カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

温泉めぐり日本一周[257日目]

投稿日:2020年1月24日

知床半島の湯めぐり

北海道編 33日目(2007年9月22日)

 標津温泉「ホテル楠」の朝湯に入る。大浴場の内風呂のみ。中央に楕円形の大風呂がある。無色透明のツルツル湯にどっぷりつかる。朝湯から上がるとご飯、味噌汁、サンマの塩焼き、イクラ、目玉焼き、煮物、佃煮、トウモロコシ、青菜の朝食を食べ、8時30分に出発だ。

 標津からは国道244号で根北峠に向かっていく。平原から山地に入ったあたりで国道を左折し、笹の沢林道で第1湯目の川北温泉へ。カーブを曲がったところで道を横切る2頭の熊と遭遇。一瞬、心臓が凍りついたが、2頭の熊はそれ以上に驚いたような仕草で、そそくさと渓流沿いの茂みの中に消えた。2頭とも子熊のようだった。

 笹の沢林道を5キロほど走ると、川北温泉に到着。森林の中にポツンと湯屋がある。男女別の露天風呂でうれしい無料湯。さっそく湯につかる。白濁色の硫黄泉。「川北温泉愛好会」のみなさんがきれいにしてくれているので、じつに気持ちよく入れた。

 国道244号に戻ると、さらに根北峠に向かって走り、今度は国道を右折。金山薫別林道で知床半島に入っていく。第2湯目の薫別温泉に向かったが、さきほどの笹の沢林道よりもっと熊が出そう…。DRを停めて写真を撮るときなどは、いつでも逃げられるようにエンジンをかけたままにした。だが幸い熊に出会うことなく、11.3キロのダートを走り切り、薫別温泉に到着した。

 薫別温泉はまったく人気のない深山幽谷の地にある。知床半島一番の秘湯だ。道の行き止まり地点にDRを停め、崖の小道を滑り落ちるようにして下り、薫別川の岩棚の露天風呂へ。熱湯が岩壁から流れ出ている。岩棚の露天風呂に入ろうとしたが、火傷しそうな湯の熱さ。前の年に来たときはポリバケツが置いてあったのだが…。今回はない。さー、困った。入らないでスゴスゴ立ち去ることは絶対にできない。

「よし、やろう!」
 と腹を決めた。

 湯船のふちに速報用の写真を撮る携帯を置き、瞬間勝負で湯に入った。

「アチチチチチチチチチチッ!!!」

 まさに熱湯地獄。携帯で写真を撮るまでの数秒間、懸命になって歯をくいしばって湯につかった。「300日3000湯」は難行苦行の連続だが、その中でも一、二の難行といっていい。湯から上がると体は真っ赤。それでも火傷することはなかった。

 国道335号に出ると、羅臼へ。根室海峡の水平線に横たわる国後島が大きく見える。この国後島を見るのが「カブタン指令」の第11号。天気が良くてよかった。

 羅臼からはそのまま国後島を見ながら走り、瀬石のセセキ温泉へ。だが入浴できるのは9月15日までだとのことで、残念ながら入れなかった。ここは個人の私有地。まあ、仕方ないか…。

 第3湯目は相泊温泉。湯屋が取り払われ、露天風呂だけが海岸にとり残されたようにあった。湯温はジャスト適温。湯から上がると、道の行き止まり地点の食堂「熊の穴」で昼食。トド肉の「焼肉定食」を食べた。ここでは熊肉料理や鹿肉料理も食べられる。

 羅臼に戻ると、国道334号で知床峠へ。

 第4湯目は羅臼温泉。「らうす第一ホテル」の湯に入る。大浴場の2つの湯船はともに熱めの湯。ここの源泉は85.0度という高温湯。露天風呂もあるが、ともに無色透明の湯。

 第5湯目は知床峠下の熊の湯温泉「熊の湯」。男女別の露天風呂。脱衣所の「寄付金箱」に200円を入れて入った。かなり熱めの湯。我慢、我慢、我慢で入った。

 知床峠を越え、根室海峡側からオホーツク海側に出る。国道334号を右折し、カムイワッカ方面へ。その道から3、4キロほど行ったところに第6湯目の岩尾別温泉。ここには一軒宿「地の涯ホテル」があるが、宿の湯ではなく、森の湯には無料で入れる。混浴の露天風呂。3段になって流れ落ちているが、上は熱く、下は温い。このあとカムイワッカ湯の滝に向かったが、すでに冬期閉鎖で通行止だった。残念…。

 国道334号に戻り、プユニ岬でオホーツク海を眺める。ウトロの街並み、漁港もよく見える。

 第7湯目はウトロ温泉。「国民宿舎桂田」の湯に入る。内風呂と露天風呂。ともににごり湯で塩分が濃い。

 ウトロから国道334号で斜里へ。その途中の川の河口では、何人もの釣人が群がっていた。登ってくるカラフトマスを釣っているのだ。そんな釣人の間をすり抜けてカラフトマスが登っていくと、ギャラリーの見物人たちは盛大な拍手を送った。

