カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

奥の細道紀行[27]

投稿日:2016年9月7日

絶賛の地「松島」

宮城県松島町/2009年

 塩釜から国道45号で松島へ。右手に松島湾と湾に浮かぶ無数の小島を見ながら走る。松島湾は東西14キロ、南北8キロだが、湾内には260余の島があるという。

 松島に到着すると、駐車場にスズキST250を停め、松島を歩いた。まずは雄島に渡る。芭蕉は「地続きて海に出でたる島」と書いているが、今は朱塗りの渡月橋を渡っていく。歩いて島を一周。徒歩約10分。岩をくり抜いた岩屋には石仏がまつられている。島の突端には「頼賢の碑」。平安時代末期、見仏上人はこの地に居を構え、12年間、島にこもった。見仏上人の再来といわれた頼賢は22年間、この小さな島を離れることなく、一心に経典をあげつづけたという。

 次に五大堂の島に行く。松島観光のシンボル的な存在で、大勢の観光客であふれかえっている。この島は五大堂があるだけの超小島。五大堂入口の茶屋で名物の「ずんだ餅」を食べた。

 さらに福浦島にも渡った。この島には弁財天がまつられている。

 これら3島をめぐったあと、三陸三十三観音第1番札所の円通寺と国宝の瑞巌寺を参拝する。瑞巌寺は松島人気も手伝って、押すな押すなの大盛況。大勢の参拝客で混みあっていた。松島見物を終えると、国道沿いの「二八屋食堂」で昼食。「カキの殻焼き定食」を食べた。さすが松島のカキ。殻焼きのカキは美味だった。

 松島は「奥の細道」のハイライトシーンといっていい。芭蕉は「扶桑第一の好風」とまでいって松島を絶賛し、『おくのほそ道』でも松島には多くの行数をとっている。

松島

 日すでに午に近し。船を借りて松島に渡る。その間二里余、雄島の磯に着く。そもそも、ことふりにたれど、松島は扶桑第一の好風にして、およそ洞庭・西湖を恥ぢず。東南より海を入れて、江の中三里、浙江の潮を湛ふ。島々の数を尽くして、そばたつものは天を指さし、伏すものは波にはらばう。あるは二重に重なり三重に畳みて、左に分かれ右に連なる。負へるあり、抱けるあり。児孫愛すがごとし。松の緑こまやかに、枝葉潮風に吹きたわめて、屈曲おのづから矯めたるがごとし。その気色よう然として、美人の顔を粧ふ。ちはやぶる神の昔、大山祇のなせるわざにや。造化の天工、いづれの人か筆をふるひ、詞を尽くさむ。
 雄島が磯は、地続きて海に出でたる島なり。雲居禅師の別室の跡、坐禅石などあり。はた、松の木陰に世をいとふ人もまれまれ見えはべりて、落穂、松笠などうち煙りたる草の庵、閑かに住みなし、いかなる人とは知られずながら、まづなつかしく立ち寄るほどに、月、海に映りて、昼の眺めまた改む。江上に帰りて宿を求むれば、窓を開き二階を作りて風雲の中に旅寝するこそ、あやしきまで妙なる心地はせらるれ。
  松島や鶴に身を借れほととぎす 曽良
予は口を閉じて眠らんとしていねられず。旧庵を別るる時、素堂、松島の誌あり。原安適、松が浦島の和歌を贈らる。袋を解きてこよいの友とす。かつ、杉風・濁子が発句あり。

瑞巌寺

 十一日、瑞巌寺に詣づ。当寺三十二世の昔、真壁の平四郎、出家して入唐、帰朝の後開山す。その後に雲居禅師の徳化によりて、七堂甍改まりて、金壁荘厳光かかやかし、仏土成就の大伽藍とはなれりける。かの見仏聖の寺はいづくにやと慕はる。

『おくのほそ道』

 塩釜から松島までの行程は、曽良の「随行日記」では次ぎのようになっている。

九日  快晴。辰ノ剋、塩竃明神ヲ拝。帰而出船。千賀浦、マガキ嶋・都嶋等所見テ、午ノ剋、松嶋ニ着船。茶ナド呑テ瑞岩寺詣、不残見物。開山、法身和尚。中興、雲居。法身ノ最明寺殿被宿岩屈有。無相禅屈ト額有。ソレヨリ雄嶋所ゝ見ル。御嶋、雲居ノ坐禅堂有。ソノ南ニ寧一山ノ碑之文有。北ニ庵有、道心者住ス。帰而後、八幡社・五太堂ヲ見。慈覚ノ作。松嶋ニ宿ス。久之助ト云。加衛門状添。

 芭蕉は塩釜から船で松島に渡っている。当時は海沿いの街道が発達してなかったので、松島には船で渡るのが一般的だったようだ。

 松島は「奥州の高野山」といわれたほどの霊地で、雄島は修行の島として知られていた。松島に行くのは聖地巡礼のようなものだった。

 芭蕉は瑞巌寺の総門近くにあった久之助の旅籠に泊まり、松島を見物したが、当時の松島も観光地としておおいに繁盛していた。

 ひとつ興味深いのは、芭蕉は9日に塩釜から船で松島に渡り、すぐに瑞巌寺を参拝しているが、『おくのほそ道』ではあえて日にちを変え、11日に行ったようにしていることだ。きっと瑞巌寺参拝を新たな旅立ちにしたかったのだろう。

芭蕉が絶賛した松島の島々を見る

▲芭蕉が絶賛した松島の島々を見る

松島の船溜まり

▲松島の船溜まり

松島の雄島に渡る

▲松島の雄島に渡る

瑞巌寺の参道

▲瑞巌寺の参道

瑞巌寺を参拝

▲瑞巌寺を参拝

松島の観光船

▲松島の観光船

松島で食べた「カキの殻焼き定食」

▲松島で食べた「カキの殻焼き定食」

Comments

Comments are closed.