カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[111日目]

投稿日:2018年6月9日

週2日だけ入れる温泉

四国編 12日目(2007年3月21日)

 夢の温泉「夢の温泉」の朝湯に入る。ここは「絶景湯」。物部川の眺めがすばらしい。まるで物部川という自然を宿の大庭園にしているかのようだ。川中の大岩が目の前に見える。そこには祠があって、宿から赤い橋がかかっている。天気は快晴。春とは思えないような澄み切った青空が広がり、空の色を映して物部川はより青い。

 湯から上がると朝食。物部川がよく見える部屋に朝食が用意されている。「絶景食」。いい風景を見ながら食べると、もうそれだけで一品のご馳走になる。干物、目玉焼き、ダイコンの千切り、青菜のおひたし、シラス、かまぼこをおかずに「3杯飯」を食べ、久しぶりの納豆で4杯目を食べた。

 8時30分、夢の温泉「夢の温泉」を出発。国道195号で高知・徳島県境の四ツ足峠に向かっていく。絶好のツーリング日和。スズキSKYWAVE400を走らせながら浮き浮きした気分になってくる。交通量も少なく、快適な走行。「ライダーズイン奥物部」のある大栃を過ぎ、べふ峡温泉を通り、1時間ほどで四ツ足峠に到着。峠を貫く四ツ足峠トンネルの入口で折り返す。「峠返し」の温泉めぐりの開始だ。

 第1湯目は峠を下ってすぐのところにあるべふ峡温泉「べふ峡温泉」。ここは朝7時30分から入浴できる。宿泊も可。ツーリングの温泉宿としても絶好だ。大浴場はぼく一人。湯船を独り占して湯につかる。どっぷり湯につかりながら目の前の渓流を眺める。そのすぐ背後には険しい山並みが迫っている。

 第2湯目は笹温泉。奥物部の中心、大栃から8キロほど奥に入った山中の一軒宿「笹温泉」の湯に入る。ここの営業日は土曜日と日曜日の週2日。それと祝日だ。今日はラッキーなことに祝日で、笹温泉に入れた。笹温泉を知ったのは1999年の「日本一周」のとき。ここを通り、徳島県に向かったが、「えー、日本には週2日だけ入れる温泉がある!」といった驚きで笹温泉はぼくの頭にインプットされた。その後、「四国一周」や四国の「林道ツーリング」などで何度か来たが、なかなか曜日が合わず、笹温泉には入れなかった。それが今回、やっと念願がかなって入れたのだ。

 なんとも趣のある木の湯船。太い竹筒から湯が流れ込んでいる。湯につかりながら渓流を眺めた。ここには一人、先客がいた。湯につかりながら本を読んでいる。何ともいえずにいいシーンだ。好きな旅に出て、好きな温泉に入り、好きな本を読んでいるといった連想をぼくはいだいた。一言も会話をかわさないまま湯から上がったが、この笹温泉の湯ではネットのすごさをまざまざと見せつけれることになる。「300日3000湯」のサイトに、信じられないようなことだが、このとき一緒になった「たかなりさん」が次のような書き込みをしてくれたのだ。

「賀曽利さん、昨日、笹温泉で一緒になったものです。出られるときに、写真を一枚とりたいとのことで、私すみの方によりました。大変丁寧な言葉使いでお礼を言っていただきありがとうございます。世界一周航空券の本を持ち込んで読んでいて、どんな人が風呂に入っているのか気がつきませんでした。賀曽利さんが出られてから気づき、あっ!と思いました。10分くらいは二人きりでしたねえ。挨拶させていただきたかったなあ。気をつけて四国を楽しんでください。元気いただきました。」

「たかなりさん」とは、「湯の中談義」をしたかったなあ…。

 第3湯目は龍河温泉「龍河温泉」の湯。大浴場の湯は若干、白濁していてツルツル感がある。

 第4湯目は長岡温泉の日帰り湯「ながおか温泉」。広々とした大浴場と露天風呂。露天風呂には打たせ湯もある。湯から上がると昼食。「日替わり定食」を食べた。食後のコーヒーつき。ここまでの4湯が四ツ足峠の「峠返し」で入った温泉だ。

 第5湯目はホーライ湯温泉の日帰り湯「ホーライ湯」。大きな木の湯船。洗い場も木。日本三大美林にも数えられる「やなせ杉」をふんだんに使っている。湯につかりながら木の良さを存分に味わった。

