温泉めぐり日本一周[46日目]
投稿日:2017年9月1日
普通の民家が温泉だった
海ノ口温泉「和泉館」の朝湯には斎藤さんと一緒に入る。斎藤さんは「今日はカソリさんにトコトン、付き合いますよ〜」とうれしいことをいってくれる。干物、カマボコ、ヒジキ、オムレツ、シュウマイ、のり、野沢菜、ご飯、味噌汁といった朝食のあと、9時に出発だ。
国道141号を北へ。臼田の臼田温泉に行くと休業中、次の曽原温泉は廃業湯で入れなかった。
ということで第1湯目は峠の湯温泉になった。国道299号で十石峠に向かい、その途中で左折し、余地峠へ。かつては信州と関東を結ぶ重要な峠だった。余地の集落を抜け、山中に入っていく。峠の湯温泉を見つけられないまま、余地ダムを過ぎてしまう。舗装路からダートに変わる地点で道は通行止め。仕方なく折り返し、今度はゆっくりと峠道を下った。すると余地ダム下の道の右側に一軒の家を見つけた。だが、どう見ても普通の民家…。スズキST250を止めて聞いてみると、その普通の民家が峠の湯温泉だった。
薪を運んでいたご主人に「入浴、させてもらえませんか」と頼むと、「まだ沸かしていないので…」ということで断られた。だが、年老いた主人は「この寒い中、せっかく来てくれたのだから」といって、我々にお茶を飲んでいくようにといった。こたつに入ると、奥さんはお茶を入れてくれ、野沢菜やミカンを出してくれた。孫の土産だといって、沖縄の「ちんすこう」も出してくれた。
熱い茶をすすっているとき、ぼくはひらめいた。「ちょっと、お風呂を見せてもらえますか」といって、すぐさま浴室へ。源泉がホースからチョロチョロ流れ出ている。湯船はかわいらしいもので、一人がやっと入れるくらいのもの。蓋をあけると、湯にはまだあたたかさが残っていた。すぐさま戻り、「あのー、ご主人、ちょっとだけ入ってもかまいませんか」と聞いてみた。最初は冷た過ぎて無理だといっていた主人は、奥さんにいわれたこともあって、「それではすぐに沸かすから」といって薪をくべてくれた。ぼくは小さな湯船につかり、斎藤さんはその間、こたつに入ってご夫婦の話を聞いた。最初は冷たい「峠の湯」だったが、なにしろ小さな湯船なので、じきに温まり、ちょうどいい湯加減になった。
湯から上がると、今度は斎藤さんと交代し、ぼくがこたつに入ってご夫婦の話を聞いた。今でこそ、すっかり忘れ去られたような余地峠だが、かつては信州と関東を結ぶ最短路の峠ということで人の往来は多かった。
奥さんは戦後の食料難の時代の話をしてくれた。関東から信州の佐久へ、余地峠を越えて、大勢の人たちが闇米の買出しでやってきた。現金ではなく、物々交換だったという。鍋や釜、足利の銘仙と佐久の米を交換し、それを背負て余地峠を越えていったという。そんな峠越えの人たちにとって「峠の湯」は絶好の休憩場所になっていた。
ご主人は余地峠にまつわる歴史的な話をしてくれた。ここは武田信玄の隠し湯でもあったそうで、信玄自身が「峠の湯」で刀傷を癒したといい伝えられている。この地の「篠原姓」は武田の流れをくむという。斎藤さんが湯から上がったところでご夫妻にお礼をいって「峠の湯」を離れたが、なんとも心に残る温泉になった。「峠の湯」の目の前に見える山は鉄平石の昔からの産地で、山頂周辺はすっかり削り取られ、平になっている。
第2湯目は南相木温泉「滝見の湯」。大浴場と露天風呂。入浴客は我々2人だけ。湯につかりながら斎藤さんとはおおいに話がはずむ。斎藤さんも貸し切り湯状態なので気分を高揚させて湯につかっている。湯から上がると昼食。「相木そば」を食べた。噛み応え抜群のそば。腰の強さが印象深い。我々は南相木温泉「滝見の湯」には大満足した。
第3湯目は一軒宿の稲子湯温泉。ここは八ヶ岳の登山口にもなっている。湯につかるとぷーんと鼻につく硫黄泉の匂いがすごくいい。稲子湯の周辺ではアイスバーンの道に泣かされた。
