、目で見て味わうものなのだ。

「ふく刺しはね、フクの身をいかに薄く切るかにかかっているのよ」と女将さんはいう。それを紅葉おろしと細かく刻んだワケギの入ったつけ汁(醤油にダイダイ酢を混ぜたもの)につけて食べる。箸をつけるのがもったいないくらいだが、ひときれつまんで、つけ汁につけ、口の中に入れてみた。光沢のあるフクの切り身は淡白な味だが、かみしめるとかすかな甘味が口の中に広がり、粘り気も出てくる。コリコリッとした歯ざわり、かみごたえが何ともいえない。

 下関ではこのフクの歯ごたえを「ひきがある」という。ひきのあるフクがうまいフク。トラフグ以外のフクには、この「ひき」がないのだという。このコリッ、コリコリッとしたフクの淡白な味わいの身は、血液の循環をよくするとのことで、食べているうちに体がホカホカしてくる(ような気がする)。ふく刺しには「皮」と「みかわ」が添えられている。みかわというのは文字通り、皮と身の間についている部分で、それをさっとゆでたもの。紅葉おろしとワケギの薬味をのせ、醤油をかけて食べる。「こふく揚げ」はフクの子供を揚げたもので、頭も骨もひれも食べられる。

 下関の「ふく料理」に大満足して「東横イン」に戻るのだった。

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▲国道2号の廿木峠

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▲国道2号の快走区間を行く

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▲国道2号から見る夕日

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▲下関の「東横イン」に到着

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▲下関の海鮮料理店をのぞいていく

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▲「ふく料理」の「つた本店」に入る

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▲「つた本店」の「ふく定食」

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▲「ふく刺」

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▲「こふく揚げ」

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▲「東横イン」の部屋から見る下関の夜景

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