第92回 南蔵王・不忘山林道
投稿日:2011年4月14日
2010年 林道日本一周・東日本編
桃源郷「赤湯」から20キロ超のロングダートを目指す
米沢から国道13号で赤湯(南陽市)へ。この米沢盆地の豊かな風景を見て、イギリス人の女性旅行家イサベラ・バードは、「ここはアジアのアルカディア(桃源郷)だ」といっている。
イサベラ・バードが日本にやってきたのは明治11年(1878年)。47歳のときのことだった。
彼女は次のように書いている。
米沢平野は南に繁栄する米沢の町があり、北には湯治客の多い温泉場の赤湯があり、まったくエデンの園である。「鋤で耕したというよりも鉛筆で描いたように」美しい。米、綿、とうもろこし、煙草、大豆、茄子、くるみ、水瓜、きゅうり、柿、杏、ざくろを豊富に栽培している。実り豊かに微笑する大地であり、アジアのアルカディア(桃源郷)である。自力で栄えるこの豊沃な大地は、すべて、それを耕している人々の所有するところのものである。彼らは、葡萄、いちじく、ざくろの木の下に住み、圧迫のない自由な暮らしをしている。これは圧政に苦しむアジアでは珍しい現象である。
(『日本奥地紀行』平凡社)
米沢盆地にやってくるたびに、このイサベラ・バードの「アジアのアルカディア」が頭に浮かぶ。
赤湯温泉のある赤湯からは、ゆるやかな峠を越えて上山へ。米沢盆地から山形盆地に入ったのだ。
上山ではまず「最上三十三ヵ所」の第10番札所、上山観音を参拝し、その下にある上山温泉の共同浴場「下大湯」(入浴料150円)に入った。「下大湯」は人気の共同浴場。いつもは何人もの人たちが入っているが、今日はたまたま自分1人。大浴場の湯にゆったり気分でつかった。
上山からは県道263号を行く。国道13号を横切り、奥羽山脈の山並みに向かって一気に突き進んでいく。最後の萱平を過ぎると南蔵王林道のダートに突入。そこは国道13号から12・3キロの地点。比較的よく整備されたダートを走り、奥羽山脈の舟引山(1172m)山頂直下の峠に向かって登っていく。
山形・宮城県境の峠までは7・6キロのダート。ここから宮城県側の不忘山林道に入っていくのだが、北に延びる山上道があるので要注意。この道は途中で行き止まりになる。
舟引山の山頂直下の峠から宮城県側の不忘山林道を下っていく。山形県側の南蔵王林道に比べるとラフな路面。不忘山の南側を縫う14・1キロのダートを走り切り、県道51号に出る。南蔵王・不忘山林道はダート21・7キロ。20キロ超のロングダートだ。
標高1705メートルの不忘山は南蔵王の主峰になっている。
アップダウンが連続する県道51号を走り、県道からわずかに入ったところにある蔵王開拓温泉(入浴料1000円)に寄っていく。ここの大露天風呂は魅力。温泉の周辺はまさに開拓地を思わせる風景だ。
国道457号に出ると、国道沿いの「出口川ドライブイン」で「ざるそば」を食べた。そばもうまかったが、出してくれた水のうまさが心に残った。店のオバチャンがやさしい人だった。
国道457号で遠刈田温泉へ。ここでは共同浴場の「神の湯」(入浴料300円)に入る。木をふんだんに使った建物。源泉は65・7度の高温湯。「あつい湯」と「ぬるい湯」の2つの湯船があるが、「あつい湯」は44・1度でほんとうに熱い。「ぬるい湯」は40・6度で温いというよりもジャスト適温。ともに濁り湯で、さすが「遠刈田!」と思わせる泉質の良さを感じさせる温泉だ。
「神の湯」から上がると、すぐ近くの蔵王大権現をまつる刈田嶺神社を参拝。ここは東北では数少ない式内社(延喜式内社)のひとつで、その歴史の古さがうかがえる。
遠刈田温泉からは国道457号で仙台に向かった。
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今回のエリア:昭文社ツーリングマップル東北 29あたり