ジクサー150分割日本一周[88]
投稿日:2020年9月10日
噴煙を上げる阿蘇
高森峠から高森の町に戻ると、国道325号で南阿蘇を行く。
国道の左側には「阿蘇大御神御足跡石」が祀られている。阿蘇大御神というのは、阿蘇神社の祭神の健磐龍(たけいわたたつ)命のことだ。その案内板には次のように書かれている。
この岩には健磐龍命の足跡のほかに鍬の跡もある。いかにも阿蘇を開いた健磐龍命らしい。岩の正面には「日の丸現象」の部分がある。前日に雨が降って、翌日晴れた日には、日の丸の現象が見られるという。今でも肥後の守護神の健磐龍命だ。
つづいて、国道325号の南側にある吉見神社へ。境内の「白川水源」を見る。毎分60トンという膨大な水量の湧水だ。流れ出したところから、かなりの水量の川になる。周辺にはほかにも、いくつもの阿蘇の湧水群がある。
白川は阿蘇五岳一番東の根子岳(1408m)を源にしている。白川水源などの阿蘇の湧水を集めて大きな流れになり、立野の阿蘇外輪山の割れ目で黒川を合わせ、熊本平野から島原湾へと流れ出る。
下流には三角州をつくっているが、この広大な三角州の開発には加藤清正が大きくかかわった。肥後人は今でも戦国武将の加藤清正が大好きで、清正などと呼び捨てにはしないで「清正公」というと、熊本城や二重峠のところで言ったが、城下町を「熊本」と命名したのも清正だ。
国道325号を右折し、阿蘇登山道路で中央火口丘の阿蘇五岳を登っていく。火の山トンネルを抜けると、噴煙を上げる中岳を見る。噴煙は雲と見間違えるかのような白煙だ。
阿蘇の噴煙は何度か見ているが、我が「40代編日本一周」(1989年)の時の噴煙はすごかった。阿蘇神社奥宮の阿蘇山上神社まで登ったが、まるで石油タンクが爆発したかのような黒煙を噴き上げていた。そこから中岳の火口にはロープウェーが出ているし、登山道もあるがすべてストップ。その先は「立入禁止」になっていた。
それを無視して2人の外国人旅行者が火口へと登っていった。ぼくもいったんは「行こう!」と思ったのだが、どうしても足が前に出なかった。「立入禁止」を無視するのがいやだったからではなく、噴煙があまりにもすさまじかったからだった。今、この瞬間に「ドカーン!」という大音響とともに、阿蘇山が大爆発を起こしそうな恐怖感にかられた。それにしても、とてつもない火山灰の降り方だった。ザラザラ音をたてて降ってきた。「日本一周」の50ccバイクのスズキ・ハスラー50も、ぼくの体も灰まみれになった。口の中が火山灰でジャリジャリしてくるほどだった。そんな阿蘇の思い出が鮮やかによみがえってくる。