ジクサー150分割日本一周[269]
投稿日:2021年12月22日
象潟の蚶満寺
青森・秋田県境の須郷岬にある「福寿草」で早めの昼食。「いかづくし定食」を食べた。焼きイカとイカ刺、イカの塩辛とイカ三昧。
秋田県に入ると、桜の花が満開だ。
国道101号を南下し、能代からは秋田道→日本海東北道と高速道を行く。仁賀保ICで降りると、国道7号で象潟(にかほ市)へ。
象潟の蚶満寺でジクサー150を止めた。ここは芭蕉の『おくのほそ道」に出てくる干満珠寺のことで、象潟の項では次のように書かれている。
芭蕉は「江山水陸の風光を尽くして」と、象潟を絶賛している。まるでここが「奥の細道」のゴールといってもいいような書き方で、象潟の描写にはひときわ熱が入っている。
とくに印象深いのは干満珠寺から見た風景だ。
「この寺の方丈に座して簾を捲けば、風景一眼の中に尽きて、南に鳥海、天を支え、その影映りて江にあり。西はむやむやの関、道を限り、東に堤を築きて、秋田に通う道遥かに、海北にかまえて、波うち入るる所を汐越という」
この一節は『おくのほそ道』の中でも一、二の名文だ。
象潟は「奥の細道」最北の地。境内には芭蕉像と、「象潟や雨に西施がねぶの花」の句にちなんで絶世の美女、西施像が建っている。
しかし今では『おくのほそ道』にあるような風景は見られない。象潟が潟でなくなってしまったからだ。文化元年(1804年)の象潟地震でこの一帯は隆起し、「江の縦横一里ばかり」とある潟が陸地になってしまったのだ。
蚶満寺の境内には舟つなぎ石が残されているが、それが当時は潟の岸辺にある寺だったことを証明している。またここからはポコッ、ポコッと盛り上がった小丘をいくつも見るが、それが当時の九十九島。今では稲田の中に浮かんでいる。
芭蕉は「松島は笑うがごとく、象潟は憾がごとし」といっているが、現在はまさにそのとおりの状況だ。松島は押すな押すなの大盛況。それにひきかえ潟でなくなってしまった象潟は、まるで忘れ去られたかのような存在で、訪れる人は少ない。
象潟から秋田・山形県境の三崎へ。三崎公園の桜は散り始めていた。
三崎の駐車場にジクサー150を止めると展望台に登り、山塊が海に落ちる三崎を眺めた。目を北に向けると、長く平べったく延びる海岸線を見る。正面に目を向けると、水平線上には飛島が浮かんでいる。