アドレス日本巡礼[196]
投稿日:2014年12月2日
自然こそ神
新宮から那智へ。スズキの12ccスクーター、アドレスV125Gで国道42号を走る。海沿いの道。アドレスで切る風には心なしか黒潮の匂いがする。那智に着くと、JR紀勢本線の那智駅前で国道42号を右折し、県道43号に入っていく。
まずは補陀落渡海で知られる補陀落山寺でアドレスを止める。南海のかなたにあるという観音浄土の「補陀落」を目指して、この寺の歴代の住職たちは那智の浜からひとりぼっちの船出をした。それも2度と外に出られないように、釘で打ちつけられた船にのって沖に流されていった。寺の裏山にはそんな13人の「渡海上人」たちの墓がある。
県道43号から県道46号に入ると、一気に山中に入っていく。海と山が接する紀伊半島の地形がよくわかる。やがて右手には高さ133メートルの日本一の大滝、那智の滝が見えてくる。駐車場にアドレスを止め、うっそうとおい茂る杉木立の石段を駆け下ると、耳をつんざくような音を轟かせてる流れ落ちる那智の滝を目の前にする。那智の滝は飛滝神社の御神体。自然のつくり出すあまりの神々しさに思わず手を合わせてしまうのだ。
那智の滝を過ぎたところに「熊野三山」の熊野那智大社がある。両側にみやげもの店の並ぶ464段の石段を息を切らして登り、鳥居をくぐり、朱塗りの社殿に参拝。境内には樹齢800年というクスノキがある。高さ27メートル、幹回り8・5メートルの大楠。那智の滝でもわかるように那智の自然は豊かだ。その中に熊野那智大社がある。「熊野三山」というのは本宮、新宮、那智と豊かな熊野の自然を崇拝する霊場、「自然こそ神」の世界なのだ。
熊野那智大社に隣合った青岸渡寺(せいがんとじ)が西国33番の第1番札所になる。京都から250キロを走っての到着。「熊野三山」は熊野那智大社と青岸渡寺が並び建っていることからもわかるように元々は神仏混淆だった。それが明治の廃仏毀釈で神仏に分かれた。「熊野三山」で「仏」が残ったのは那智だけ。その理由としては青岸渡寺が西国33番の第1番札所だったからだといわれている。西国33番の観音霊場めぐりが庶民に広まったのは、室町時代から戦国時代にかけてのことだという。
青岸渡寺を参拝。「四国八十八ヵ所めぐり」の時と同じように、ここでも白装束の巡礼者たちの姿を多く見かける。豪壮な入母屋造りの大本堂は豊臣秀吉によって再建されたもので、建造物としては南紀唯一の国指定の重要文化財になっている。本尊は秘仏で、如意輪観音。「日本百観音霊場めぐり」は観音信仰なので、これからは十一面観音、千手観音、聖観音…と、西国33番、坂東33番、秩父34番の100寺にまつられている様々な観音たちに手を合わせることになる。青岸渡寺では境内の「延命の水」を飲む。まさに那智の自然の賜物。境内には樹齢700年のタブノキがある。熊野那智大社のクスノキに負けず劣らずの老樹だ。