 国道55号に出ると東へ。昨夜通ったルートを逆戻りする。昨夜は入れなかった温泉をめぐるのだ。

 第6湯目はよさこい温泉「土佐ロイヤルホテル」。国道55号沿いの高台に建つ白亜の高層ホテル。大浴場と露天風呂に入った。

 第7湯目はこまどり温泉。安芸の市街地を抜けたところで左折し、山中に入っていく。すぐ近くが海だとは思えないほどの山深い風景。車1台がやっと通れるくらいの道を行き、谷間を抜け、わずかに開けたところに、日帰り湯の「こまどり温泉」がある。内風呂のみ。小さな湯船。源泉そのまんまの無色透明の湯につかりながら狭い山田を眺めた。山裾はゆず畑。その背後には一面の杉林が広がっている。すごくうれしいのは、すでに杉花粉のピークは過ぎたようで、花粉症の症状が大分やわらいできたことだ。クシャミの連発は止まり、目のかゆみもやわらぎ、あとは鼻水、鼻づまりが残るくらいだ。一切薬を飲まずに、自力で「花粉症地獄」を乗り切った。花粉症にはやられっぱなしで、毎日、生きた心地もしなかった。それでも薬を飲まなかったのは、たとえ花粉症の症状が抑えられても、自分の体にいいことは何もないという確信からだ。とはいってもぼくの花粉症はまだまだつづく。連休明けどころか、梅雨に入るまでつづくのだから始末に終えない。

 安芸から国道55号で安田へ。その途中の大山岬では土佐湾の水平線に落ちていく夕日を眺めた。安田で国道55号を離れ、安田川の清流に沿って走り、馬路村に入っていく。昨日の北川村といい、今日の馬路村といい、周辺の市町村と合併しないで一村でがんばっている。思わず拍手を送りたくなる。今晩の宿はそんな馬路村にある馬路温泉。だが、宿に入る前にもう1湯、やなせ温泉に向かった。新久木トンネルで峠を越え、やなせ温泉まで行った。だが、「本日休業」…。残念無念。

 やなせ温泉から馬路温泉に戻り、日帰り湯&宿泊施設の「コミュニティーセンター」に到着。時間は19時30分でいつもより早い。そのおかげでここで夕食を食べることができた。第8湯目の「宿湯」に入り、湯から上がると、まずは生ビールを飲み干す。そのあとで渓流魚、アメゴ料理の「アメゴゆず酢かけ定食」を食べた。ゆずは馬路村の特産。いつもより早い宿への到着で、こうして生ビールを飲み、夕食を食べられるありがたさをしみじみと感じるのだった。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 夢の温泉「夢の温泉」
朝食 夢の温泉「夢の温泉」 ご飯、味噌汁、干物、目玉焼き、納豆、シラス、カマボコ、ダイコンの千切り
8時30分 夢の温泉「夢の温泉」を出発
四ツ足峠 峠返し
1020湯目 べふ峡温泉「べふ峡温泉」(600円)
1021湯目 笹温泉「笹温泉」(800円)
1022湯目 龍河温泉「龍河温泉」(800円)
1023湯目 長岡温泉「ながおか温泉」(900円)
昼食 長岡温泉「ながおか温泉」 「日替わり定食」(780円)
1024湯目 ホーライ湯温泉「岡豊苑」(630円)
1025湯目 よさこい温泉「土佐ロイヤルホテル」(1000円)
1026湯目 こまどり温泉「こまどり温泉」(400円)
やなせ温泉 入れず
19時30分 馬路温泉「うまじ」(1泊2食7350円)
1027湯目 馬路温泉「うまじ」
夕食 馬路温泉「うまじ」 「アメゴゆず酢定食」
本日の走行距離数 258キロ
本日の温泉入浴数 8湯

夢の温泉「夢の温泉」から見る物部川「夢の温泉」の朝湯に入る「夢の温泉」の朝食を食べる

夢の温泉「夢の温泉」から見る物部川 「夢の温泉」の朝湯に入る 「夢の温泉」の朝食を食べる

「夢の温泉」を出発四ツ足峠に到達。「峠返し」で折り返すべふ峡温泉「べふ峡温泉」

「夢の温泉」を出発 四ツ足峠に到達。「峠返し」で折り返す べふ峡温泉「べふ峡温泉」

奥物部の山間の集落奥物部を流れる物部川笹温泉「笹温泉」

奥物部の山間の集落 奥物部を流れる物部川 笹温泉「笹温泉」

「笹温泉」の湯龍河温泉「龍河温泉」「龍河温泉」の大浴場

「笹温泉」の湯 龍河温泉「龍河温泉」 「龍河温泉」の大浴場

長岡温泉「ながおか温泉」「ながおか温泉」の「日替わり定食」ホーライ湯温泉「岡豊苑」の湯

長岡温泉「ながおか温泉」 「ながおか温泉」の「日替わり定食」 ホーライ湯温泉「岡豊苑」の湯

よさこい温泉「土佐ロイヤルホテル」こまどり温泉への道こまどり温泉「こまどり温泉」

よさこい温泉「土佐ロイヤルホテル」 こまどり温泉への道 こまどり温泉「こまどり温泉」

大山岬の海岸土佐湾に落ちていく夕日新久木トンネルを走り抜ける

大山岬の海岸 土佐湾に落ちていく夕日 新久木トンネルを走り抜ける

やなせ温泉には入れず馬路温泉「うまじ」「うまじ」の「アメゴゆず酢定食」

やなせ温泉には入れず 馬路温泉「うまじ」 「うまじ」の「アメゴゆず酢定食」

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