カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[119日目]

投稿日:2018年7月4日

歳を重ねただけで人は老いない

四国編 20日目(2007年3月29日)

 大歩危温泉「サンリバー大歩危」の朝湯に入る。大浴場と露天風呂。湯につかりながら大歩危を流れる吉野川を見下ろす。吉野川にかかるJR土讃線の鉄橋を1両の列車がガタンゴトンガタンゴトンといわせて通り過ぎていく。

 湯から上がると、ご飯、味噌汁、アユの開き、半熟卵、コンニャクの刺身、のり、漬物の朝食。アユの開きとコンニャクの刺身がついているところが大歩危らしかった。もう何年も前のことになるが、この「サンリバー大歩危」に泊まり、アユ漁の名人の話を聞いたことがある。アユのみならず、吉野川のいろいろな川魚を取る漁師さんだった。アユ釣りを見せてあげるといわれ、夜明けに名人の家に行き、半日、一緒についてまわった。見事な腕前で次々にアユを釣り上げていく。名人は「大歩危のアユは天下一品。ここ以上のアユはいないよ」といっていた。朝食のアユの開きを食べていると、そんな名人の言葉が思い出されてくるのだった。

 9時、大歩危温泉を出発。大歩危を拠点にしての温泉めぐりを開始する。

 第1湯目は賢見温泉。国道32号から国道319号に入ってすぐのところに一軒宿の「賢見温泉」がある。「泉質日本一!」の看板が誇らしげだ。内風呂のみで大きな湯船。湯につかりながら吉野川支流の谷を見下ろした。まわりの山々には山桜が咲いていた。

 次に国道32号から県道32号に入り、吉野川の支流、祖谷川沿いに祖谷渓に入っていく。目のくらむようなV字谷。道幅は思いっきり狭い。

 そんな祖谷渓の断崖上に第2湯目の祖谷温泉「ホテル祖谷温泉」がある。ここは内風呂だけだと入浴料は500円。無色透明の湯につかりながら祖谷渓を見下ろした。谷底にはホテル専用のケーブルカーで下っていく露天風呂があるが、露天風呂にも入れる入浴料は1500円なので内風呂のみにした。

 第3湯目は祖谷の名所かずら橋に近い新祖谷温泉の「ホテルかずら橋」の湯。ここは1000円の入浴料で大浴場もケーブルカーで登っていく露天風呂も入れる。天空露天風呂の「雲海の湯」は「絶景湯」。四国では一番といっていいほど。湯につかりながら、目の前に広がる幾重にも重なりあった祖谷の山岳風景を一望した。山また山、山ばかりの祖谷だ。

 ここには「青春」と題して、次のように書かれた額が掲げられていた。

 青春は人生のある期間ではなく心の持ち方をいう。
 歳を重ねただけで人は老いない。
 理想を失った時、初めて老いる。

 人は信念と共に若く、疑惑と共に老いる。
 人は自信と共に若く、恐怖と共に老いる。
 人は希望と共に若く、失望と共に老いる。

 いま、頭を高く上げ希望の波をとらえる限り、
 たとえ何歳であろうと君は若い。

 第4湯目は祖谷秘境の湯温泉の「秘境の湯」。大浴場と青石を配した露天風呂。湯から上がるとレストランで昼食。「アメゴ塩焼き定食」を食べた。祖谷そばの汁つき。これら3湯の祖谷の温泉に入り終えると、県道45号で祖谷トンネルを抜け、大歩危に下った。

 大歩危からは国道32号で池田を通り、猪ノ鼻峠のトンネルを抜け、徳島県から香川県に入った。

 第5湯目は環の湯温泉の日帰り湯「環の湯」。大浴場と露天風呂。露天風呂は檜風呂。無色透明のツルツルヌルヌル湯はなかなかいい湯だ。浴室からは讃岐の穏やかな田園風景を眺める。

 第6湯目は塩入温泉の日帰り湯「塩入温泉」。ここは内風呂のみで若干の白濁した湯。浴室前の桜は八分咲き。

 第7湯目は満濃町かりん温泉の日帰り湯「かりんの湯」。ここも内風呂のみで、大風呂の湯につかった。

 第8湯目はニューレオマ温泉。大規模なレジャーランド「ニューレオマワールド」内の「ホテルレオマの森」に「森の湯」がある。大浴場と露天風呂。露天風呂には3つの湯船。東屋風屋根つきの露天風呂は趣のあるものだった。

 さらに香川県内の温泉めぐりはつづく。

 第9湯目は高瀬温泉の日帰り湯「たかせ温泉」。ここは人気の湯で大浴場、露天風呂ともにかなり混んでいた。

 第10湯目は琴弾温泉。観音寺の海岸近くにある日帰り湯「琴弾廻廊」の湯に入った。内風呂は古代檜の漆風呂で、無色透明の湯。露天風呂の湯は塩分を含んでいる。湯から上がるとちょっと贅沢な夕食。「四季のお造り膳」を食べた。お造り(刺身)の盛り合わせに茶碗蒸しや小鉢などがついている。

