カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

ジクサー150分割日本一周[88]

投稿日:2020年9月10日

九州一周編 36(2017年4月24日)

噴煙を上げる阿蘇

 高森峠から高森の町に戻ると、国道325号で南阿蘇を行く。

 国道の左側には「阿蘇大御神御足跡石」が祀られている。阿蘇大御神というのは、阿蘇神社の祭神の健磐龍(たけいわたたつ)命のことだ。その案内板には次のように書かれている。

 この巨石は、江戸時代に編纂された肥後国誌に「白川乾藪堂ト云所ニ、阿蘇大御神ノ御足形ト云石アリ」と記され、この記録には「是ハ四十五尺計ノ石ニ、両足揃テ深サ六、七歩アリ雨天ノ節水溜ル事ナシ、不浄ノ人近ク寄レバ祟アルト云」と記されている。

 この岩には健磐龍命の足跡のほかに鍬の跡もある。いかにも阿蘇を開いた健磐龍命らしい。岩の正面には「日の丸現象」の部分がある。前日に雨が降って、翌日晴れた日には、日の丸の現象が見られるという。今でも肥後の守護神の健磐龍命だ。

高森から国道325号を行く南阿蘇の風景これが「阿蘇大御神御足跡石」

高森から国道325号を行く 南阿蘇の風景 これが「阿蘇大御神御足跡石」

 つづいて、国道325号の南側にある吉見神社へ。境内の「白川水源」を見る。毎分60トンという膨大な水量の湧水だ。流れ出したところから、かなりの水量の川になる。周辺にはほかにも、いくつもの阿蘇の湧水群がある。

 白川は阿蘇五岳一番東の根子岳(1408m)を源にしている。白川水源などの阿蘇の湧水を集めて大きな流れになり、立野の阿蘇外輪山の割れ目で黒川を合わせ、熊本平野から島原湾へと流れ出る。

白川水源の吉見神社にやってきた吉見神社を参拝吉見神社の境内から湧き出る白川水源

白川水源の吉見神社にやってきた 吉見神社を参拝 吉見神社の境内から湧き出る白川水源

 下流には三角州をつくっているが、この広大な三角州の開発には加藤清正が大きくかかわった。肥後人は今でも戦国武将の加藤清正が大好きで、清正などと呼び捨てにはしないで「清正公」というと、熊本城や二重峠のところで言ったが、城下町を「熊本」と命名したのも清正だ。

噴煙を上げる阿蘇山

噴煙を上げる阿蘇山

「40代編日本一周」(1989年)の時の阿蘇山の噴火

「40代編日本一周」(1989年)の時の阿蘇山の噴火

 国道325号を右折し、阿蘇登山道路で中央火口丘の阿蘇五岳を登っていく。火の山トンネルを抜けると、噴煙を上げる中岳を見る。噴煙は雲と見間違えるかのような白煙だ。

 阿蘇の噴煙は何度か見ているが、我が「40代編日本一周」(1989年)の時の噴煙はすごかった。阿蘇神社奥宮の阿蘇山上神社まで登ったが、まるで石油タンクが爆発したかのような黒煙を噴き上げていた。そこから中岳の火口にはロープウェーが出ているし、登山道もあるがすべてストップ。その先は「立入禁止」になっていた。

 それを無視して2人の外国人旅行者が火口へと登っていった。ぼくもいったんは「行こう!」と思ったのだが、どうしても足が前に出なかった。「立入禁止」を無視するのがいやだったからではなく、噴煙があまりにもすさまじかったからだった。今、この瞬間に「ドカーン!」という大音響とともに、阿蘇山が大爆発を起こしそうな恐怖感にかられた。それにしても、とてつもない火山灰の降り方だった。ザラザラ音をたてて降ってきた。「日本一周」の50ccバイクのスズキ・ハスラー50も、ぼくの体も灰まみれになった。口の中が火山灰でジャリジャリしてくるほどだった。そんな阿蘇の思い出が鮮やかによみがえってくる。

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