カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[127日目]

投稿日:2018年7月31日

伊豆の海で終わる…

四国編 28日目(2007年4月6日)

 湯ヶ島温泉の温泉旅館「三吉」の朝湯に入る。ミニ庭園を眺めながら内風呂と露天風呂の湯につかる。朝湯から上がると朝食。まずは串刺しにした焼きたてのヨモギ餅を食べる。ヨモギの香ばしさが口中に広がる。サラダを食べたあと、目の前で焼くアジの干物で1杯目、シラスおろしで2杯目、半熟卵で3杯目と、「3杯飯」を食べた。キューリ、ナス、カブの浅漬や切干ダイコンの煮物は家庭の味。豆腐の味噌汁の中にはワラビが入っていた。細やかな心づかいが感じられる「三吉」の朝食だった。

「三吉」を出発。湯ヶ島温泉周辺の温泉をめぐる。

 第1湯目は船原温泉の日帰り湯「湯治場ほたる」の湯。大浴場の3つに仕切られた湯船はとてつもない大きさ。度肝を抜かれた。渓流を見下ろしながら自噴の湯につかる。

 次がなかなか入れなかった。

 一軒宿の月ヶ瀬温泉は浴室の清掃中で12時30分以降なら入れるという。

 吉奈温泉は手前の「さか屋」は玄関が閉まっていた。隣の「東府屋」は浴室の清掃中で12時過ぎから14時くらいの間までなら入れるという。一番奥の「芳泉荘」は玄関で何度となく声をかけたが、誰も出てこなかった。

 このあとほんとうにうれしかったのだが、この「芳泉荘」のご主人が「300日3000湯」のサイトに次のような書き込みをしてくれた。

「この度はお越し頂いたのに作業中で御挨拶も出来なくて申し訳ありませんでした。自分は以前、バイクで旅に出るのが大好きでした。そのきっかけは賀曽利さんの本を読んでからのことで、北海道を旅したこともあります。またこちらにお越しの際には是非お立ち寄り下さい。」

 嵯峨沢温泉は「嵯峨沢館」、「喜久屋」ともに入浴不可だった。

 第2湯目は持越温泉。湯ヶ島温泉から仁科峠に向かったところにある日帰り湯「持越温泉」の湯に入った。内風呂、露天風呂ともに檜風呂。そのあと、ここの名物湯「蒸し湯」に入る。温泉サウナだ。小さな浴室内には72度の高温湯が流れ込み、浴室内は46度前後になっている。汗がとめどもなく噴き出てきたところで、隣の露天風呂に入った。

 持越温泉からはゆるやかな峠を越える道で第3湯目の吉奈温泉に戻り、「東府屋」の湯に入った。大浴場の石の湯船には滔々と湯が流れ込んでいる。

 吉奈温泉の歴史は古い。奈良時代、行基によって発見されたといわれ、伊豆でも最古の歴史を誇っている。江戸時代には徳川家康の側室の「お万の方」がしばしばここの湯に入りにきた。そのおかげで2人の子供をもうけ、それ以降、「子宝の湯」といわれるようになったという。その2人の子供はのちに、徳川御三家の紀伊と水戸の藩祖となる。今日の和歌山と水戸があるのは、伊豆半島の山間の温泉、吉奈温泉のおかげともいえるのだ。それにしても安房勝浦で生れた「お万の方」は数奇な人生を送った。「東府屋」には、そんな「お万の方」が使ったという鍋がケースに入れられて展示されている。

 第4湯目は月ヶ瀬温泉。一軒宿「月ヶ瀬」の湯に入る。大浴場と大露天風呂。露天風呂の湯につかりながら狩野川の流れを眺め、竹林の庭園で鳴くウグイスの声を聞いた。

 湯ヶ島温泉に戻ると、国道414号で天城峠へ。浄連の滝を通り、天城トンネルで天城峠を越え、中伊豆から南伊豆に入っていく。日の光がいっぺんに強くなり、緑が濃くなる。ループ橋を下ったところで国道を左折し、第5湯目の大滝温泉「天城荘」の湯に入る。ここにはいくつもの露天風呂があるが、河津七滝の遊歩道沿いにあるので水着着用。レンタルの水着を着て露天風呂の湯につかり、河津七滝の中でも最大の大滝を眺めた。湯から上がると「大滝庵」で「ところ天」を食べ、それを昼食がわりにした。

 国道414号を下り、第6湯目の湯ヶ野温泉へ。ここでは国民宿舎「かわづ」の湯に入った。大浴場の湯につかったあと、露天風呂へ。小さめな湯船だが、河津川の渓流を見下ろし、いかにも南伊豆といった緑濃い樹林を眺めた。ここは源泉が56度という高温湯。夏は加水しているが、それ以外の季節だと源泉そのまま。いい湯だ。

 国道414号は湯ヶ野温泉を過ぎると、山中を縫って下田へと通じている。そんな国道414号と分れ、県道14号で河津川沿いに下っていく。このルートが下田へのメインルートになっている。その途中には峰温泉と谷津温泉の2湯がある。ともに高温湯。

 第7湯目は峰温泉の日帰り湯「踊り子温泉会館」。大浴場と露天風呂。休日は混みあう「踊り子温泉会館」も、平日の午後だと入浴客の姿もまばら。大露天風呂の湯には自分一人でつかった。ここの源泉は68度。

