奥の細道紀行［61］

投稿日：2016年11月21日

大きく寄り道、カソリ旅

新潟県・山形県／2009年

　芭蕉は村上に1日滞在し、新潟へと向かった。日本海沿いの羽州浜街道を南下し、塩谷宿で渡し船に乗って荒川を渡り、対岸の乙村の乙宝寺を参詣した。そのあと現在の県道3号に相当する道で胎内川を渡り、築地でひと晩、泊っている。

　築地からは船で加治川の河口、阿賀野川の河口と寄って新潟に行っている。

　築地から船で新潟まで行けたということは、当時の海岸線は今よりもずっと南側だったのであろう。
「村上→新潟」間の行程は、曽良の「随行日記」によると、次ぎのようになる。

廿九日	昼時、喜兵・友兵来て、光栄寺へ同道。一燈公ノ御墓拝。道ニテ鈴木治郎右衛門ニ逢。帰、冷麦特賞。未ノ下刻、宿久左衛門同道ニテ瀬波ヘ行。帰、喜兵御隠居ヨリ被下物、山野等ヨリ之奇物持参。又御隠居ヨリ重之内被下。友右ヨリ瓜、喜兵ヨリ干菓子等贈。
七月朔日	折々小雨降ル。喜兵・太左衛門・彦左衛門・友右等尋。喜兵・太左衛門ハ被見立。朝之内、泰そう寺へ参詣。巳ノ刻、村上ヲ立。午ノ下刻、乙村ニ到る。次作ヲ尋、甚持賞ス。乙宝寺ヘ同道、帰リテつゐ地村息次市良方ヘ状添遣ス。乙宝寺参詣前大雨ス。則刻止。申ノ上刻、雨降出。及暮、つゐ地村次市良ヘ着、宿。夜、甚強雨。
ニ日	朝、止、曇。辰ノ刻、立。喜兵方ヨリ大庄や七良兵ヘ方ヘ之状は愚状ニ入、返ス。昼時分ヨリ晴、アイ風出。新潟ヘ申ノ上刻、着。一宿ト云、追込宿之外は不借。大工源七母、有情、借。甚特賞ス。

　芭蕉は村上に一日滞在したが、旅籠の主人、久左衛門に案内されて瀬波に行っている。瀬波といえば瀬波温泉。温泉にでも入りに行ったのだろうか。興味のひかれるところだ。

　翌日は喜兵や太左衛門の見送りを受けて村上を出発。荒川を渡った乙村では次作に案内されて乙宝寺を参拝している。そのあと宿泊地となる築地に向かっていくのだが、冒頭でも書いたように、その道というのは今の県道3号に相当している。胎内川を渡り、高畑、山王、高田を通り、築地に到着している。曽良の「随行日記」で「つゐ地村」とあるのが「築地」のことだ。

　翌日は新潟へ。「昼時分ヨリ晴、アイ風出。新潟へ申ニ上刻、着。」と簡単に書かれているが、きっと風待ちをしていたのだろう。順風の「アイ風」が吹き始めると船は築地を出発し、新潟湊へと向かっていった。「アイ風」とは北からの風である。新潟では大工源七の母親の親切で宿に泊れたとある。

　さー、村上を出発だ。スズキST250を走らせ、芭蕉の足跡を追っていく。

　村上から国道345号を行く。羽州浜街道の塩谷宿に寄ったあと、旭橋で荒川を渡る。じきに国道113号との分岐。そこを左折し、芭蕉と同じように乙にある乙宝寺を参拝。そして日本海東北自動車道の荒川胎内ICの手前で右折し、県道3号に入った。胎内川を渡り、高畑、山王、高田と通り、胎内市の築地まで行った。

　芭蕉は築地から船で新潟に渡っているので、ここでいったん芭蕉の足跡を離れ、カソリ旅をする。

　まずは胎内川の河口から最上流まで行ってみる。国道7号から県道53号に入り、平野から一気に飯豊連峰へとつづく山並みに突入。胎内渓谷の渓谷美は見事だ。胎内温泉「ロイヤル胎内パークホテル」（入浴料500円）の湯に入り、胎内川ダムを通り過ぎ、奥胎内ヒュッテまで行ったが、県道53号はそこでダム工事のため通行止だった。

　国道7号に戻ると、次に国道113号で荒川沿いに走り、山形県に入る。小国から宇津峠を越えて米沢盆地の赤湯（南陽市）へ。国道沿いの道の駅「いいで」では「芋煮セット」（600円）を食べた。

　赤湯から高畠へ。高畠からは国道113号の旧道で二井宿峠に向かう。峠の手前には「峠の茶屋」。そこでは「峠の力餅」（500円）を食べた。

　山形・宮城県境の奥羽山脈の峠、二井宿峠で折り返し、高畠に下ると、今度は国道399号で同じく山形・宮城県境の奥羽山脈の峠、鳩峰峠まで行く。そして同じように峠で折り返し、高畠に下った。このような峠で折り返す「峠返し」も、峠を越える「峠越え」同様、じつにおもしろいものだ。

　高畠からは来た道を引き返し、国道113号で赤湯から宇津峠を越え、新潟県に戻った。その頃には日が暮れる。荒川沿いの温泉、道の駅「関川」にある「ゆ〜む」（入浴料500円）に入り、湯上りに「おにぎり」（2個300円）を食べる。ここの手づくりのおにぎりは美味。さっぱりした気分で国道113号→国道7号で新潟へ。夜の新潟駅前に着くと、駅前の「東横イン」に泊まった。

［60］鼠ヶ関を越えて新潟へ

［62］カソリ旅、福島を往復