カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[178日目]

投稿日:2019年3月19日

しょっぱなから混浴だ

本州東部編 4日目(2007年6月23日)

 湯ノ網温泉「松屋」の朝湯に入り、ご飯、味噌汁、焼魚、煮物、生卵、海苔、漬物、デザートのグレープフルーツの朝食を食べ、9時に出発。だが、しばらくはツバメの巣を見ていた。2つの巣にともに5羽づつのヒナ。「カラスがやってくるたびに追い払っています」と女将さん。全部で10羽のヒナが無事に飛び立てますように!

 国道6号で県境を越え、福島県のいわき市に入る。東北に入ったのだ。勿来漁港の岸壁にDR−Z400Sを停める。

「DRよ、東北に入ったぞ!」

 目の前の岬が関東と東北を分ける鵜ノ子岬。台地の先端が断崖になって海に落ちている。そこには海食洞の大穴があいている。この岬の反対側、つまり南側が「アンコウ漁」で有名な平潟漁港になる。

 第1湯目は白米温泉。常磐道の側道を走り、「白米鉱泉つるの湯」に入る。東北はしょっぱなから混浴だ。小さな湯船にはおじいちゃんとおばあちゃん、それと中年婦人の3人が入っていた。ぼくはおじいちゃんと中年婦人の間の隙間に割り込ませてもらった。すぐ隣の中年婦人とは肩を寄せ合うような格好になるので肌がふれそう…。見てはいけないと思いつつ、どうしても中年婦人のきれいな形をした胸に目がいってしまう。無色透明の湯で、身を堅くし、動かずにじっとして湯につかった。

 第2湯目は川部温泉「川部鉱泉」の湯。宿に主人は「奥の方が少し広いから」といって、奥の「女湯」に入りなさいという。ここでは混浴ではなかったものの、東北には男、女の垣根を越えた自由さがある。「私は混浴の方が好き」という若い東北人女性の声を聞いたこともある。このあたりが男は男、女は女といった高い垣根の西日本との大きな違いだと、ぼくはそう思っている。それが「個人重視」の東日本と「社会重視」の西日本の違いにもつながっている。

 第3湯目は下川温泉「下川の湯」。ここは一軒宿「田辺旅館」の湯で、ちょっとわかりにくく、探してしまった。無色透明のこじんまりとした湯につかった。

 第4湯目はカンチ山温泉「富士屋旅館」の湯。小さな湯船。若干の濁り湯。

 第5湯目は原木田温泉「松扇」の無色透明の湯。

 小名浜漁港へ。魚市場内の「市場食堂」で昼食にするつもりだったが、満員で入れなかった。団体さんが入ったようだ。そこで道をはさんだ反対側の「あさひや食堂」に入る。これが大正解。すでに暖簾が下ろされ、店を閉めるところだったが、女将さんは「一人ならいいわよ」といってくれた。「煮魚定食」を食べた。ドンコの煮魚。これが抜群のうまさ。市場に上がったばかりの鮮度の良さもあるが、煮方がじつに上手なのだ。味噌汁はカツオのあら汁。それに塩辛がついている。これで550円。あまりのうまさに大盛りの丼飯をおかわりした。すると女将さんは「これはサービスよ」といってカツオのあらの煮付けを出してくれた。その煮付けがまた超美味。小名浜は銚子以上にカツオのうまい町。ぼくは小名浜は「日本で一番カツオのうまい町」だと思っている。

 さー、いわき市内の温泉めぐり、後半戦の開始だ。

 第6湯目は神白温泉「国元屋」の湯。無色透明の湯で源泉は12・5度。湯船の湯は高めに設定されている。熱くて入れなかったので、蛇口の水を入れたが、これが源泉だ。

 第7湯目は地切温泉「松屋」の湯。無色透明の湯で、浴室からは緑ゆたかな庭園を眺める。

 いわきニュータウンに隣接している吉野谷温泉へ。一軒宿「吉野谷鉱泉」の一角だけが深山幽谷の地を思わせるような自然に囲まれている。なんとも不思議な世界。ここに到着したのは16時45分。16時から18時までは女性タイムで入れない。そこで急きょ、「吉野谷鉱泉」で泊まることにした。

 宿の主人としばらくは立ち話。大学を卒業すると、6年間も世界を放浪した方。1970年に中国各地をまわっている。当時としてはそう簡単なことではなかった。そんなすごい宿の主人に「9時半ぐらいまでには戻ってきますから」といって「吉野谷鉱泉」を出発した。

 ここからは、いわき市北部の温泉群をめぐる。

 第8湯目は玉山温泉「玉屋旅館」。小さな湯船の無色透明の湯につかる。ここにはほかに2軒の宿がある。次の白岩温泉「金波旅館」の湯には残念ながら入れなかった。今日は客がいないので湯を入れていないという。