 第11湯目は瀬戸大橋に近い瀬戸大橋温泉の「瀬戸内荘」。フロントで入浴料を払おうとすると、「1200円です」といわれてビックリ。「えー」と思わず声が出た。というのはここには以前、泊まったこともあり、入浴料が1200円もするようなところにはとても見えなかった。いまさら「やめます」ともいえずに払ったが、16時以降の入浴料が1200円で、それ以前の時間帯は780円とのこと。内風呂のみで湯につかりながら坂出の夜景を眺めた。

 第12湯目は城山温泉。高台上の「城山温泉」の湯に入った。ここは「瀬戸内荘」とは反対に、15時以降の入浴料は550円。それ以前の時間帯の入浴料金は1700円。大衆演劇の観劇料が含まれているからだ。館内には大衆演劇のスターたちの写真が飾られていた。ここが四国最後の温泉。大浴場の湯につかりながら、坂出へとつづく町明かりを眺めた。寂しさが胸をよぎり、四国での数々の思い出がよみがえってくるのだった。

 城山温泉からは県道33号→国道11号で高松へ。高松港到着は23時45分。「高松→高松」の「四国一周」が終わった。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 大歩危温泉「サンリバー大歩危」
朝食 大歩危温泉「サンリバー大歩危」 ご飯、味噌汁、アユの開き、半熟卵、コンニャクの刺身、のり、漬物
9時 大歩危温泉「サンリバー大歩危」を出発
1104湯目 賢見温泉「賢見温泉」(500円)
1105湯目 祖谷温泉「ホテル祖谷温泉」(500円)※内風呂のみ
1106湯目 新祖谷温泉「ホテルかずら橋」(1000円)
1107湯目 祖谷秘境の湯温泉「秘境の湯」(1000円)
昼食 祖谷秘境の湯温泉「秘境の湯」 「アメゴ塩焼き定食」(945円)
猪ノ鼻峠 峠越え
香川県に入る
1108湯目 環の湯温泉「環の湯」(500円)
1109湯目 塩入温泉「塩入温泉」(500円)
1110湯目 満濃町かりん温泉「かりんの湯」(500円)
1111湯目 ニューレオマ温泉「森の湯」(1050円)
1112湯目 高瀬温泉「たかせ温泉」(600円)
1113湯目 琴禅温泉「琴禅廻廊」(600円)
夕食 琴禅温泉「琴禅廻廊」 「お造り膳」(1680円)
1114湯目 瀬戸大橋温泉「瀬戸内荘」(1200円)※特例で入る
1115湯目 城山温泉「城山温泉」(550円)
23時45分 高松港に到着。「高松→高松」の「四国一周編」、終了
本日の走行距離数 243キロ
本日の温泉入浴数 12湯

大歩危温泉「サンリバー大歩危」からの眺め「サンリバー大歩危」の朝湯に入る「サンリバー大歩危」の朝食を食べる

大歩危温泉「サンリバー大歩危」からの眺め 「サンリバー大歩危」の朝湯に入る 「サンリバー大歩危」の朝食を食べる

「サンリバー大歩危」を出発賢見温泉「賢見温泉」「賢見温泉」の湯

「サンリバー大歩危」を出発 賢見温泉「賢見温泉」 「賢見温泉」の湯

祖谷渓の深い谷祖谷温泉「ホテル祖谷温泉」「ホテル祖谷温泉」の内風呂

祖谷渓の深い谷 祖谷温泉「ホテル祖谷温泉」 「ホテル祖谷温泉」の内風呂

「ホテル祖谷温泉」を望む新祖谷温泉「ホテルかずら橋」「ホテルかずら橋」の内風呂

「ホテル祖谷温泉」を望む 新祖谷温泉「ホテルかずら橋」 「ホテルかずら橋」の内風呂

「ホテルかずら橋」の露天風呂祖谷秘境の湯温泉「秘境の湯」「秘境の湯」の湯

「ホテルかずら橋」の露天風呂 祖谷秘境の湯温泉「秘境の湯」 「秘境の湯」の湯

「秘境の湯」の「アメゴ塩焼き定食」これがアメゴの塩焼き土讃線の大歩危駅の桜

「秘境の湯」の「アメゴ塩焼き定食」 これがアメゴの塩焼き 土讃線の大歩危駅の桜

吉野川の大歩危広い谷間を悠々と流れる吉野川国道32号の猪ノ鼻峠

吉野川の大歩危 広い谷間を悠々と流れる吉野川 国道32号の猪ノ鼻峠

環の湯温泉「環の湯」塩入温泉「塩入温泉」弘法大師の満濃池

環の湯温泉「環の湯」 塩入温泉「塩入温泉」 弘法大師の満濃池

満濃町かりん温泉「かりんの湯」ニューレオマ温泉「森の湯」琴禅温泉「琴禅廻廊」の「お造り膳」

満濃町かりん温泉「かりんの湯」 ニューレオマ温泉「森の湯」 琴禅温泉「琴禅廻廊」の「お造り膳」

これが「お造り膳」の「お造り」瀬戸大橋温泉「瀬戸内荘」城山温泉「城山温泉」

これが「お造り膳」の「お造り」 瀬戸大橋温泉「瀬戸内荘」 城山温泉「城山温泉」

「城山温泉」の大衆演劇のスターたちの写真

「城山温泉」の大衆演劇のスターたちの写真    

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