 第8湯目のウナベツ温泉「ウナベツ自然休養村管理センター」の湯に入る。ここは内風呂のみ。若干の濁り湯でかすかな味がする。

 知床半島の温泉めぐりを終えると、斜里の町に入っていく。

 斜里から国道244号で根北峠へ。斜里岳を見ながら夕暮れの道を走る。

 第9湯目は越川温泉。越川の集落を過ぎた先の国道沿いにある。入口の料金箱に200円を入れる。すでに日は落ち、暗かった。電気はついていない。手探りで浴室まで行き、湯に入った。しばらくすると、車が1台やってきて、そのあとで電気がついた。ここには電源がない。車のバッテリーに接続すると明かりがつくのだ。やってくる車が電源の役目を果たすというのが「越川ルール」。日本にはこういう温泉もある。ここは個人所有の温泉で、「越川老人会」が管理しているという。塩分を含んだにごり湯。なかなかのいい湯だ。

 第10湯目は斜里の町中のグリーン温泉。ここは宿泊もできるとのことで、部屋も空いていた。今晩の宿をここにし、部屋に荷物を置くと、すぐさま湯に入る。湯から上がるとDRにまたがり、夜の温泉めぐりに出発。

 第11湯目は斜里温泉「湯元館」の湯。ここはモール泉のツルツル湯。

 第12湯目は清里温泉「緑清荘」の湯。ここは大浴場の内風呂のみで、ワサワサとかなり混みあっていた。

 こうして2湯に入るとグリーン温泉に戻り、再度、「宿湯」に入るのだった。

本日のデータ 料金等は当時のものです
朝湯 標津温泉「ホテル楠」
朝食 標津温泉「ホテル楠」 ご飯、味噌汁、サンマの塩焼き、イクラ、目玉焼き、煮物、佃煮、トウモロコシ、青菜
8時30分 標津温泉「ホテル楠」を出発
2685湯目 川北温泉「川北温泉」(無料)
2686湯目 薫別温泉「薫別温泉」(無料)
セセキ温泉(その他)
2687湯目 相泊温泉「露天風呂」(無料)
昼食 相泊温泉「熊の穴」トド焼肉定食(1350円)
2688湯目 羅臼温泉「らうす第一ホテル」(500円)
2689湯目 熊の湯温泉「熊の湯」(200円)
知床峠(峠越え)
2690湯目 岩尾別温泉「森の湯」(無料)
2691湯目 ウトロ温泉「国民宿舎 桂田」(500円)
オシンコシンの滝
2692湯目 ウナベツ温泉「ウナベツ自然休養村管理センター」(300円)
2693湯目 越川温泉「越川温泉」(200円)
2694湯目 グリーン温泉「グリーン温泉」
2695湯目 斜里温泉「湯元館」(400円)
2696湯目 清里温泉「緑清荘」(380円)
20時45分 グリーン温泉「グリーン温泉」(1泊朝食5000円)
夕食 コンビニ弁当
本日の走行距離数 302キロ
本日の温泉入浴数 12湯

標津温泉「ホテル楠」の朝湯に入る「ホテル楠」の朝食を食べる「ホテル楠」を出発

標津温泉「ホテル楠」の朝湯に入る 「ホテル楠」の朝食を食べる 「ホテル楠」を出発

標津から国道244号を北へ川北温泉への笹の沢林道。この先で熊に出会う金山薫別林道で薫別温泉に向かう

標津から国道244号を北へ 川北温泉への笹の沢林道。この先で熊に出会う 金山薫別林道で薫別温泉に向かう

薫別川の渓流薫別温泉の露天風呂根室海峡越しに国後島を見る

薫別川の渓流 薫別温泉の露天風呂 根室海峡越しに国後島を見る

セセキ温泉から見る国後島相泊温泉「熊の穴」の「トドの焼肉」羅臼温泉「らうす第一ホテル」の大浴場

セセキ温泉から見る国後島 相泊温泉「熊の穴」の「トドの焼肉」 羅臼温泉「らうす第一ホテル」の大浴場

熊の湯温泉「熊の湯」国道334号で知床峠を登っていく知床峠から見る羅臼岳

熊の湯温泉「熊の湯」 国道334号で知床峠を登っていく 知床峠から見る羅臼岳

知床峠から見下ろす国後島知床峠を下っていくとオホーツク海が見えてくる岩尾別温泉「ホテル地の涯」

知床峠から見下ろす国後島 知床峠を下っていくとオホーツク海が見えてくる 岩尾別温泉「ホテル地の涯」

岩尾別温泉「森の湯」カムイワッカ湯の滝への道は冬期閉鎖で通行止ウトロの町

岩尾別温泉「森の湯」 カムイワッカ湯の滝への道は冬期閉鎖で通行止 ウトロの町

ウトロ温泉「国民宿舎 桂田」「国民宿舎 桂田」の湯オシンコシンの滝

ウトロ温泉「国民宿舎 桂田」 「国民宿舎 桂田」の湯 オシンコシンの滝

夕食のコンビニ弁当

夕食のコンビニ弁当    

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