カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[189日目]

投稿日:2019年5月5日

「おしょっさまでねす」

本州東部編 15日目(2007年7月4日)

 東鳴子温泉「初音旅館」では、先に帰る「TAKAさん」を見送った。雨の降る中、スズキハスラー50は2サイクル特有のかん高いエンジン音を残して走り去っていった。そのあとで朝湯に入り、ご飯、味噌汁、目玉焼き、イカのリング、青菜のおひたし、ナス、サラダ、海苔、漬物の朝食をいただいた。

 9時30分、東鳴子温泉「初音旅館」を出発。女将さんは「おしょっさまでねす」(ちょっと恥ずかしいものですが)と古川弁でいいながら、お弁当の「おにぎり」を手渡してくれる。「おしょっさまでねす」をきっかけに、玄関前でひとしきり古川の話で盛り上がった。1市7町が合併して大崎市になったが、もともと「大崎耕野」とか「大崎耕土」といった言葉があったという。肥沃な古川平野をいい表した言葉。「大崎市」というと、ぼくなどは「えー、何で大崎なの?」と思ってしまうが、地元のみなさんにはそれほどの違和感はないようだ。

 東鳴子温泉「初音旅館」の女将さんは古川生まれの古川育ち。生粋の「古川人」だ。古川の女学校を出たあと東京の大学へ。先日は「初音旅館」で大学時代の同窓生が集まり、2夜連続の宴会になったという。女将さんはそのときのことをじつに楽しそうに話してくれた。女将さんのキラキラ輝く青春時代の一端にふれたような気がした。

 そんな女将さんと若旦那に見送られて、今度はほんとうの出発だ。若旦那は道路上に仁王立ちになり、雨に濡れながら大きく手を振ってくれている。

「また、来ますよ〜!」

 国道47号→国道457号→国道398号で花山峠に向かっていく。

 第1湯目は花山温泉「温湯山荘」。ここまで雨に降られっぱなしだったので、大浴場の湯につかったときは生き返るような思いがした。つづいて半円形の露天風呂に入った。

 第2湯目は温湯温泉「佐藤旅館」の湯。明治、大正の面影を今に伝える木造の温泉宿。大浴場の大岩風呂は混浴だ。脱衣所は男女別で中で一緒になる。それとは別に、女性専用の浴室もある。男性専用はない。次に男女別の露天風呂に入る。大浴場、露天風呂ともに源泉掛け流し。泉質自慢の温湯温泉だ。

 第3湯目は湯ノ倉温泉。バイクを停め、橋を渡って山道を20分ほど歩いていくと、一軒宿の「湯栄館」に到着。「初音旅館」の女将さんがつくってくれた「おにぎり」を食べ、腹ごしらえをしてから、一迫川の渓流沿いの大露天風呂に入った。混浴の湯だが、入浴客はぼく一人。熱湯が流れ込んでいる方は熱くて入れない。その反対側のすこし温めの方に入った。ここの源泉は63.4度。高温湯だ。湯につかりながら眺める渓流美がすばらしい。

 第4湯目は湯浜温泉。国道398号で湯浜峠を越えたところでバイクを駐車場に停め、山道を歩いて「三浦旅館」へ。そこで入浴料を払い、渓流沿いの露天風呂に入った。湯から上がると、宮城・秋田県境の花山峠へ。「峠返し」で折り返し、来た道を引き返した。

 第5湯目は山武温泉の日帰り湯「さくら湯」。大浴場と露天風呂はともに濁り湯。温めの露天風呂に長湯した。

 温泉めぐりの舞台を栗駒山の山中に移す。

 第6湯目はくりこま高原温泉「ハイルザーム栗駒」。大浴場と小さめな湯船の露天風呂に入る。

 第7湯目は新湯温泉「くりこま荘」の湯。ここは木の湯船に木の洗い場。露天風呂もある。若干、白濁した湯の色。ここを最後に宮城県から岩手県に入った。

 第8湯目は、はぎのしょう温泉「はぎのしょう温泉」の湯。国道457号を左折し、最後は林道に入っていく。「ほんとうにこの先に温泉があるのだろうか…」と不安にかられたようなところに温泉がある。森林を抜け出ると、パッと明かりが目に飛び込み、「助かった!」と、思わず声が出た。日帰り湯「はぎのしょう温泉」の大浴場の湯につかった。