 第8湯目は谷津温泉「薬師の湯」。内風呂と露天風呂はともにかなりの熱い湯。峰温泉、谷津温泉から河津浜の海岸に出た。

 第9湯目は河津浜温泉。海岸には無料湯の混浴露天風呂がある。脱衣所はない。すばやく脱いで小さな木の湯船につかる。この季節だと湯は適温。すぐわきは国道135号で車が次々に通り過ぎていくが、この露天風呂に気づく人はまずいない。湯につかりながら水平線に横たわる伊豆大島を見る。右手にはツンと尖った利島も見える。

 第10湯目は今井浜温泉の日帰り湯「サンシップ今井浜」。断崖上の露天風呂の湯につかりながら黒潮の海を見下ろす気分はたまらない。自分の体と海が一体になったかのようだ。

「四国編」の往路は伊豆の海にはじまり、「四国編」の復路もこうして伊豆の海で終わる…。

 今井浜温泉から河津浜温泉に戻り、「伊豆半島縦断ルート」を北へ。天城峠を越え、一気に伊豆長岡温泉へ。そこから狩野川を渡った。

 第11湯目は韮山温泉。昨日は定休日だった日帰り湯「めおと湯の館」の湯に入る。

 今晩の宿は大仁温泉。ここが「海岸編」と「内陸編」の2度に分けてまわった伊豆半島最後の温泉になる。高台上の「大仁温泉」に到着したのは19時45分。いつもよりずいぶんと早い宿への到着。ただそれだけのことなのだが、すごくうれしくなってしまう。第12湯目の「宿湯」に入る。大浴場と狩野川沿いの夜景を見下ろす露天風呂の湯につかり、湯から上がると、カンビールで伊豆半島最後の温泉に乾杯するのだった。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 湯ヶ島温泉「三吉」
朝食 湯ヶ島温泉「三吉」 ご飯、味噌汁、よもぎ餅、干物、シラスおろし、切干ダイコン、サラダ、漬物
9時30分 湯ヶ島温泉「三吉」を出発
1183湯目 船原温泉「湯治場ほたる」(700円)※1時間
1184湯目 持越温泉「持越温泉」(700円)
1185湯目 吉奈温泉「東府屋」(1000円)
1186湯目 月ヶ瀬温泉「月ヶ瀬」(1000円)
嵯峨沢温泉 入れず
天城峠 峠越え
1187湯目 大滝温泉「天城荘」(1000円)
昼食 「大滝庵」 「ところ天」(400円)
1188湯目 湯ヶ野温泉「かわづ」(500円)
1189湯目 峰温泉「踊り子温泉会館」(1000円)
1190湯目 谷津温泉「薬師の湯」(800円)
1191湯目 河津浜温泉「海浜露天風呂」(混浴の無料湯)
1192湯目 今井浜温泉「サンシップ今井浜」(1000円)
1193湯目 韮山温泉「めおとの湯」(500円)
夕食 韮山温泉「めおとの湯」 「刺身定食」(1000円)
19時45分 大仁温泉「大仁ホテル」(1泊朝食7150円)
1194湯目 大仁温泉「大仁ホテル」
本日の走行距離数 134キロ
本日の温泉入浴数 12湯

湯ヶ島温泉「三吉」の湯こちらは露天風呂「三吉」の朝食

湯ヶ島温泉「三吉」の湯 こちらは露天風呂 「三吉」の朝食

船原温泉「湯治場ほたる」月ヶ瀬温泉「月ヶ瀬」吉奈温泉「さか屋」

船原温泉「湯治場ほたる」 月ヶ瀬温泉「月ヶ瀬」 吉奈温泉「さか屋」

吉奈温泉「東府屋」嵯峨沢温泉「嵯峨沢館」持越温泉「持越温泉」

吉奈温泉「東府屋」 嵯峨沢温泉「嵯峨沢館」 持越温泉「持越温泉」

「持越温泉」の湯吉奈温泉「東府屋」の湯月ヶ瀬温泉「月ヶ瀬」

「持越温泉」の湯 吉奈温泉「東府屋」の湯 月ヶ瀬温泉「月ヶ瀬」

「月ヶ瀬」の湯「月ヶ瀬」の露天風呂「月ヶ瀬」の露天風呂に入る

「月ヶ瀬」の湯 「月ヶ瀬」の露天風呂 「月ヶ瀬」の露天風呂に入る

国道414号の天城峠大滝温泉「天城荘」「天城荘」の湯

国道414号の天城峠 大滝温泉「天城荘」 「天城荘」の湯

「大滝庵」の「ところ天」国道414号のループ橋湯ヶ野温泉「かわづ」の露天風呂

「大滝庵」の「ところ天」 国道414号のループ橋 湯ヶ野温泉「かわづ」の露天風呂

峰温泉「踊り子温泉会館」「踊り子温泉会館」の湯谷津温泉「薬師の湯」

峰温泉「踊り子温泉会館」 「踊り子温泉会館」の湯 谷津温泉「薬師の湯」

谷津温泉「薬師の湯」河津浜温泉「海浜露天風呂」今井浜温泉「サンシップ今井浜」の露天風呂

谷津温泉「薬師の湯」 河津浜温泉「海浜露天風呂」 今井浜温泉「サンシップ今井浜」の露天風呂

「サンシップ今井浜」の露天風呂に入る韮山温泉「めおとの湯」「めおとの湯」の「刺身定食」

「サンシップ今井浜」の露天風呂に入る 韮山温泉「めおとの湯」 「めおとの湯」の「刺身定食」

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