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生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

奥の細道紀行[64]

投稿日:2016年11月27日

直江津、高田と城下町を行く

新潟県上越市/2009年

 芭蕉の越後路の旅はつづく。出雲崎を出発すると北国街道を南へ。柏崎を通り、鯨波海岸から青海川を渡り、聖ヶ鼻を過ぎた鉢崎で泊まっている。かつてはここに関所があったということだが、JR信越本線米山駅の周辺になる。
 鉢崎からは柿崎を通り、今町(直江津)で2泊、高田で3泊している。
「出雲崎→高田」間の行程は、曽良の「随行日記」では次のようになっている。

五日  朝迄雨降。辰ノ上刻止。出雲崎ヲ立。間モナク雨降。到柏崎、天屋弥惣兵衛ヘ弥三良状届、宿ナド云付ルトイエドモ、不快シテ出ヅ。道迄両度人走テ止、不止シテ出。小雨折々降ル。申ノ下刻、到鉢崎。宿たわらや六良兵衛。
六日  雨晴。鉢崎ヲ昼時、黒井ヨリスグニ浜ヲ通テ、今町ヘ渡ス。聴信寺へ弥三状届。忌中ノ由ニテ強不止、出。石井善次郎聞テ人ヲ走ス。不帰。及再三、折節雨降出ル故、幸ト帰ル。宿、古川市左衛門方ヲ云付ル。夜ニ到テ、各来ル。発句有。
七日  雨不止故、見合中ニ、聴信寺ヘ被招。再三辞ス。強招ニ及暮。其夜、佐藤元仙ヘ招テ俳有テ、宿ル。夜中、風雨甚。
八日  雨止。欲立。強止テ喜衛門饗ス。饗ヲハリ、立。未ノ下刻、到高田。細川春庵ヨリ人遣シテ迎、連テ来ル。春庵ヘ不寄シテ、先、池田六左衛門ヲ尋。客有。俳初ル。宿六左衛門、子甚左衛門ヲ遣ス。謁ス。
九日  折々小雨ス。俳、歌仙終。
十日  折々小雨。中桐甚四良へ被招、歌仙一折有。入テ帰。夕方ヨリ晴。

 芭蕉は出雲崎を発った5日は、柏崎の天屋惣兵衛の家で泊まることになっていたが、何かトラブルが起きたのだろう、そのまま夕刻の柏崎を発ち、鯨波からさらに鉢崎まで行っている。芭蕉はよっぽど頭に来たのだろう。

 翌6日は「今町へ渡ス」とあるが、直江津を流れる関川を渡って今町に着いたということだ。今町の句会で「発句有」とあるが、それは『おくのほそ道』の「越後路」にも出てくる「文月や六日も常の夜には似ず」の句だ。

 芭蕉は今町(直江津)、高田と、現在の上越市で5日、滞在している。

 

 芭蕉のそのような足跡を追って、出雲崎を出発。北国街道の国道352号を行く。日本海の潮風に吹かれながらスズキST250を走らせる。だが…、柏崎刈羽原発の手前で国道は通行止め。2007年7月16日に起きた中越沖地震から2年以上たっているのに、国道の復旧工事がいまだに行なわれているのだ。このあたりは中越沖地震の一番の激震地。その真上に原発がのっている。迂回路を通って柏崎まで行った。

 柏崎からはいったん芭蕉の足跡を離れ、国道252号経由で山深い松代へ。ここでは「300日3000湯」(2006年〜2007年)のなつかしの湯、まつだい芝峠温泉「雲海」(入浴料500円)の湯に入った。露天風呂からはその名の通りの雲海を見下ろし、雲海を突き破って連なる谷川連峰や苗場山の山並みを眺めた。湯から上がると、食堂で「天ざるそば」(1000円)を食べた。

 柏崎に戻ると、国道8号で鯨波、米山、柿崎と通り、直江津へ。直江津港の岸壁でST250を停めた。ここは昔からの港で、「今町湊」と呼ばれた。上杉謙信時代は春日山城の城下町、近世は高田の城下町の外港として栄えた。

 直江津から高田へ。

 その途中では上杉謙信が本拠地とした春日山城跡に行く。赤松の坂道を登りつめると、謙信をまつった春日山神社に着く。そこには謙信の銅像。毘沙門天への信仰の厚い謙信だったが、毘沙門天の「毘」の字を染め抜いた上杉の軍旗が風にはためいていた。

 春日山神社から山城の春日山城の本丸跡まで登ってみる。大汗をかいて登りついた本丸跡からは大展望が眺められた。左手には直江津の市街地を見下ろし、その向こうには日本海が茫洋と広がっている。高田平野を関川が流れ、米山が遠くに見えている。目を反対側に向けると、幾重にもなって重なり合った山並みが見える。その向こうには妙高山。

 春日山城跡を後にすると、雁木の残る豪雪の町、高田の古い町並みに入っていく。ここでは高田城跡を歩いた。一面に蓮で覆われた城跡の外堀を一目見ただけで、城の規模の大きさを容易に想像できる。それもそのはずで、高田城は徳川家康の子、忠輝の城。家康が諸国の大名たちに号令をかけ、北陸、奥羽への押さえとして造らせた石高75万石という大城だ。

 忠輝は家康の子供たちの中では一番才気にあふれていた。だが家康は忠輝の才能、能力を恐れた。戦国の世が終ると、死期の迫った家康は徳川家を乱す元になるとして、忠輝を伊勢に流してしまう。もし、忠輝が家康の怒りにふれることなく、おとなしくしていたら…。もし家康がもう2、3年、早く死んでいたら…。雪深い高田の町は徳川御三家の水戸、名古屋、和歌山を上回る城下町になっていたことは間違いない。

出雲崎の北国街道碑

▲出雲崎の北国街道碑

山深い松代の風景

▲山深い松代の風景

まつだい芝峠温泉「雲海」の露天風呂

▲まつだい芝峠温泉「雲海」の露天風呂

まつだい芝峠温泉「雲海」の「天ざるそば」

▲まつだい芝峠温泉「雲海」の「天ざるそば」

柏崎海岸

▲柏崎海岸

鯨波海岸

▲鯨波海岸

聖ヶ鼻の断崖

▲聖ヶ鼻の断崖

芭蕉がひと晩泊った鉢崎。郵便局名に地名が残る

▲芭蕉がひと晩泊った鉢崎。郵便局名に地名が残る

直江津港

▲直江津港

春日山城跡の上杉謙信像

▲春日山城跡の上杉謙信像

春日山城跡の春日山神社

▲春日山城跡の春日山神社

高田の町並み

▲高田の町並み

高田の雁木

▲高田の雁木

高田城

▲高田城

高田城の外堀を埋めつくすハス

▲高田城の外堀を埋めつくすハス

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