カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[36日目]

投稿日:2017年8月1日

開田高原で雪になる

甲信編 12日目(2006年12月12日)

 みのわ温泉「ながた荘」の朝湯に入り、朝粥、シラスおろし、半熟卵、塩ジャケ、のり、キノコ汁、ご飯、味噌汁の朝食を食べ、9時に出発。

 国道153号に出たところで、今日も急きょ予定を変更。最初は南へ、伊那から国道361号で権兵衛峠を越えて木曽谷に入っていくつもりだったが、南の方角はすでに雨模様。それにひきかえ北の空は明るい。ということで、国道153号を北に行き、塩尻から国道19号で木曽谷に入っていくことにした。

 標高889メートルの善知鳥峠を越える。峠周辺ではチラチラ雪が舞っていた。この善知鳥峠は日本列島を太平洋側と日本海側に二分する中央分水嶺の峠。「峠の国」信州の中央分水嶺の峠の中でも、善知鳥峠は最もゆるやかで越えやすい。この峠を越えると、信州も「南信」から「中信」に変わる。信州には「北信」、「南信」、「東信」はあるが、「西信」はない。松本、塩尻を中心とした「西信」は「中信」と呼ばれている。「ここが信州の中心!」といった自負があり、他の地域の信州人もそれを認めての「中信」なのだろう。善知鳥峠を越えて、そんな「中信」の塩尻に向かって下っていくと青空が広がり、日が差してきた。

 第1湯目はみどり湖温泉「田川浦温泉旅館」の湯。体がジワーッとあたたまってくるような薄茶色をした湯。源泉の小さな湯船もあるが、ちょっと冷たすぎる。ということで、最後にサッと入って出た。

 塩尻からは国道19号の中山道を行く。洗馬、本山、日出塩と宿場を通り、木曽谷に入っていくと、いっぺんに天気は崩れ、雨になった。奈良井宿を過ぎると鳥居峠を越えるが、幸いにも雪にならず、雨の峠を越えた。排気ガスの充満している鳥居峠の新鳥居トンネル内はあたたかく、ほんのわずかな間、排気ガスにむせかえりながらも幸せな気分を味わった。それほどの冷たい雨だった。

 第2湯目は天神温泉「清雲荘」の湯。いかにも温泉らしい濁り湯で、温泉の成分が湯船のふちにこびりついている。露天風呂もある。湯から上がると昼食。「鍋焼きうどん」を食べたが、ありがたいことにご飯はサービスなので腹いっぱい食べた。

 天神温泉を出発。まだ雨は降りつづいている。気温は2度。これ以上気温が下がれば雪になるので、一番冷たい雨ということになる。

 第3湯目は駒の湯温泉「駒の湯」。大浴場と露天風呂。大浴場は木枠の湯船。露天風呂は石造り。ともに風情のある湯船。晴れていれば、中央アルプスの最高峰、木曽駒ケ岳(2966m)がみえるのだろうが、ぶ厚い雨雲に隠れてまったく見えない。

 木曽福島では代山温泉「木曽宿」に行ったが、休業中で入れなかった。

 木曽福島からは国道361号で開田高原に向かっていく。その途中では第4湯目の二本木温泉の日帰り湯「二本木の湯」に入る。ここは赤湯。泉質は炭酸水素泉で泉質自慢の温泉につかった瞬間、凍りついた体はみるみるうちによみがえる。だが湯から上がり、ST250に乗って走り出すと、「キューン」と音をたてて全身の血管は縮み上がり、猛烈な寒冷地獄の中にたたき落とされる。縮めては広げ、また縮め…といった血管の鍛錬をしているようなもの。これって健康にいいのだろうか、もしくは命を落とすような悪いことなのか…と、ST250に乗りながら考えてしまった。

 国道361号の地蔵峠を越える。

 峠のトンネルの手前までは雨だった。それがトンネルを抜け、開田高原に入ったとたんに激しく吹きつけてくる雪に変わった。まるで地吹雪。雪の九蔵峠を越えると、雨も雪も降っていなかった。助かった。

 第5湯目の開田温泉「日の出旅館」の湯に入る。木の湯船で湯は濁り湯だ。

 開田高原からは県道20号で木曽福島に向かっていく。夜の温泉めぐりの開始。寒さが一段ときつくなる。この頃からまた雪が降り始める。雪には最大限の注意を払ってST250を走らせた。