 一関に到着すると、一関ICから東北道に入る。すさまじい雨をついてDRのエンジン全開で突っ走る。

 一気に紫波ICへ。そこから山裾の道を北上する。

 第9湯目は不動温泉の日帰り湯「百万石」の湯。ここは22時で営業終了。ぼくが着いたのは21時50分。こういう場合、普通だったら「もう、終わりましたよ」といわれるものだが、受付の女性は「10時10分までに出てくればいいですよ」とじつに鷹揚。これが東北だ。東北はほんとうにいい。いたるところで人のやさしさ、あたたかさに触れられる。受付の女性にいわれた通り、ギリギリの時間まで、円形の湯船につかった。肌があっというまにすべすべになるツルツル湯だ。

 受付の女性によ〜くお礼をいって、ふたたび雨の中を走る。「百万石」から10分ほど走ると今晩の宿、矢巾温泉の「矢巾温泉ヘルスセンター」に到着だ。最後の最後まで雨に降られた一日。というよりも最後は一段と激しい雨になっていた。それだけに第10湯目の「宿湯」は身にしみてありがたかった。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 東鳴子温泉「初音旅館」
朝食 東鳴子温泉「初音旅館」 ご飯、味噌汁、目玉焼き、イカのリング、青菜のおひたし、ナス、サラダ、海苔、漬物
9時30分 東鳴子温泉「初音旅館」 出発
1902湯目 花山温泉「温湯山荘」(500円)
1903湯目 温湯温泉「佐藤旅館」(500円)
1904湯目 湯ノ倉温泉「湯栄館」(500円)
昼食 湯ノ倉温泉「湯栄館」 おにぎり(初音旅館の女将さんがつくってくれた)
湯浜峠(峠越え)
1905湯目 湯浜温泉「三浦旅館」(500円)
花山峠(峠返し)
1906湯目 山武温泉「さくらの湯」
文字温泉(入浴のみ不可)
1907湯目 くりこま高原温泉「ハイルザーム栗駒」(800円)
駒の湯温泉(休業中)
1908湯目 新湯温泉「くりこま荘」(500円)
田代温泉(廃業湯)
岩手県に入る
1909湯目 はぎのしょう温泉「はぎのしょう温泉」(400円)
1910湯目 不動温泉「百万石」(500円)
22時20分 矢巾温泉「矢巾温泉ヘルスセンター」(1泊朝食4665円)
1911湯目 矢巾温泉「矢巾温泉ヘルスセンター」
本日の走行距離数 302キロ
本日の温泉入浴数 10湯

東鳴子温泉「初音旅館」の朝湯に入る「初音旅館」の朝食「初音旅館」を出発

東鳴子温泉「初音旅館」の朝湯に入る 「初音旅館」の朝食 「初音旅館」を出発

花山温泉「温湯山荘」の湯温湯温泉「佐藤旅館」の湯「佐藤旅館」の露天風呂

花山温泉「温湯山荘」の湯 温湯温泉「佐藤旅館」の湯 「佐藤旅館」の露天風呂

一迫川の渓流湯ノ倉温泉「湯栄館」初音旅館の女将さんがつくってくれたおにぎり

一迫川の渓流 湯ノ倉温泉「湯栄館」 初音旅館の女将さんがつくってくれたおにぎり

湯ノ倉温泉「湯栄館」の露天風呂湯浜温泉「三浦旅館」の露天風呂花山峠での折り返し(峠返し)

湯ノ倉温泉「湯栄館」の露天風呂 湯浜温泉「三浦旅館」の露天風呂 花山峠での折り返し(峠返し)

くりこま高原温泉「ハイルザーム栗駒」の湯新湯温泉「くりこま荘」の湯はぎのしょう温泉「はぎのしょう温泉」の湯

くりこま高原温泉「ハイルザーム栗駒」の湯 新湯温泉「くりこま荘」の湯 はぎのしょう温泉「はぎのしょう温泉」の湯

不動温泉「百万石」の湯矢巾温泉「矢巾温泉ヘルスセンター」で湯上りに食べた魚肉ソーセージ

不動温泉「百万石」の湯 矢巾温泉「矢巾温泉ヘルスセンター」で湯上りに食べた魚肉ソーセージ  

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