カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[158日目]

投稿日:2018年12月17日

緊急事態、リアタイヤが限界に

九州編 29日目(2007年5月18日)

 出水温泉「薩摩つる乃湯」の朝湯に入る。大浴場と露天風呂。露天風呂には打たせ湯もあり、豪快に流れ落ちている。ここは湯量豊富な温泉。地下タンクの貯湯量は300トンにもなるという。源泉の泉温は46.2度。PH9.2という強アルカリ性のつるつる湯。「つる乃湯」というのは出水のツルとつるつる湯のツルをかけているのだろうか。

 朝湯から上がり、ご飯、味噌汁、玉子焼き、納豆、オニオンスライス、和物、漬物の朝食を食べ、さー、出発だ。

 宿泊代を払って出ようとすると、宿の女将さんは「これ、お昼に食べなさい」といって弁当を手渡してくれるではないか…。昨夜の「おこわ」といい、今朝の「弁当」といい、もう胸がいっぱいになってしまう。

 第1湯目は高尾野温泉の日帰り湯「高尾野温泉センターもみじ」の湯。大浴場は明るい広々とした浴室。露天風呂の湯につかり、白いチェアーに座ると、ウトウトしてしまう。だが、極楽気分もここまで…。

「高尾野温泉センターもみじ」の湯から上がると行動開始だ。

 スズキBandit1250Sのリアタイヤはすでに限界、というよりも限界をはるかに超えている。タイヤはすり減り、中のスチールが見えている。昭文社の桑原さんが調べてくれた出水市内の「オートショップ窪」へ。だがタイヤは取り寄せになり日数がかかってしまうとのこと。さあ、困った。店のオーナーはバンディットのタイヤを見て、「もうどこでバーストしてもおかしくない状態」だという。

 どうしていいのかわからないまま、とりあえずは「温泉だ!」と、第2湯目の国道3号沿いにある舞鶴温泉の湯に入る。大浴場の内風呂のみ。熱めの湯と温めの湯。ほかに入浴客はいない。温めの湯だといくらでも長湯できる。

 温泉に入るといい考えが浮かんだ。
「そうだ!」

 湯につかりながら携帯でスズキ本社の宮本さんに電話した。
「カソリさん、バンディットどうですか?」
「ほんとうにいいバイクですよ。メチャクチャ良く走ります。(発売間もないニューモデルなので)あちこちでみなさんの注目を集めてますよ〜」

 宮本さんとそんな挨拶をかわしたあと、
「ところで宮本さん、今、ちょっとした緊急事態なんですよ。バンディットのリアのタイヤをすぐに交換しなくてはならない状態でして…」
「今、どこですか?」
「鹿児島県に入った出水市です」
「カソリさん、すぐに聞いてみるので、10分ほど待ってください。折り返し、電話しますから」

 携帯電話って、ほんとうに便利だ。温泉の湯につかりながらこれだけのことができてしまう。

 10分もかかららずに宮本さんからの電話。
「鹿児島までは走れますか?」
「なんとかトライしてみます」

 舞鶴温泉の湯から上がると、スズキ本社から電話を入れてくれた鹿児島市内のバイクショップ「バイクフォーラム」を目指して国道3号を走る。

 いつバーストしてもいいように、できるだけ左側を走る。追い抜き、追い越しは一切、しない。もしバーストして吹っ飛んでも、対向車線には絶対に飛び込まないようにと、それだけには気をつかった。

 川内、串木野と通り、南九州道に入る。美山PAで昼食。「薩摩つる乃湯」の女将さんがつくってくれた弁当をあける。中にはおにぎりが3個と玉子焼き、漬物が入っていた。

 無事、鹿児島中央駅前に到着したのは14時。そこからすぐの鹿児島大学通りに面した「バイクフォーラム」に行くと、すぐさまタイヤ交換をしてくれた。ピカピカのタイヤにはきかえたバンディットで鹿児島中央駅前に立ったのは16時。そこから南九州道→国道3号で舞鶴温泉に戻ったのは17時20分だった。

 第3湯目の若宮温泉「龍神の湯」に入る。駐車場にBandit1250Sを止めると、民家の軒先を歩いて通り抜けていく。内風呂と露天風呂。源泉掛け流しの湯。熱めの湯と温めの湯。温めの湯はそのまま露天風呂につながっている。