 御岳明神温泉「山ゆり荘」の湯には定休日で入れなかった。

 第6湯目は木曽温泉「ホテル木曽温泉」の湯。雪に痛めつけられているので、最高にありがたい湯。大浴場には自分一人。思いっきり足を延ばして湯につかる。濁り湯で温泉の成分がびっしりと湯船の枠にこびりついている。

 第7湯目は小坂温泉の温泉旅館「けやきの湯」。玄関の明かりが消えていたので、「もう、この時間だと無理かな」と思いつつ、一応は聞いてみた。ところが入浴OK。それのみならず、夕食もつくってくれるという。なんというありがたさ。にごり湯の「けやきの湯」に入り、体があったまったところで湯から上がると、夕食が用意されていた。「岩魚定食」だ。イワナの塩焼きに正月料理のサケの「飯ずし」がついていた。宿の女将さんのあたたかな気持ちが胸にしみた。

 小坂温泉を出るときの気温は氷点下2度。そんな寒さもあまり気にならず、うきうきした気分でST250を走らせる。雪道で転倒することもなく今晩の宿、木曽福島のきそふくしま温泉「つたやグランドホテル」に到着。第8湯目の宿湯にどっぷりとつかった。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 みのわ温泉「ながた荘」
朝食 みのわ温泉「ながた荘」 朝粥、シラスおろし、半熟卵、塩ジャケ、のり、キノコ汁、ご飯、味噌汁
9時 みのわ温泉「ながた荘」を出発
善知鳥峠(峠越え)
305湯目 みどり湖温泉「田川浦温泉旅館」(500円)
鳥居峠(峠越え)
306湯目 天神温泉「清雲荘」(500円)
昼食 「清雲荘」 「鍋焼きうどん」(500円)
307湯目 駒の湯温泉「駒の湯」(700円)
代山温泉(休業中)
308湯目 二本木温泉「二本木の湯」(600円)
地蔵峠(峠越え)
九蔵峠(峠越え)
309湯目 開田温泉「日の出旅館」(500円)
御岳明神温泉(定休日)
310湯目 木曽温泉「ホテル木曽温泉」(500円)
311湯目 小坂温泉「けやきの湯」(400円)
夕食 「けやきの湯」 「岩魚定食」(1200円)
20時20分 きそふくしま温泉「つたやグランドホテル」(1泊朝食7500円)
312湯目 きそふくしま温泉「つたやグランドホテル」
本日の走行距離数 154キロ
本日の温泉入浴数 8湯

みのわ温泉「ながた荘」の内部「ながた荘」を出発「ながた荘」の近くで

みのわ温泉「ながた荘」の内部 「ながた荘」を出発 「ながた荘」の近くで

国道153号の善知鳥峠善知鳥峠の分水嶺公園みどり湖温泉「田川浦温泉旅館」 width=

国道153号の善知鳥峠 善知鳥峠の分水嶺公園 みどり湖温泉「田川浦温泉旅館」/td>

「田川浦温泉旅館」の湯天神温泉「清雲荘」の湯に入る「清雲荘」の「鍋やきうどん」

「田川浦温泉旅館」の湯 天神温泉「清雲荘」の湯に入る 「清雲荘」の「鍋やきうどん」

駒の湯温泉「駒の湯」二本木温泉「二本木の湯」国道361号の九蔵峠を越えると雪はやんだ!

駒の湯温泉「駒の湯」 二本木温泉「二本木の湯」 国道361号の九蔵峠を越えると雪はやんだ!

開田高原の集落を見下ろす。御岳は雪雲に隠れている開田温泉「日の出旅館」の湯雪の県道20号を行く

開田高原の集落を見下ろす。御岳は雪雲に隠れている 開田温泉「日の出旅館」の湯 雪の県道20号を行く

御岳明神温泉「山ゆり荘」。本日定休日雪はさらに激しくなる木曽温泉「ホテル木曽温泉」の湯

御岳明神温泉「山ゆり荘」。本日定休日 雪はさらに激しくなる 木曽温泉「ホテル木曽温泉」の湯

小坂温泉「けやきの湯」「けやきの湯」の湯船「けやきの湯」の「岩魚定食」

小坂温泉「けやきの湯」 「けやきの湯」の湯船 「けやきの湯」の「岩魚定食」

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