 第9湯目は谷地温泉「石川屋」の湯。ここでは4人の入浴客と一緒になった。小さな湯船で、4人の入浴客の中に割り込ませてもらった。

 第10湯目は久の浜温泉「たきた館」の湯。石造りで木枠の湯船には気持ちよく入れた。洗い場も石造り。湯船と同じ石を使っている。

 第11湯目は入間沢温泉「叶屋旅館」の湯。ここは内風呂のみで、こじんまりとした湯船につかった。国道6号に出ると、いわき蟹洗温泉「太平洋健康センター」に行ったが、ここは入浴料が1000円以上なのでパスした。

 第12湯目は四倉舞子温泉「よこ川荘」。若干の色つき湯。ミネラル分の濃い湯だ。湯から上がると、すぐ近くのレストラン「時計台」で夕食にする。サラダとドリンクつきの「スパゲティーセット」を食べ、21時20分、吉野谷温泉「吉野谷鉱泉」に戻った。梅雨の真っ最中だというのに、今日は最後の最後まで秋晴れを思わせるような晴天がつづいた。

 第13湯目の吉野谷温泉「吉野谷鉱泉」の「宿湯」につかっていると、昭文社の桑原さんから携帯に電話。「カソリさん、昨日はあんまりにも辛そうだったので、私が青空を送っておきましたよ!」という。桑原さん、青空をありがとう!

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 湯ノ網温泉「松屋」
朝食 湯ノ網温泉「松屋」 ご飯、味噌汁、焼魚、煮物、生卵、海苔、漬物、デザートのグレープフルーツ(部屋食)
9時 湯ノ網温泉「松屋」を出発
福島県に入る
鵜ノ子岬
勿来温泉「関の湯」(1000円超)
1785湯目 白米温泉「白米鉱泉つるの湯」(500円)
1786湯目 川部温泉「川部鉱泉」(500円)
1787湯目 下川温泉「下川の湯」(500円)
1788湯目 カンチ山温泉「富士屋旅館」(400円)
1789湯目 原木田温泉「松扇」(500円)
昼食 「あさひや食堂」の「煮魚定食」(550円)
1790湯目 神白温泉「国元屋」(500円)
1791湯目 地切温泉「松屋」(500円)
1792湯目 玉山温泉「玉屋旅館」(500円)
白岩温泉「金波旅館」(休業)
1793湯目 谷地温泉「石川屋」(300円)
1794湯目 久の浜温泉「たきた館」(500円)
1795湯目 入間沢温泉「叶屋旅館」(500円)
いわき蟹洗温泉「太平洋健康センター」(1000円超でパス)
1796湯目 四倉舞子温泉「よこ川荘」(400円)
夕食 「レストラン時計台」の「スパゲティーセット」(780円)
21時20分 吉野谷温泉「吉野谷鉱泉」(1泊朝食4500円)
1797湯目 吉野谷温泉「吉野谷鉱泉」(1泊朝食4500円)
本日の走行距離数 159キロ
本日の温泉入浴数 13湯

湯ノ網温泉「松屋」の朝食「松屋」のツバメの巣と雛勿来漁港

湯ノ網温泉「松屋」の朝食 「松屋」のツバメの巣と雛 勿来漁港

勿来漁港の漁船関東との境の一帯白米温泉「白米鉱泉つるの湯」

勿来漁港の漁船 関東との境の一帯 白米温泉「白米鉱泉つるの湯」

川部温泉「川部鉱泉」「川部鉱泉」の湯下川温泉「下川の湯」

川部温泉「川部鉱泉」 「川部鉱泉」の湯 下川温泉「下川の湯」

「下川の湯」の浴室カンチ山温泉「富士屋旅館」への道「富士屋旅館」の湯

「下川の湯」の浴室 カンチ山温泉「富士屋旅館」への道 「富士屋旅館」の湯

「富士屋旅館」の湯に入る原木田温泉「松扇」の湯小名浜漁港

「富士屋旅館」の湯に入る 原木田温泉「松扇」の湯 小名浜漁港

「あさひや食堂」の「煮魚定食」神白温泉「国元屋」「国元屋」の湯

「あさひや食堂」の「煮魚定食」 神白温泉「国元屋」 「国元屋」の湯

地切温泉「松屋」玉山温泉「玉屋旅館」「玉屋旅館」の湯

地切温泉「松屋」 玉山温泉「玉屋旅館」 「玉屋旅館」の湯

久の浜温泉「たきた館」「たきた館」の湯入間沢温泉「叶屋旅館」

久の浜温泉「たきた館」 「たきた館」の湯 入間沢温泉「叶屋旅館」

「叶屋旅館」の湯四倉舞子温泉「よこ川荘」の湯「レストラン時計台」の「スパゲティーセット」

「叶屋旅館」の湯 四倉舞子温泉「よこ川荘」の湯 「レストラン時計台」の「スパゲティーセット」

吉野谷温泉「吉野谷鉱泉」

吉野谷温泉「吉野谷鉱泉」    

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