カソリング

生涯旅人、賀曽利隆の旅日記 60代編

ジクサー150分割日本一周[97]

投稿日:2020年9月28日

九州一周編 45(2017年4月26日)

日本の中の独立国「薩摩」

鹿児島中央駅前を出発

鹿児島中央駅前を出発

鹿児島の夜明け

鹿児島の夜明け

照国神社前交差点の国道終点の碑

照国神社前交差点の国道終点の碑

照国神社の鳥居

照国神社の鳥居

照国神社を参拝

照国神社を参拝v

照国神社前の交差点から国道10号を行く

照国神社前の交差点から国道10号を行く

国道58号の起点に建つ西郷隆盛像

国道58号の起点に建つ西郷隆盛像

鶴丸城址

鶴丸城址

城山の展望台から見る桜島

城山の展望台から見る桜島

 4月26日5時30分、鹿児島中央駅東口の「東横イン」を出発。今日からは「九州一周」の後半戦で、鹿児島から宮崎、大分経由で北九州へ。北九州からは出発点の東京を目指す。「九州一周」前半戦の「東京→鹿児島」は2439キロだった。

「さー、行くぞ!」
 と、ジクサー150にひと声かけて走り出す。「九州一周」の後半戦の開始だ。

 鹿児島中央駅前から市電の通りを走り、国道225号経由で照国神社前のT字の交差点へ。ここは南九州の十字路だ。九州の二大幹線の国道3号と国道10号の終点で、枕崎が起点の国道225号もここが終点になる。交差点の角には国道の終点碑が建っている。

 照国神社を参拝すると、照国神社前の交差点から国道10号を行く。次の交差点は国道10号と国道58号の分岐点になる。国道58号は西郷隆盛の銅像の建つこの交差点から鹿児島港へ。鹿児島港からは種子島、奄美大島を縦貫して沖縄本島につづいている。那覇の明治橋が終点になる。

 国道58号の起点になる交差点を過ぎると、鶴丸城址の前を通る。背後の山が城山だ。

 鶴丸城は薩摩藩77万石、島津氏270年の居城。城跡の擬宝珠のついた石橋や苔むした石垣に、加賀藩に次ぐ日本第2の大藩の面影を見る。城山は明治10年(1877年)の西南戦争最後の戦場。すさまじい激戦を今に伝えるかのように、城跡の石垣には無数の弾痕が残っている。西南戦争での敗戦は、薩摩に致命的な打撃を与えた。

 薩摩は日本の中の独立国のようなものだった。古代薩摩人の熊襲や隼人は、大和朝廷に頑強に抵抗しつづけた。勇猛果敢な熊襲や隼人の血はその後の薩摩人に脈々と受け継がれた。薩摩の独立性の強さは、「島津」という大名が鎌倉時代以降、700年間もこの地を治めたことによってさらに強まった。薩摩の島津氏のような例はほかにはない。

 関東武士の島津氏が鹿児島に入ったのは、5代目、貞久の時代。興国4年(1343年)のことだった。このときから鹿児島の城下町としての歴史がはじまる。最初は東福寺城を居城にした。次いで清水城に移った。6代目、貴久の時代に内城(今の鹿児島駅の北側あたり)に移った。

 慶長5年(1600年)の関ヶ原合戦での敗退後、18代目、家久の時代に城山を背にする鶴丸城を築いた。慶長7年(1602年)のことで、城中は本丸と二ノ丸に分かれ、天守閣のない質素な館造りの城だった。

「人をもって城となす」

 この言葉どおり、領内各地に外城と呼ぶ支城を設け、また中世以来の島津独特の郷士制度で薩摩国内に堅固な防衛線を引いた。

 薩摩藩の国境警備は厳重を極めた。

 鎖国をしていた日本にあって、さらにその中で鎖国しているようなものだった。

 関ヶ原で敗れた島津氏はその後、外様大名として徳川幕府からはさんざんに苦しめられた。その反面、薩摩は南の海に開けた国なので、琉球や中国、南方諸国との密貿易を盛んにおこない、それによって得た莫大な利益で密かに国力を強めていった。

「薩摩」の名を全国にとどろかすのは幕末のことだ。徳川に対する270年の怨みを一気に晴らすかのように、長州と手を組んで倒幕の道を突っ走り、ついに明治新政府を樹立する。「薩摩人でなければ人にあらず」といった日の出の勢いだった。

 しかし西郷隆盛ひきいる鹿児島士族の反政府戦争の西南戦争での敗戦が、薩摩に壊滅的な打撃を与えてしまった。西郷隆盛を総大将とする薩摩軍は熊本の田原坂で政府軍と激突し、そこで大敗を喫してしまう。そのあと九州山地の山中を鹿児島まで敗走し、城山が西郷隆盛ら薩摩志士の終焉の地になった。勇猛果敢で有能な薩摩人は根こそぎ葬られ、この時点をもって、独立国・薩摩の歴史に幕が下りた。

 鶴丸城址を歩いたあと城山に登った。

 城山は鹿児島の町にせり出したシラス台地の先端で、高さ108メートルの小山。展望台からは鹿児島の町並みを見下ろし、噴煙を上げる桜島を眺める。桜島はなんともすごいのだが、40年前の「日本一周」のときも、30年前の「日本一周」のときも、20年前の「日本一周」のときも、10年前の「日本一周」のときも、噴煙を上げていた。

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