 阿久根から国道389号で黒之瀬戸大橋を渡り、長島に入っていく。

 第4湯目は太陽の里温泉「東泉望」の湯。大浴場の内風呂のみ。塩分の濃い湯。塩分にはかなりの苦みがある。浴室からの眺めは絶景だ。

 第5湯目は長島温泉「温泉センター椿の湯」。大浴場と露天風呂。

 長島のこれらの2湯に入り阿久根に戻った。

 第6湯目は国道3号沿いの阿久根温泉「クアドーム阿久根」の湯。大浴場と露天風呂。露天風呂では高校生たちが「湯の中談義」の真っ最中。「ヘアスタイル」が話題の中心。そんな話を聞いていると無性にうらやましくなってくる。

「自分にもそういう時代があったなあ…」

 今は(ヘアスタイルなど)どうでもいいのが悲しい…。

 第7湯目は国道3号から3、4キロ、山中に入った川内高城温泉。ここは800年の歴史を持つ古湯。何軒かの温泉宿があるが、そのうち「ホテルまる善」の湯に入った。大浴場と露天風呂。「ジャングル風呂」の大浴場には打たせ湯もある。ひもを引くとダーーーッと湯が流れ落ちる。湯量の多い打たせ湯なので気持ちいい。歩行浴もできる。温泉を使った昔ながらの「蒸し風呂」もある。源泉が56度という高温湯だからこそできる「蒸し風呂」だ。

 川内高城温泉から川内市内へ。

 JR川内駅前の「川内ホテル」に泊まった。さっそく第8湯目、「川内ホテル」に併設されている川内市街地温泉「温泉センター」の湯に入った。大浴場の湯にほっとした気分でつかる。バンディイトのリアタイヤ交換で「鹿児島往復」のあった1日だが、よくぞ8湯もの温泉に入ったと、自分で自分をほめてあげた。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 出水温泉「薩摩つる乃湯」
朝食 出水温泉「薩摩つる乃湯」 ご飯、味噌汁、玉子焼き、納豆、オニオンスライス、和物、漬物
8時30分 出水温泉「薩摩つる乃湯」を出発
1538湯目 高尾野温泉「高尾野温泉センターもみじ」(300円)
1539湯目 舞鶴温泉「舞鶴温泉」(300円)
昼食 南九州道「美山PA」弁当(薩摩鶴の湯の女将さんがつくってくれたもの)
14時  鹿児島中央駅
1540湯目 若宮温泉「龍神の湯」(300円)
1541湯目 太陽の里温泉「東泉望」(300円)
1542湯目 長島温泉「温泉センター椿の湯」(300円)
1543湯目 阿久根温泉「クアドーム阿久根」(400円)
1544湯目 川内高城温泉「ホテルまる善」(300円)
22時10分 川内市街地温泉「川内ホテル」(1泊朝食4200円)
1545湯目 川内市街地温泉「川内ホテル」
夕食 コンビニ弁当
本日の走行距離数 313キロ
本日の温泉入浴数 8湯

出水温泉「薩摩つる乃湯」の朝食「薩摩つる乃湯」を出発高尾野温泉「高尾野温泉センター」

出水温泉「薩摩つる乃湯」の朝食 「薩摩つる乃湯」を出発 高尾野温泉「高尾野温泉センター」

「高尾野温泉センター」の湯舞鶴温泉「舞鶴温泉」「舞鶴温泉」のツバメの巣

「高尾野温泉センター」の湯 舞鶴温泉「舞鶴温泉」 「舞鶴温泉」のツバメの巣

「舞鶴温泉」の湯「薩摩つる乃湯」の女将さんがつくってくれたお弁当鹿児島中央駅前に到着

「舞鶴温泉」の湯 「薩摩つる乃湯」の女将さんがつくってくれたお弁当 鹿児島中央駅前に到着

鹿児島の「バイクフォーラム」のみなさん、ありがとう〜!若宮温泉「龍神の湯」「龍神の湯」の露天風呂

鹿児島の「バイクフォーラム」のみなさん、ありがとう〜! 若宮温泉「龍神の湯」 「龍神の湯」の露天風呂

太陽の里温泉「東泉望」長島温泉「温泉センター椿の湯」阿久根温泉「クアドーム阿久根」

太陽の里温泉「東泉望」 長島温泉「温泉センター椿の湯」 阿久根温泉「クアドーム阿久根」

川内高城温泉「ホテルまる善」

川内高城温泉「ホテルまる善」    

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