国道141号に出ると、昨日は入れなかった海尻温泉「灯明の湯」へ。残念ながら今日も入れず。冬期は土、日のみの営業だった。
国道141号を南下し、野辺山峠を越えて信州から甲州に入った。甲州第2弾目の温泉めぐりを開始。まずは八ヶ岳周辺の温泉をめぐる。
第4湯目は清里温泉「天女の湯」。大浴場と大露天風呂。濁り湯で源泉は47度。ジャスト適温の湯だ。
第5湯目は甲斐大泉温泉「パノラマの湯」。大浴場と露天風呂。湯には若干のぬめりがある。すでに日は暮れ、残念ながら露天風呂からは何も見えなかった。ほとんど毎日、この湯に入りにくるという常連さんと湯の中談義。温泉が大好きな人。「小諸の浅間温泉の真っ赤な湯はすごい!」といっていた。
第6湯目は泉温泉「健康センター」の湯。ツルンツルンの湯につかった。
第7湯目は高根温泉の日帰り湯「たかねの湯」。冬至間近の「ゆず湯」だった。湯から上がると「カレーライス」&「餃子」の夕食を食べる。食べ終わったところで斎藤さんとの別れ。我々2人だけになった大広間で、斎藤さんは「いいですか〜!」といって大きな掛け声とともに、「目指せ、3000湯! エイエイオー!」のエールを送ってくれた。それは「シルクロード横断」の旅の毎朝、全員で声を掛け合った「目指せ、イズタンブール! エイエイオー!」をもじったものだった。斎藤さん、ありがとう〜!
今夜の泊りは増富温泉の音泉旅館「不老閣」。到着は21時。遅い時間の到着にもかかわらず、快く迎えてもらえたのがありがたかった。第8湯目の「宿湯」に入る。まずは熱めの湯につかり、体が火照ってきたところで、次に源泉ラジウム泉の温めの湯につかる。1時間以上の長湯をしたが、不思議なことに体の芯だけがぽかぽかしてくる。この体の芯のぽかぽか感が万病に効く増富温泉の秘訣のようだ。
朝湯 | 海ノ口温泉「和泉館」 |
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朝食 | 海ノ口温泉「和泉館」 干物、カマボコ、ヒジキ、オムレツ、シュウマイ、のり、野沢菜、ご飯、味噌汁 |
9時 | 海ノ口温泉「和泉館」を出発 |
「斎藤さん」との温泉めぐり | |
臼田温泉(休業中) | |
曽原温泉(廃業湯) | |
391湯目 | 峠の湯温泉「峠の湯」(500円) |
392湯目 | 南相木温泉「滝見の湯」(350円) |
昼食 | 南相木温泉「滝見の湯」 「相木そば」(850円) |
393湯目 | 稲子湯温泉「稲子の湯」(600円) |
野辺山峠(峠越え) | |
山梨県に入る | |
394湯目 | 清里温泉「天女の湯」(750円) |
395湯目 | 甲斐大泉温泉「パノラマの湯」(700円) |
396湯目 | 泉温泉「健康センター」(700円) |
397湯目 | 高根温泉「たかねの湯」(700円) |
夕食 | 高根温泉「たかねの湯」 「カレーライス」&「餃子」 |
「斎藤さん」との別れ | |
20時20分 | 増富温泉「不老閣」(1泊朝食8200円) |
398湯目 | 増富温泉「不老閣」 |
本日の走行距離数 182キロ | |
本日の温泉入浴数 8湯 |
海ノ口温泉「和泉館」の朝湯に入る斎藤さん | 「和泉館」の朝食 | 「和泉館」の朝食を食べる斎藤さん |
「和泉館」を出発 | JR小海線の臼田駅 | 余地峠の通行止地点 |
峠の湯温泉「峠の湯」 | 「峠の湯」に入る | 「峠の湯」のご夫妻 |
南相木温泉「滝見の湯」 | 「滝見の湯」の大浴場 | 「滝見の湯」の「相木そば」 |
稲子湯温泉への道はアイスバーンの連続 | 稲子湯温泉「稲子の湯」に到着 | 稲子湯温泉「稲子の湯」に入る |
海尻温泉「灯明の湯」には今日も入れず… | 清里温泉「天女の湯」 | 泉温泉「健康センター」 |
高根温泉「たかねの湯」 | 「たかねの湯」の「カレーライス」&「餃子」 |